書籍『安いニッポン 「価格」が示す停滞』の読書感想文

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書籍『安いニッポン 「価格」が示す停滞』の読書感想文


本書を読んで印象に残った点は以下の通りです。

  1. 「ドイツの生産性の高さは、単純に売価の高さにあった」という指摘
  2. ネットフリックスの制作費はNHKの5倍

①作業効率が悪くとも高価に売れれば、生産性は高いことになる

「失われた30年」の背景に「日本企業の生産性が低い」と言われて久しいかと思いますが、本書では製造業の実例をもとに、作業効率はむしろ日本のほうが概して良く、「日本より作業効率の劣るドイツがむしろ生産性が高い主因は売価の高さである」との指摘がなされていました。

たしかに付加価値(GDP)というものは、作業効率が悪くとも売価が高ければ、高くなる定義と理解しますので説得的です。変な話、品質が劣っていてもブランド力等の効果で高く売りさえすれば付加価値も利益率も高まる。

極端な例ながら、まじめに一所懸命よいものを作っても、手練手管で売り方が上手い粗悪品に売り負ければ生産性はよくないという結果になると。

ネットフリックスの制作費はNHKの5倍

今では日本のクリエイターが創る作品が、ネットフリックスやAmazon Primeといった米テック企業のプラットフォームで放映されることが増えました。

これは単純に国内のプラットフォームで放映するよりも国富が海外に流出する面になるかと思いますが、しかし事はそう単純ではなく、「Netflixでは潤沢な資金力を背景に、映画やドラマの制作費が日本国内メディアの数倍ある」との指摘が本書でされていました。

そうなると確かに電器産業の社員が海外企業に引き抜かれることから始まり、日本のアニメーターが中国企業に引き抜かれているとされる昨今と同様、資金力が豊富な制作環境のよいプラットフォームでコンテンツを作りたいと思うのも納得です。

単純な「国内」と「海外」という感情論ではなく、資力の差が歴然としていれば、よほどなにか信念や主義等がないかぎり、自分や家族の生活または仕事環境が大事である以上、プラットフォームを海外企業に求める行動があってもなんらおかしくないですものね。

実感する内外価格差

FIREしてから頻繁に旅行にいくので実感しますが、以前よりホテルの値段は相当上がりました。大阪、京都、東京、名古屋、北海道――。

円安・デフレ・賃金上昇の鈍さに起因するであろう内外価格差が大きすぎるので、二重価格をあからさまに導入してもよいと思うんですけどね。

今は多少値上げされましたが、JRの外国人向け全国パスなどあまりに安すぎて本当に謎でした。

巧妙に設計された裏金で私腹を肥やせる政治家もいるなかで、上昇が続く国民負担率。はたしてその構図はいつ変化が訪れるのでしょうか。

まとめ

本書はこうした「安いニッポン」という側面から各方面の事象を解きほぐす書籍でした。

見聞きした情報が多数含まれるものの、1冊の本には必ず1つは気づきや印象的な部分があります。

必ず1つは学びがあるので、読書は勉強になるとあらためて思います。

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