スターツプロシード投資法人(8979)買い増し、金利上昇に脆弱か検証
スターツプロシード投資法人を1口買い増しました。これで計7口となりました。
それにしても以下に算出したようにNAV倍率は低いですね。NAV倍率とは株式でいうPBRに相当するもので、株価を純資産で除したものです。1倍割れで純資産より株価が低く、割安であることを示唆します。
Jリート全体より金利上昇の影響をやや受けやすい
- NAV倍率:0.80(株価193,500円、NAV:242,327円)
- 借入金の固定金利比率:85.3%
(Jリート全体の中央値:90%弱) - 総資産に対する負債の割合:51.4%
(Jリート全体の中央値:42%) - 借入金の平均残存期間:3.5年
(Jリート全体の中央値:7.2年)
※同社数値は決算資料より
日銀の利上げをいずれ控える今、Jリートで注意しておきたいのは上記とくに②~④かと思います。
借入金の固定比率はJリート全体の中央値と比べてやや低く、負債割合もやや高く、借入金の残存期間も短いということで、Jリートの平均と比べてやや金利上昇の影響を受けやすいと思います。ただしこれはJリート全体との相対的な話です。
国内金利1%上昇でも十分吸収できる水準
絶対値としては国内金利が1%上昇しても、十分吸収できる程度だと思います。
決算資料に基づき、「借入割合 51% × 借換比率 84% × 調達コスト1%上昇」とすると、総資産に対して0.43%の利幅が増えれば金利上昇分を吸収できることになります。したがって、大勢に影響はないとの考えに至ります。
借換比率:借入金全体に占める5年以内に借換が必要な割合
決算資料を確認
直近の決算である2024年4月期の決算資料における主だった部分を確認します。

出所:同社IR(2024年4月期)
上の画像は、冒頭の財務面を判断する際に確認した資料です。

出所:同社IR(2024年4月期)
上図右上「金利固定化比率・平均金利の推移」を見ると、固定化比率・平均金利がともに上昇しています。変動金利より固定金利のほうが金利を固定化する分上乗せ金利が適用されるため、固定金利>変動金利となります。したがって、固定化比率の上昇にともない平均金利も上昇するのは仕方ないと思います。
おそらく日銀の利上げによる国内金利上昇に備えて金利固定化比率を上げてきたものと思われます。実際、決算資料の「来期以降の取り組み」を見ると、
- 保守的なLTVのコントロール
- リファイナンス時の借入期間長期化、金利固定化
とあります。
上図右下「有利子負債コストの推移」を見ると、平均調達金利の上昇にともない有利子負債コストも当然ながら上昇傾向にあるので、
- 賃料でインフレ分や金利上昇分を上乗せできるか、
- あるいは公募増資による新規物件の取得で調達コストを上回る投資回収ができるか
といったところですね。これが総資産ベース(ROA)で0.43%上昇すれば、金利上昇分を吸収できる試算になります。そこで賃料改定率を見てみましょう。

出所:同社IR(2024年4月期)
賃料改定率を見ると、0.43%を概して上回っており、この改定率が続けば金利上昇分を十分相殺できるように見えます。
この程度であれば大勢に影響ないだろうとの目算に加え、NAV倍率がかなり低いことから、許容範囲と判断しています。もっとも、大手スポンサーの信用力と比べればやや劣ることに加え、財務面でやや攻めた数字であることから、現状のNAV倍率や分配利回り5.1%という水準に収れんしているものとは思います。
関連記事