【HII銘柄分析】ハンティントン・インガルス・インダストリーズ、米海軍の原子力空母を設計建造する唯一の企業

ハンティントン・インガルス・インダストリーズ【HII】は、米国防総省から継続的な受注を見込む、増配率の高い好配当銘柄。

なお、直近トピックとして、以下2019年11月6日の増配・自社株買い増額アナウンスに続き、2020年も11月3日に増配を発表

  • 2019年
    1株配当:$0.86 → $1.03(19.8%増配
    自社株買い:22億ドル → 32億ドル(2022年10月末~2024年同月末)
  • 2020年
    1株配当:$1.03 → $1.14(10.7%増配

増配は高水準を維持、配当性向も現時点では、後述の通り余裕あり。

【HII】増配率の高い好配当銘柄、米海軍の原子力空母を設計・建造する唯一の企業

上陸作戦用輸送揚陸船(HIIが米海軍より建造受注) 出所:HII

HIIは、2011年にノースロップ・グラマンからスピンオフされ、100年以上に渡り米海軍向けに最も多くの艦船を建造してきた造船企業です。

米海軍の原子力空母建造に従事する唯一の企業であり、更に原子力潜水艦の建造を担う企業は2社しかなくそのうち1社がHIIです。つまり、寡占事業と独占事業の両方の性質を有する事業を営んでいます。

最大の特徴は、大きな変革がない限り、艦船の需要が存在する限り、米政府による受注が見込めることです。空母建造の独占、原子力潜水艦の寡占という意味でワイドモート(高い参入障壁)の存在が示唆されます。

【HII】基礎データ

HIIの基本情報は以下の通り。

社名(和文)ハンティントン・インガルス・インダストリーズ
社名(英文)Huntington Ingalls Industries, Inc.
ティッカーHII
設立日2010年8月
本社所在地米国バージニア州
従業員数41,000人
セクター工業
連続増配年数9年
配当利回り3.0%
直近4年平均配当利回り1.5%
直近3年平均増配率(年率)19.8%
直近5年平均増配率(年率)29.3%
配当月(支払日ベース)3, 6, 9, 12
1株配当$4.56
1株調整後利益(2020年予想)$14.47
配当性向(調整後EPSベース)31.5%
PER(調整後EPSベース)10.5倍
株価$151.81

(2020年11月6日時点)

増配率が非常に高く、配当性向も健全な値。後述の通り、5年間で14%の発行済み株式数が減るなど自社株買いにも積極的。

2011年ノースロップ・グラマンからスピンオフ以降、連続増配。2020年11月の増配アナウンスにより、連続増配年数は9年へ。

【HII】事業内容

セグメントとその業務領域は以下3つ。(データソースはFact Sheet)

  1. ニューポート・ニューズ造船所(Newport News)
    原子力空母・原子力潜水艦の建造、点検修理、メンテナンス
  2. インガルス造船所(Ingalls)
    イージス艦・上陸作戦用輸送揚陸艦・多目的両用強襲艦・沿岸警備隊監視船の建造
  3. Technical Solution部門
    ITや船隊整備の他に設計・シミュレーション・ソフトウェア原子力・非原子力製品の機器修理船舶工学・船舶整備生化学・原子力・放射線工学サイバーセキュリティ・IT

