イラン・イスラエル紛争のリスクシナリオ:原油価格上昇で日銀が大幅な利上げに追い込まれる
紛争はむろん人道的な面が最大のリスクでありますが、本記事はあくまで金融市場におけるリスクシナリオについて記していることを、念のため申し添えます。
あくまで「最悪に近いリスクシナリオ」ではありますが、本記事の要旨は以下のとおりです。
- ホルムズ海峡封鎖等による原油価格の急騰
↓ - 物価上昇
↓ - 日銀大幅な利上げ
↓ - 円キャリトレード逆回転による資産価格の下落
紛争勃発で原油価格が上昇
イラン・イスラエル紛争により、上図WTI原油先物価格は6月13日を起点に10%ほど上昇しています。中東で衝突が起きると、原油タンカーの航行の自由や、原油の輸出停滞が懸念され原油価格が上昇する傾向にあります。
原油と物価は連動する
原油は物価と深い関連性がみられます。LNGの長期契約も原油価格に連動しているものが多いことから、エネルギー価格に広範に作用するだけでなく、原油を精製して得られる石油製品も広範にわたることから、原油価格が上昇すれば強い物価上昇圧力となる傾向を指摘できます。
紛争激化によりホルムズ海峡が封鎖されれば、ゴールドマンサックスは原油価格が1バレル100ドル、JPモルガンは1バレル120ドルという予想を示しています。つまり紛争前の1.5~2倍の水準です。
ちなみに月足チャートは上図のとおり直近高値は2022年の130ドルです。
物価上昇 → 日銀利上げ → 円キャリー逆回転
現在の世界的な資産価格上昇は、
- 中央銀行の金融緩和による両建て(政府債務と民間資産の両方が拡大)
- 円キャリートレード(低利で円を借りて投資)
で主に支えられてきた面があると言えると思いますが、仮に原油価格が上昇し、日本の物価が大幅に上昇、日銀が利上げに追い込まれると円キャリートレードの巻き戻しによる資産価格の広範な下落の引き金となりかねません。
まとめ
したがって、同紛争による金融市場におけるリスクシナリオは以下のようにまとめられると思います。
- ホルムズ海峡封鎖等による原油価格の急騰
↓ - 物価上昇
↓ - 日銀大幅な利上げ
↓ - 円キャリトレード逆回転による資産価格の下落
あくまで最悪に近いシナリオではありますが、こうしたことが起きても耐えられるポートフォリオにしておくことが肝要かと思います。
具体的には
- 石油関連株(エクソンモービル、シェブロン、INPEXなど)
- ゴールド
の保有はリスクヘッジの有力な候補として挙げられます。米国債はもはや安全資産として今般機能していないので候補から除外しています。
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