映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』おそらく大人の事情か、思っていたのとちがった作品
テレビで放映されていた監督のコメントを事前に聞いてから観たのですが、イメージしていた展開とはだいぶ異なる映画でした。
監督や番組出演者のコメントは
- 以前なら、大統領が品性を欠いたり虚言を放つことは考えられなかったが今現実に起きている、今のアメリカでこういうことが起きかねない
- 本作を観て米国の現状や問題点をぜひ考えてほしい
といった趣旨だったので、私個人としてはてっきり「トランプ氏の登場以降に象徴されるような政治的分断」に焦点を当てた作品だと思っていました。
ところがおそらく大人の事情というか、そこまで明示的に政治的なことを描けないのか配慮したのか不明ですが、多方面に摩擦がないように配慮した結果、角がとれた作品のように映りました。
とはいえ
- 人種の問題
- 米国内の分断
- 圧倒的な不条理
といった部分は描かれていて、これらは確かに米国で今起きているとされている事象でもあるとは思います。
しかしストーリーの意外性はさほどなく、「まぁそうだよね」という既知の事象を追認するような作品かと思いました。
以下少しネタバレ含みます。
悪貨が良貨を駆逐することはあるので、回避しなければいけない
最も印象に残ったのは不条理な部分。
明示的に描かれているわけではありませんが、「利己的な行動をした人物が、先輩や熟練者よりも結果として世間的には大きな成功を収めてしまう」と解釈できる情景が複数あります。
「道徳的、情緒的に善良な行動をした人が割を食う」という私たちの現実世界に存在するきわめて不条理な真実ですよね。
しかしこれらをおしなべて是正するのは非現実的であり、そのような理想世界は現実に存在しない以上、みずからの機転や機知でもって悪辣な仕打ちに遭うのを回避するしかありません。
あとはやはり高慢さが足元をすくう帰結にもなっているように思います。
これは人生の要所を押さえるということでもあり、親が子に教えなければいけないことのひとつでもあると思います。
ほか、かなり強烈なシーン(赤サングラス)もあり、あまりにその鮮烈かつ扇情的さは、ウォーキングデッドでルシールがグレンをあやめる情景に匹敵する激烈さです。共演者が涙したそうで、納得の惨状でした。
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ヒルビリー・エレジーが描いた当時の米国と通底するものがあると思います。そういう意味ではあまり変わっていないとも言える。