【現代金融理論・現代貨幣理論】MMTという米国での新たな概念

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「現代貨幣理論/現代金融理論
(MMT、Modern Monetary Theory)」とはなにか

そもそも「現代貨幣理論・現代金融理論とは何か」ですが、端的に言えば「政府の借入が自国通貨建てである限り、政府債務増大は問題なし」とする、いわば左派色の強い財政赤字拡大容認論です。

「独自通貨を発行する国の政府は、際限なく通貨発行が可能なため、債務不履行(デフォルト)に陥らず、政府債務がいくら増えようが問題ない」という趣旨ですが、これが米国で最近議論を呼んでいます。

当該論は、2016年の大統領候補指名において奮戦したサンダース氏の経済ブレーンであるステファニー・ケルトン教授も提唱者の主だった1人とされています。

更に、最年少女性下院議員として注目を集めるアレクサンドリア・コルテス議員も賛同者の1人とされています。

尚、この現代貨幣理論については、米FRBパウエル議長が2月26日の議会証言で「当該理論は全くの誤り」として否定していますが、最近俄かに党内賛同者が増えていると目されるのが当該理論です。

これは、最近の米国政府の財政赤字拡大と軌を一にして、主張が強まっているとも考えられ、現トランプ政権の財政赤字拡大政策を容認する下支えと仮になれば、マクロ経済としては好ましくありません。

そもそも現在の財政赤字は歴史的には異例という扱いです。なぜなら雇用環境が良好な時は、納税額の増大・公的扶助支出の減少により、通例財政赤字は減りますが、現政権の財政政策により今は増えています。

また、トランプ氏は、壁建設やインフラ投資で、財政赤字を増やしてでも、景気を維持して株価も維持をしたいとの見方があり、その分国債が増えることを正当化しうる理論です。

本理論は要は「政府が国債を発行して信用創造により、最悪財政ファイナンス出来てしまうため、自国通貨建ての国債である限りは、ギリシャなどと異なり、財政破綻の心配はない」というのが当該理論の行き着くところとの理解です。

では上述前提で、本理論に対する私見を以下述べます。

本理論のポイントと日米における想定ケース

日本の場合

私は根本的な考えとして、信用創造や財政ファイナンスという観点よりも、日本の銀行などの金融機関(=それはつまり、預金や保険料という形で間接的に金融機関を通して国債を負担・保有している日本国民と同義)の金融資産の総額、つまり家計金融資産の総額が日本政府の債務総額を下回る事態になった時に、どういうことが起こるのかというのがポイントの1つと考えます。

日本の政府債務が家計金融資産を上回るということは、日本国内で国債の新規発行を引き受けきれない・消化しきれないことを意味します。

そうすると、外国人投資家に購入してもらうか、日銀が購入量を増やすか、この2案が考えられます。

外国人投資家の持ち分は既に増えており、日銀の持ち分も既に増えています。このまま外国人投資家の持ち分が増えると、懸念されるのは何らかの事象をきっかけに(例えば政府債務が家計金融資産を超える際に)売り浴びせに遭う可能性があります。

売り浴びせに遭うと、国債需給が悪化し、国債価格が下落(=利回りは上昇)し、新規発行の際に利払い負担が増えます。

この利払い負担に耐え切れなくなると、「デフォルト宣言」であることは歴史が示唆しています。ただ、ここでMMT理論の登場でしょうか。日銀による財政ファイナンスが解決の一手になり得る、というのが当該理論の示す一端とも解釈します。

日銀が国債を購入するという財政ファイナンスという手がとられると、ハイパーインフレなしで財政ファイナンスが可能なのか、ここがポイントだと思います。

以下が財政法第五条であり、日銀の国債直接引き受けを禁じる内容です。

『財政法第五条  すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。 』

現在、日本は市中銀行が一旦引き受けるという間接的引き受けが行われているわけですが、直接と間接に大きな違いはないと理解しています。一旦銀行が経由するか否かというだけで、そこに本質的な差異はないはずです。

日銀がどこまで国債を引き受けた場合に、臨界点を突破するのか、あるいはハイパーインフレという臨界点がそもそも存在するのかしないのか、ここは実際どうなるかわからないというのが正直なところです。

では次に米国の場合を見てみましょう。

米国の場合

米国で日本と大きく異なるのは、国債を国内で賄っているのではなく、売り先が海外であるということですね。

海外投資家は当局の意志に関係なく、市場原理で動きますから、国債に対する信用不安や危機が起こった際に「売り」だと思えば普通に「売る」でしょう。

ここが自国の機関投資家経由で国債を購入するケースと異なる点ではあります。

国債が売られると、金利が上昇します。米国債はドル建てですから、ドル建て国債を売却すると、潜在的にドル売り外貨買いの需要が生まれます。

つまり、ドル安・金利上昇が起こります。

さて、ここでMMT理論の登場です。この金利上昇を抑えるために、中央銀行であるFRBが量的緩和を実施して米国債を買うことになるわけですが、日本の場合と同様、その後ハイパーインフレが起こるか否か、ここがポイントでしょうか。

さて、この理論の展開の仕方であれば、米国は日本と異なり海外投資家に国債消化を頼っていると先述したものの、議論のポイントは同じ「中央銀行が国債を引き受けた場合、または引き受け量がある臨界点に達した場合にどうなるのか」という点に収れんしましたね。

図らずも、以下下線部の表現に一定の信用性を与える結果になります。(国債の引き受け先がポイントなのではなく、独自通貨発行権の有無がポイントであるという意味で)

MMT理論は、「独自通貨を発行する国の政府は、際限なく通貨発行が可能なため、債務不履行(デフォルト)に陥らず、政府債務がいくら増えようが問題ない」という趣旨(冒頭より抜粋)

まとめ

ということで、以上現代貨幣理論(MMT)について概要と見解を書いてみましたが、実際にその臨界点に達するかどうかが、1つ目の分岐点というところなのでしょうか。

この不透明さがあるからこそ、議論を呼ぶトピックと言えるかもしれません。

そしてFRB議長という立場としても、当然この理論を否定しないわけにはいかないですよね。米ドルという自国通貨であり基軸通貨の信認に係ることですから。

この手の話題を考えると、個人が出来うる方策としては、リスクを分散するしかありませんね。

アセットクラス・通貨を分散、希少性のあるコモディティ(純金など)に分散・現物資産に分散、この辺りが個人が採れる現実的な方策に結局なってくると感じます。

ご参考になりましたら幸いです。

Best wishes to everyone!

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公開日:2019年3月19日