ソフトバンクグループはAI(人工知能)時代の中核的受益者となるか
2023年の春から夏にかけ、最注目の銘柄は三菱地所(8802)でした。

三菱地所 株価(出所:Yahoo!ファイナンス)
これまで述べてきた通り、この10年、利益は右肩上がりにもかかわらず、株価は右肩下がり。また、保有不動産の含み益を加味すると割安でした。そこから株価は20%上昇。
SBGは情報革命家として世界をリードするか
そんな三菱地所を上回る潜在力が期待されるのが、ソフトバンクグループ(SBG)です。

2023年Q1決算資料(出所:SBG)
近年、ネガティブ報道や情報が飛び交った
2021年頃、SBGに対するネガティブな報道や情報が飛び交いました。
ビジョンファンド(SVF)が累計赤字となったことや、孫氏が大赤字を受けて投資を控えたことで、「素人投資家」と揶揄する論調さえありました。

2023年Q1決算資料(出所:SBG)
2023年Q1決算資料(出所:SBG)たしかに大赤字ですが、SBGは国際会計基準を採用する投資会社ゆえ、保有株式の株価変動が決算に毎度反映されます。
したがって、そもそも損益が大幅に上下するジェットコースターのような決算になる構造です。
2021年から大赤字、財務を強化し、守りを固めた
2021年からの赤字傾向を受け、SBGはこの3年間、徹底的に守りに入りました。総資産に対する借金を減らすなど、財務を強化しました。

2023年Q1決算資料(出所:SBG)

2023年Q1決算資料(出所:SBG)
2023年6月23日の株主総会で孫氏は、「いよいよ反転攻勢」と繰り返し、徹底的に守りに入った3年間を経て「5兆円を超える手元流動性を持っている。守りは十分できた」とし、「ワクワクしている」とこれから攻めに転じる意欲を見せました。
実際、8月8日に発表された2023年度Q1決算では、投資を再開したことが示され、言行一致。

2023年Q1決算資料(出所:SBG)

2023年Q1決算資料(出所:SBG)
AIがあらゆる産業を再定義し、加速度的に進化するという展望のもと、今後控えるAI革命の先端を担うべく仕込みをしている旨、孫氏は述べています。

2023年Q1決算資料(出所:SBG)
孫氏の展望
その他、孫氏の展望を以下のとおりまとめます。
「チャットGPTを開発した(米新興企業)オープンAIのサム・アルトマン氏とは何回も毎日のように(オンラインで)チャットしたり直接面談している。ものすごいAI革命が起きる」
ソフトバンクの宮川潤一社長は20日の定時株主総会で、文章や画像などを自動で作成する生成人工知能(AI)の独自開発を進めていることを明らかにした。その上でコール…
「どれほど株を持っているとか、どれほど利益を出しているとかは一時的な現象であり、まだまだこの物語は続きます。まだまだ満足していません。5兆円や6兆円では満足する男ではない。10兆円でもまったく満足しません。まだまだ胸の高鳴りが続いています。これが僕の1番重要な想いだと思います」
AIに関するニュースや記事を独自の切り口から発信します。
アーム上場、「AIバブル崩壊」「AI革命の端緒」のどちらか
孫氏は「グループをあげてAI革命の先端を担う」と発言。
水面下で事業準備を進めているという。その中核はSBG傘下の英半導体設計企業「アーム」が担い「(同社の半導体チップを使い)AIが人類の未来に与える、その影響の根源になるような発明や発案を進めている」とした。
ソフトバンクグループ(SBG)が6月21日に開いた株主総会で、孫正義社長は「反転攻勢の時期が近づいている」と述べた。SBGの2023年3月期の連結決算(国際会計基準)は最終損益がマイナス9701億円で、2期連続の赤字。SBG傘下でAI企業な...
2023年9月にアームが上場しました。PERは66.9倍(24年3月期ベース)と高く、エヌビディアの同42.9倍より割高です。
この割高感にもとづいて
- 現在はAIバブルであり、バブル崩壊シナリオを描く人もいれば、
- 孫氏のようにAI革命の端緒にすぎないとする人もいて、
その見方は真っ二つに分かれます。
アームは上場したとはいえ、SBGがアーム株の9割を握ります。「第2のエヌビディア」となれば割高感は霧散しますが、はたしてどうでしょうか。
SBGへの投資は、いわばSBGやアームがAI革命の中核的な受益者となることに賭けることでもあり、孫氏のAI革命ストーリーに賭けることでもあると思います。
NAVを大きく下回る株価

株価チャート(出所:Yahoo!ファイナンス)

2023年Q1決算資料(出所:SBG)
SBGは数字上は割安という認識です。1株あたりNAVは2023年6月末で10,616円に対し、足もとの株価は7,000円以下と本来価値から3割以上安いです。
もっとも、SBGへは私も以前投資していましたが、基本的に同社の株価はNAVより大幅に安い値で推移してきた経緯があります。
なお、「SBGのNAV算出方式は通常と異なる」と指摘する向きもあります。たしかにNAV(Net Asset Value、時価純資産)は、一般に純資産に含み損益を加えて算出しますが、SBGは保有株式の公正価値から純負債(有利子負債)を控除して算出しています。
ただ、SBGは「連結処理される直接投資」ではなく「ビジョンファンド経由で投資する投資会社」であることから、純資産ではなく保有株の公正価値から算出するこの方法はおおむね理にかなっていると考えます。
NAVの推移

2023年Q1決算資料(出所:SBG)
NAVは中長期で拡大し、足もとから孫氏の言うように「反転攻勢」となるか注目です。
まとめ
- SBGの現在の株価は、NAV(正味価値)より3割以上安い
- SBGへの投資は「アームやSBGがAI時代の中核的受益者/先導者となること」、そして「孫氏が描くAI革命ストーリー」に賭けることでもある
純利益が4兆9880億円と過去最高を記録した「2021年3月期 決算説明会(2021年5月12日)」で、孫氏は以下のように語っています。
同じ投資会社でも一時的な博打のような、相場が『下がった』『上がった』と一喜一憂するような、そういったものではなく、AIを使って新しいビジネスモデル、新しいテクノロジーで産業を再定義するような会社をどんどん生み出します
孫氏が描くAI革命ストーリーに賭けるならば、同様に一喜一憂せず経過を見守ることが求められるのでしょう。
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SBGは2019年10月に4015円で買い、2020年2月に5087円で利益確定していました。
SBGは以前からマーケットと実態の乖離が生じやすい企業の1つだと感じています。