「2024年5月から日本株の上値が重い理由」と「年後半の見通し」
以下について、まとめておきたいと思います。
- 2024年5月以降、日本株の上値が重い理由
- 2024年後半の見通し
日本株の上値が重い理由
以下のようにまとめられます。
- 国内主要企業の今期業績見通しが保守的
- 長期金利が上昇傾向
(日銀の追加利上げ観測) - 需給面の悪化
(信用買い残、裁定買い残が増加)
① 国内主要企業の今期業績見通しが保守的
今まで記してきた通りです。日本企業は伝統的に期初予想が市場予想より保守的です。今期は市場予想との乖離が過去の傾向より大きく、市場に冷や水を浴びせたかたち。
② 長期金利が上昇傾向
日銀の利上げ観測によって、長期金利が上昇傾向にあります。先日の政策決定会合で追加利上げはなかったものの、今後も会合前に観測が浮上しそうです。
③ 需給面の悪化(信用買い残、裁定買い残)
東証のデータを確認すると、日本株の信用買い残(6月7日時点)は、
- 買い残:4.8兆円
- 売り残:7,400億円
したがって、信用倍率は6.5倍です。4月19日時点に記録した1994年12月以降で最高の「7.29倍」よりは低いものの、依然として高水準であり、潜在的な需給悪化要因です。
裁定買い残は、細かい説明は省きますが、要は海外投資家がどれだけ日本株を買っているかを表す指標です。

日経平均と裁定売り残・買い残の推移:2021年7月4日~2024年6月10日(裁定売買残高は5月31日まで)出所:トウシル
傾向として裁定買い残が1.5兆円~3.5兆円になると日経平均株価が反落に向かう傾向があります。日本株の売買代金の7割を外国人投資家が占め、彼らによって、以下の流れとなっています。
- 日経平均先物買いの増加
- → 裁定買い残の増加
- → 日経平均上昇
逆も然りです。
現在裁定買い残は2.5兆円あるので、過去の傾向に照らせば、需給面としては悪化要因ですね。
以上、日本株の上値が重い背景として、以下を挙げました。
- 国内主要企業の今期業績見通しが保守的
- 長期金利が上昇傾向
(日銀の追加利上げ観測) - 需給面の悪化
(信用買い残、裁定買い残が増加)
今後の焦点
以下のようにまとめられると思います。
- 当面レンジ相場か
- 7月下旬の第1四半期決算から上方修正で上昇するか
- 実質賃金がプラス転換し、内需株を中心に上昇するか
上段に記したように、現在日本株の上値が重い背景が複数存在します。23年のように「低PBRの是正、実質金利の大幅なマイナス、バフェット効果」など好材料目白押しではありません。
したがって、やはりレンジ相場を想定したいと思います。また、企業側の保守的な期初の業績予想が、年末に向けて例年通り上方修正されるにつれて、日本株の上昇余地も出てくることになります。
市場予想や機関投資家もおおむね5%程度の増益予想としており、想定外の事象等がなければ順当に上昇を期待したいです。
また、今年の春闘で相当程度の賃上げが実施されたことから、実質賃金がプラス転換すれば堅調な国内消費が期待でき、内需株を中心に上昇する可能性を念頭に置きたいと思います。
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