増配は個人にとっては好事も、国全体では果たしてどうか
増配というのは配当を増やすことです。
昨今は
- 株主還元の強化
- 資本効率の向上
などと謳われています。私は投資家でもありますが、企業の利益は労働者にも手厚く還元されるべきであろうと思います。それこそ日本が昭和期にしてきたこと。
かように思う理由を以下述べます。
海外勢の保有比率がいまや3割超

2024年時点(出所:日経電子版)
昨今は海外のアクティビストや機関投資家から、資本の効率化、株主還元の強化、といった株主提案が散見されます。
今や海外勢の売買比率7割、保有比率3割を超えますから、株主重視は海外へ流出する国富が応分に増えてしまうことを意味しますよね。
いいかえれば、「海外勢の保有比率が高いにもかかわらず、賃金を大して上げずに大増配するということは、日本の富が海外に流出する」ことになります。
企業活動というものは、なるほどたしかに株主が企業を所有し資本を拠出して事業を営むわけですけども、企業活動の源泉はあくまで従業員によってもたらされているので、従業員に主として還元するのは妥当だと思うんですよね。
実際、日本は近年までそうしてきました。企業同士で株式を持ち合うことで、敵対的な買収も防ぐことができ、国内で利益を分配し合うことで、国内にお金が落ちていたと(郵政民営化前の郵政公社も国内分配できていた点で類例と見える)。
ところが、米国発の株主至上主義が日本にもたらされたことで、「金融庁の指導」という名のもとに「株主の持ち合い解消、株主還元の強化、ROEの向上」という美名のもと、増配が著しく増えました。
いち個人投資家としてはうれしいですが、日本国全体で見たときにはどうでしょうか。
昨今、豊田自動織機などMBO(株式非公開化)が過去最多ペースで積み上がっているのも無関係でなしと見えます。
株主還元の強化がこうした文脈で語られることがないのが不思議です。
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