いかにも軍需産業、それも設計からメンテナンスまで米海軍から一貫して請け負っていることがわかります。

売上高内訳としては、後述の通り、製品売上とサービス売上の2種に大別されます。

【HII】株価と配当利回り推移

2020年11月6日 時点

何度か調整を挟みながらも、株価は5年で4倍に達した後、直近は大きく調整。

バージニア級原子力潜水艦の工期が遅れており、追加コストが発生したことが嫌気されていると思われます。

ただし、今般の力強い増配が過度な不安を示すこととなるのか、というところでしょうか。

2011年からの平均配当利回りは1.3%です。

【HII】配当と配当利回り推移

2020年11月6日 時点

株価は5年で4倍でしたが、配当は5年で5倍。

これだけの増配率の背景には、やはり業績の伸び、そしてスピンアウト後から間もないということも関係していると思慮。

【HII】売上高・営業利益・純利益

HIIの①売上高・②営業利益・③純利益・④営業利益率・⑤営業キャッシュフローマージンを見てみましょう。

売上高は長らく横ばいも2017年から上昇傾向。営業利益・純利益共に堅調。

尚、売上高内訳は以下通り製品売上とサービス売上に大別されます。

両セグメントとも伸びており、製品売上高が伸びた主因は強襲揚陸艦の納入増であり、サービス売上高が伸びた主因は、強襲揚陸艦及び原子力潜水艦へのサポートサービスによるものとなっています。(同社Form 10kより)

設計・建造を経て本船引き渡し後も、燃料交換等の保守・サポートサービスがあるわけで、プロダクトだけでなく継続的な売上が見込めるであろう保守・サポートサービスがあるのは好み。

受注残高

HIIの特長は、受注残高です。

2018年12月31日時点で受注残高は230億ドル(=約2.5兆円)あり、そのうち30%が2019年の売上高として乗ってきます。

空母2隻受注もあり、2020年2月時点の受注残高は465億ドルと更に積み増し。

いかにも政府関連企業といった様相。今後も太い受注が望めるでしょうか。

【HII】キャッシュフロー推移

投資キャッシュフローが増えています。これは今後の競争力強化及び将来的な受注を見据えた先行投資のようです。

艦船建造が主業らしく、投資CFがある程度の割合を占めています。

【HII】フリーキャッシュフロー・配当支払・自社株買い・借入状況

上図はFCF・配当支払・自社株買い・借入状況を示したものですが、前年までFCFベースの配当性向は30%に満たず、配当支払は余裕ありです。また、2018年の自社株買い規模は、74億ドル相当に上ります。

2019年3Q時点累計で大きく借入、FCFもかろうじてプラス。2018年も運転資本増減に起因し、第三四半期まで営業CFはマイナスで、最後に大きく盛り返して例年値に戻っていました。

【HII】増配率の推移

配当を出し始めたのは2012年からであり、その後は力強い増配が続いています。

2019年11月6日に、増配・自社株買い増額を発表。

  • 1株配当:$0.86 → $1.03(19.8%増配
  • 自社株買い:22億ドル → 32億ドル(2022年10月末~2024年同月末)

2020年11月3日、増配を発表。

  • 1株配当:$1.03 → $1.14(10.7%増配

【HII】配当安全性

1株あたりのフリーキャッシュフロー(FCFPS)が、1株あたりの配当(DPS)を大きく上回っていることがわかります。

【HII】自社株買い

2013年に5,000万あった株数が2018年には4,300万株まで減り、2019年3Q時点で4,120万株まで減少。率にして20%弱も減少、自社株買いに積極的。特に2018年は74億ドルと大規模。

冒頭に述べた通り2022年10月末から2年間にわたり、32億ドルの自社株買いがアナウンスされています。(2019年11月時点)

