「6才のボクが、大人になるまで。」という映画、ご存知ですか?
12年間キャストを一切変えず、登場人物が自然に年を取り、その家族の人生の変遷を何気なく綴っている映画です。
この映画、妙に印象に残っているんですよね。別に内容は奇抜でもなんでもないんです。
恐らく数年前、それもたぶん5年前に海外出張へ行く際にJALの飛行機で見た映画ですが、5年ぶりに最近見返しても、やはり何か訴えかけてくる映画です。
【レビュー】「6才のボクが、大人になるまで」は妙に印象に残る傑作
ではこの映画、何が印象に残っているかと問われると、答えられない。答えられないんですよ。
普通、私の場合、答えられます。
アベンジャーズなら最後の方の戦闘シーンがどうとか、ロードオブザリングならローハンが援軍に駆け付けるシーンとか、ある程度答えられるんですけど、この映画に関しては、答えられない。
12年間という時間を通して、何か訴えかけてくるものがあるんです。
描かれていることは、両親が結婚して子供を産み、子供は両親の離婚により、母が複数の男性と結婚や離婚を経る中で変わっていく環境の中、時と共に中学へ進学し、高校も経て大学へ。
という一般的な家庭でも十分ありそうな、抑揚のある奇抜なストーリーというわけではなく、どちらかと言えばストーリー自体は平々凡々です。
スーパーマンのような才能溢れる子供というわけでもなく、それなりに恋愛をして、学校では好きな写真に没頭し、バイトでは少しサボったりと、言ってしまえば普通です。
しかしなんなんでしょう。そんな普通の日常、そして人の成長、少し示唆的な内容や出来事を描きつつ、大学に入学したところで物語は終わりを迎えます。
なんでしょう、別に特段のメッセージ性があるわけでもない、非日常的な世界観があるわけでもない、どこにでもありそうな1つの家庭を描写し続けているだけと言ってしまえばそうなんですよね。しかしなんとなく魅せられる、そしてまた観たいと思わせる映画です。
おそらく、12年間、全く同じ役者で、12年間という実際の時の流れに合わせて撮影した映画ということが、平凡に思える内容をどことなく非凡にさせているのかもしれません。
印象的なシーンをあえて挙げるとすれば、以下です。
印象的なシーン①母から巣立つ息子
子供が大学入学と共に実家を離れ、寮に巣立つ際に、母親は楽しそうに巣立とうとする息子を前にして「人生最悪の日だ」と泣き始めます。
「私の人生のイベントは、結婚して出産して離婚、これだけよ、あとは葬式だけよ!」と。
自転車の乗り方を教え、離婚して、望んでいた大学講師の職を得て、子供達を大学に送り出したことを母は息子に語ります。
そして、ばつが悪そうに息子は母を励まします。
「これからまだ40年は人生あるよ」と。
母は言います。
「もっと長いとおもっていた‥」と。
前後の文脈から、「子供を産んで世話して、働いて、そうこうしているうちに、人生はあっという間だった」と。
これ、実際ほんとうにそういうもんなんだろうなと思います。
印象的なシーン②要点なんか知るかよ
息子のメイソンが女性に振られた時、励ます父親に向かって息子はこう言います。
「要点は?」
父親はこう答えます。
「要点なんか知るかよ。誰にもわからん。思ったことを、バーっとしゃべってる」
うん、確かにそうですよね。
わざわざ要点をまとめる必要もないし、要点がないと話しちゃいけないわけでもない。
このセリフは、少しドキッとさせられます。要点を求めがちな私たちを暗に風刺しているようにも聞こえました。
仕事でも経済でも効率化、日常でも効率化。とかく効率化が叫ばれがちな世相においては、印象に残るセリフです。
印象的なシーン③普通でいなければならない社会?
息子のメイソンが彼女と話しているシーンです。
すべてさ、好きなことができたら
人生は最高だ
”普通”を演じなくて済むから
あなた 変わってる(笑)
メイソンの言う通り、「好きなことができたら人生最高」だと思います。「なぜなら、普通を演じなくて済むから。」これもその通りだと思います。
そして、「あなた 変わってる」という反応も、これまた印象的な返答です。心の底では共感しつつも、そう言うのか、本当にそう思っているのかは定かではないものの、一定数このような反応もまた、あると思います。
「好きなことができる人生」を、はなから諦めて、本当は欲しているにも関わらず、防衛機制という心理的反応として蓋をする必要はありません。
この3つのシーンは、数年経った今でも強烈に印象に残ってます。
【レビュー】「6才のボクが、大人になるまで」
「6才のボクが、大人になるまで」は、なぜかわかりませんが、印象に残る映画です。
私は映画を相当多く観る方だと思います。今まで観てきた映画のジャンルとしては、SF・アクションなどが比較的多いです。
その中でこの映画はジャンルとしては異彩を放つわけですが、妙に印象に残っているんですよね。ちょっと考えさせられる映画なのかもしれません。
不思議な映画です。ぜひ他の方にも観て頂き、感想を聴きたいと思える、そんな映画です。