「お金の相談会(さっぽろ)」のご感想②(30代男性)
2025年4月に開催した「お金の相談会(札幌)」のご感想をいただきました。
日本でのFIREムーブメント勃興期、わずか30歳でFIREを達成され一躍有名になった、元三菱サラリーマンこと穂高唯希さんにお会いする機会がありました。
札幌にいらっしゃることをブログで発信され、居ても立ってもいられず、お会いできないかと連絡。
幸運にも、忙しい合間を縫っていただきマンツーマンで食事をすることができました。
穂高さんのブログは5年間、毎日拝読しています。
このブログに出会った2020年、私は人生の大底にいました。
会社員・育児・コロナの三重苦。自由な人生を歩みたいと切望する私にとって、これほどの不自由を強いられる時期は苦痛でしかありませんでした。
そんな中、FIREを達成され自由かつ主体的に生きている穂高さんの人生を知り、救われたのです。
以来、穂高さんのことは勝手に師として仰いでいました(笑)
これまでは書籍を購入したり、知人にブログを薦めることくらいでしか恩返しができなかったのですが、今回直接お会いし、感謝を伝えることができたのは、望外の喜びとしか言いようがありません。
お会いしたのは平日の夕方、サラリーマンは働いている時間帯でした。
会社を辞めたからこそお目見えできたわけであり、これもFIREしてよかったと思える瞬間です。
お会いして第一の感想は、「穂高さん、実在しててよかった」ということですが(笑)、私が最も気になっていたことは、FIREを達成したあと、人はどうなっていくのかということでした。
FIREの方法論なんてすでに決まっていて、結局は「支出を減らし、収入を増やし、残ったお金を投資する」だけです。
もはや既定路線があり、敷かれたレールの上を歩くだけです。
しかしそのレールは、FIREを達成した瞬間に途切れます。
その先は自らの脚で歩いていかねばならず、行き先や方向は千差万別です。
FIREとは所詮、自分が心から望む生き方を実現するための手段でしかなく、FIRE後は100人いれば100通りの歩き方があるのです。
ところが、それがリアルな体験談として生々しく描かれることは少なく、かつ30代でFIREを達成するケースは極めて稀なので、定年退職を30年先取りしたアラサーがどういう心境で何を求めていくのかということに、とても興味がありました。
今回お話しした中で最も印象に残っていることとして、
- 「FIRE後、好奇心のままに何かを模索をする期間がたびたびあった」
- 「“誰かの役に立とう”が先行するのではなく、”興味のあることをやった結果、誰かの役に立っちゃった”というスタイルに行き着いた」
これを聞いた瞬間に私は、南極点到達を競い合ったアムンゼンとスコットを題材にした山口周さんの考察を思い出しました。
ー「楽しむ人」にはかなわない ー
この「楽しむ人にはかなわない」という孔子の指摘を、痛いほどわからせてくれるのが、20世紀初頭に行われたノルウェーの探検家、ロワール・アムンゼンとイギリスの海軍軍人、ロバート・スコットによる南極点到達レースの物語です。1910年に争われたこのレースの結果は皆さんもご存じの通り、アムンゼン隊が、大きなトラブルに遭遇することもなく、後に「あれほど楽しい探検行はなかった」と隊員が述懐するほどスムーズに南極点に到達したのに対して、スコット隊はありとあらゆるトラブルに見舞われた挙句、最後は犬を載せた数百キロの重さのソリを猛吹雪のなか人が引いていくという信じがたい状況に陥り、隊長であるスコット以下全員死亡するという悲惨な結果に終わっています。
つまり、このレースは、アムンゼンの「圧倒的大差での勝利」となったわけですが、では、この「圧倒的な大差」が生まれた原因はどこにあったのでしょうか?
(中略)
組織論の用語を用いて言えば、アムンゼンが「内発的動機=興味や好奇心や向上心など、内面から湧き出る欲求によって喚起された動機」で動いていたのに対して、スコットは「外発的動機=金銭や地位や名誉など、外側から与えられた刺激によって喚起された動機」で動いていたということになります。これまでの社会心理学の研究結果が示す通り「外発的動機で動く人=頑張る人」は「内発的動機で動く人=楽しむ人」には勝てない、という結果になったのです。
青春期より探検家になることを目指していたアムンゼンは、「極地探検を成功させる」ために自身を最適化してきた人物であり、 ありとあらゆる探検記を読みあさったり、耐寒訓練のため真冬に窓を開け放って寝たり、スキーや犬ぞりといった雪上移動の技術を身につけたりと、研鑽や研究を惜しまなかったようです。
一方、スコットはもとから極地探検に興味があったわけではなく、「南極探検の隊長に最適の人物」と推薦され、これが海軍での出世のチャンスになると考え、これを引き受けたとされています。
10代の頃からすでに極地探検家になるための知識の蓄積や実地の体験を積み重ねてきたアムンゼンと、南極探検隊隊長を打診されてから付け焼き刃的に知識やスキルを詰め込んだスコット。この二人が同じ土俵で競い合えば、そりゃあ結果は一目瞭然でしょう。
「楽しんでいる人は、頑張る人を凌駕する」
これは孔子も言っていたことで、何千年も語り継がれる本質であり、現代を生きる私たちにも大きな気付きをもたらしてくれます。
「人様の役に立つために頑張る」という考えは大切かもしれません。
しかし一方で、「役に立ちたい人」は「楽しんでいる人」に及ばない。
これはまさに、しがらみから解放されたニュータイプとしての発想領域であり、私自身の次なる指針であるとの思いを強くしました。
そして、穂高さんはこれをすでに体現されており、「やっぱすげえわ」と舌を巻かずにはいられない、そんなお方でありました。
このたびはありがとうございました。とても興味深く話をうかがい、そしてご感想も拝読しました。
お話して感じたことは、思考が「独創的で、多数派ではない」ということでした。僭越ながら似通った部分もあると感じました。
以下のいずれかまたは複数がその要因として考えられるかと思いました。
- FIREという少数派の行動
(=行動が少数派ならば、必然、思考も少数派/独創的) - これまでの人生体験に由来する発想
- ブログを通じた思考の共有
そして、印象に残った会話の主題は以下です。
- 山菜取りは、人間古来の狩猟採集という原始的な行動と相通じる
- FIRE後の生活様式は、興味あることに片っ端から手を出すスタイルもあれば、それまでやってきたことを深めていくスタイルもある
- 動物としての人間を考えたときに、母となった後には男は打たれる話
- FIREとは、定年退職をした人がいずれぶつかる人生体験を早く経験するということ
- 短期売買で利益を得てどんな感情になるか、というご質問への回答
(別途記事にします) - 株も気象も、波がある
(※ご相談者は気象に詳しい)
④~⑥がとくに興味深いです。⑥については、ひとつの物事を掘り下げると、別の事象と通底する普遍的なものが見えてくることがありますよね。
まさに読書や人生体験を通じてインプット量が増えていくうちに、点と点がつながって線になるような感覚に似ています。
ほか、上段引用部にある「内発的動機」という言葉は、私も以前なるほどと感じたことでした(「株式投資でしっかり稼いで、しっかり使う」という意義と効用)。
最近テニススクールにかよっていて思うのは、
- 健康のため、身体を動かすためにテニスをしている人
- テニスがたのしくてたのしくてしかたがない人
この両者で上達速度が明確に異なります。②の人はまさに「内発的動機」によって(=たのしいから)テニスをしているということですよね。
内発的動機による行動は、飽きることもなく、自然と没頭するので上達や理解もはやい。
示唆に富むお話の数々、そして興味深い上段ご感想のお話、まことにありがとうございました。
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