円高が進んでいないが円高恩恵銘柄に資金が流れる
7月21日の株式市場は、「場中に円高が進んでいないにも関わらず円高恩恵銘柄に資金が流れる」というやや特異な現象がみられました。
上図のセクター別騰落率が示すように、陸運、水産・農林、食料品、紙パルプといった内需系のみが上昇して引けています。
対照的に値下がり上位は、精密機器、海運、電気機器、機械など輸出系です。一見すると今後の円高傾向を織り込みに行ったような動きに見えますが、どうでしょうか。
足もとでは、「シカゴIMM先物の投機筋ポジション」が円安からややドル売り・円買いに巻き戻されています。足もととはいえ、シカゴIMM先物のデータは、1週間単位で公表が実際より遅いため、すでに投機筋はこのときよりポジションを円買いに傾けている可能性があります。
そうした動きを知っている海外勢が株式のポジションを内需系に傾けたとも解釈できますが、定かではありません。次週公表のIMMポジションと、明日以降のセクター別騰落率を見ることである程度は判断できそうです。
つまり、次週公表のIMMポジションがさらに円買いに動き、明日以降もセクター別騰落率が内需系に資金が流れていれば、海外勢を中心に円高・内需買いへ目先は転換するのか、といったところ。
金利差の観点からはドル円相場と引き続き乖離がみられます。
- 日本の経常黒字は20兆円(2023年)と再び良好ながら、内訳として証券投資や直接投資が多く、これらは外貨での再投資が圧倒的に多い性質であるため、円買いフローがおこらないがゆえにキャッシュフローベースでは赤字であり、実需の円買いにつながっていない(=円安要因)
- デジタル赤字(GAFAMへの課金)は言い値で払わざるを得ず、生活の一部として仕組まれてしまっているので日本企業でGAFAM系のサービスが内製化できないかぎり今後もデジタル赤字が拡大することが予想され、インバウンドによる旅行収支黒字を食いつぶす状態が続き、サービス収支が悪化する可能性が高い(=円安要因)
- 高水準の政府債務があることで、財務省・日銀は円安是正や利上げよりも、国債格付け維持を優先する可能性(=円安要因)
※国債格下げをされれば投機的な円売りが想定されるので、財務省が格付け維持を優先するのは納得
以上の基礎的条件(ファンダメンタルズ)や日本の個人投資家の証券投資動向(SP500,オルカン買い=円売りドル買い)に短期的に特段変化はないと思いますが、投機筋がポジションを傾ければ為替市場に対する影響は過去の傾向から考えるに大きいため、短期的には彼らの動向にも振られることになります。
まとめ
以上から、以下2点に注目したいです。
- 明日以降も外需系から内需系に資金が移るのか
- 次回のIMM通貨先物ポジションのデータ公表
なお、内需系や一部の円高恩恵銘柄に資金が向かっているので、オープンドアを順次利確。これで一時期の1/5まで減らせました。
日経平均株価は連続陽線後の連続陰線、MACDが売りサイン、海外勢が売り越して国内個人勢が買い越すというチャートと需給状況で気になるところでしたが、先物は反発しているようです。とはいえ引き続き信用分はリスク抑えめにいきたいと思います。
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