発行済み株式数の減少は、EPS・DPS・株価の上昇に直結し、株主には好影響。

【HII】 1株配当・配当落ち日・配当基準日・配当支払い日

配当支払日は概ね3・6・9・12月の初旬から中旬にかけて。

配当落ち日配当基準日配当支払日配当
11/25/202011/27/202012/11/2020$1.14
8/27/20208/28/20209/11/2020$1.03
5/28/20205/29/20206/12/2020$1.03
2/27/20202/28/20203/13/2020$1.03
11/28/201911/29/201912/13/2019$1.03
8/29/20198/30/20199/13/2019$0.86
5/23/20195/24/20196/7/2019$0.86
2/21/20192/22/20193/8/2019$0.86
11/29/201811/30/201812/14/2018$0.86
8/30/20188/31/20189/14/2018$0.72
5/24/20185/25/20186/8/2018$0.72
2/22/20182/23/20183/9/2018$0.72
11/22/201711/24/201712/8/2017$0.72
8/23/20178/25/20179/8/2017$0.6
5/24/20175/26/20176/9/2017$0.6
3/1/20173/3/20173/10/2017$0.6
11/22/201611/25/201612/9/2016$0.6
8/24/20168/26/20169/9/2016$0.5
5/25/20165/27/20166/10/2016$0.5
3/2/20163/4/20163/11/2016$0.5
11/24/201511/27/201512/11/2015$0.5
8/26/20158/28/20159/11/2015$0.4
5/27/20155/29/20156/12/2015$0.4
3/4/20153/6/20153/13/2015$0.4
11/25/201411/28/201412/12/2014$0.4
8/27/20148/29/20149/12/2014$0.2
5/28/20145/30/20146/13/2014$0.2
3/5/20143/7/20143/14/2014$0.2
11/26/201311/29/201312/13/2013$0.2
8/28/20138/30/20139/13/2013$0.1
5/29/20135/31/20136/14/2013$0.1
2/26/20132/28/20133/15/2013$0.1
11/28/201211/30/201212/14/2012$0.1

【HII】トータルリターン vs S&P500

下図はHIIとS&P500指数の配当再投資込みトータルリターン比較です。

期間はノースロップ・グラマンからスピンオフ後の「2012年1月から2020年10月」。

HIIがS&P500を凌駕しています。

トータルリターン比較(年率)
年率
HII20.6%
S&P50013.5%

【HII】 銘柄分析まとめ

HIIを特徴付けるのは、

  1. 米海軍の空母建造に従事する唯一の企業であり、
  2. 原子力潜水艦の建造を担う企業2社のうち1社、

という点と思います。

つまり、米海軍の艦船建造を請け負っているがゆえの「独占・寡占企業」であり、今後も継続した受注が見込めるかが1つのポイントとなりそうです。

一方で、デメリットとして考えられるのは、政策面や技術面で大きな変革等が起きれば継続した受注が見込めるかは定かではありません。

良くも悪くも政府お抱えでしょうか。これはロッキード・マーチン【LMT】やレイセオン【RTH】などの米軍需企業にも共通して言えそうです。

直近3年間の増配率は21%と高水準。ノースロップ・グラマンからのスピンオフ後に配当を出し始めて9年。調整後EPSベースの配当性向も3割と無理な配当は出していない様子。

changes in government and customer priorities and requirements (including government
budgetary constraints, shifts in defense spending, and changes in customer short-range and long-range plans);

(同社2019年3Q 「Forward-Looking Statements」より抜粋)

上記引用にもある通り、米政府の財政状況・国防予算・等にも左右され得るでしょうが、政府お抱えの軍需産業であれば継続的な受注が見込めることから、リセッション耐性も相応にあると期待したい要素ではあります。

Best wishes to everyone!

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公開日:2019年5月24日

コメント

  1. シスターシェリル より:

    シスターシェリルと申します。50代後半の窓際サラリーマンです。毎日ブログを拝見しながら、20代から貴方のように配当を重視した投資をしていれば良かったと日々後悔しています。去年から甲斐性のない私を支え続けてくれてきた妻にちょっとでも足しになればと思い、VYMやSPYDやPFFに自分の小遣いをNISAで購入しています。質問させて下さい。今回、高配当でもないHIIを紹介されたのはこの会社の配当が大きくなる可能性があると思われたからでしょうか。これまで個別株を買ったことがないのですが、私もなぜか不祥事にまみれたボーイングなどとは異なり、この会社に投資してみようかなという直感があるからです。中学の時、グラマンのトムキャットF14戦闘機やノースロップのB1爆撃機が好きだったからかもしれません。高配当でもないにかかわらず、この会社の株式を200万円分も保有されているホンネをお聞かせいただけるとうれしいです。よろしくお願いいたします。

    • コメントありがとうございます。
      ご質問の点については、仰る通り、
      ①低配当ながら高い増配率が見込める好配当であること、そして
      ②その背景に当局との太い独占・寡占事業の継続が見込める点、それらに加えて
      ③ある程度配当収入が築けたので、高配当株メインとしつつも、”好”配当株にも少し資金を割こう、
      と思ったためです。
      ご参考になりましたら幸いです。