【ISM製造業指数】:米国景況感、
【信用スプレッド】:投資家心理が把握可能
現在の市場状況を見る上で、信用スプレッドとISM製造業指数を用いて米国景況感と投資家心理を考察してみましょう。
今回注目するのは以下2つの指標。
1.信用スプレッド
→ 「投資家心理」を表す
2.米国ISM製造業指数
→ 「米国の景況感」を表す
信用スプレッド、ISM製造業指数とは?
まず、信用スプレッドと米国景況感の相関性を表す下表を載せ、説明していきます。
まず、上表青線の「信用スプレッド(BAA債利回りー米10年債利回りの差)」は投資家のリスクセンチメント(投資家心理)を表します。
信用スプレッドの値が大きいほど投資家心理はリスクオフに傾いていることを示し、小さいほどリスクオンに傾いていることを示します。
上表が示す通り、概ね信用スプレッド(投資家心理)は、ISM製造業指数(米国景況感)と連動しています。
投資家はリスクオンの局面では信用格付けの低い発行体の債券を選好しやすく、逆にリスクオフの局面では信用格付けの高い発行体の債券を選好する傾向にあります。
そのため、リスクオン局面では基準となる国債と低格付け債の利回り(=信用スプレッド)が小さくなり、逆にリスクオフ局面では基準となる国債と低格付け債の利回り(=信用スプレッド)が大きくなるわけです。
また、そもそもISM製造業指数とは、ISM(Institute for Supply Management / 供給管理協会)が発表する製造業における景気転換の先行指標であり、50が好況・不況の境目。
製造業350社の購買担当役員に対するアンケート調査の結果を集計・公表したものです。
新規受注や生産などの項目において、前月比で「良い」「変わらず」「普通」の3択形式。米主要経済指標の中で発表時期が一番早いことが特徴です。
信用スプレッドと米国景況感から何が読み取れるか
では以上踏まえた上で、もう一度表を見てみましょう。
今現在、ISM製造業指数は50を上回っており、好況を示唆しています。しかし、2017年~2018年に比べると、直近の2019年2月は55前後まで落ちてきていることがわかります。
これは、ISM製造業指数をみる限りは米国経済が去年より減速していることを示唆しています。
対照的なのは、信用スプレッドです。直近の2019年2月ではむしろ2.49bp(ベーシスポイント)から2.23bpへと低下しています。
ISM製造業指数という景況感を表す指数が悪化しているにも関わらず投資家心理がリスクオンに傾いています。
通常、景況感の好悪が投資家心理に影響を与えるわけですが、足元そうはなっておらず、本来リスクオフに傾く投資家心理が実際はリスクオンに傾いているという状況です。
これは何を示すかと言うと、今後景況感が悪化していくと、リスクオンに傾いた投資家心理の巻き戻しが起こり、リスクオフに傾く反動が大きくなり得ることを示します。
まとめ
現在の市場状況におけるポイントは以下の通り。
- 景況感を表す指数が景気減速を表しているにも関わらず、投資家心理は過熱気味。
- 今後ISM製造業指数などで更なる景況感の減速が示唆されれば、株式市場は大きくリスクオフに傾く可能性。
以上のような状況を踏まえ、リスク許容度の高くない投資家は債券比率や現金比率を高めることで株式市場下落に備えるのも一案ですし、リスク許容度の高い長期投資家は引続き淡々と株式を買い増すこと、これもまた当然一案であります。
引続き定期的なキャッシュフローがある限りは、連続増配株や高配当株・REITを買い付けていく所存です。
Best wishes to everyone!