タカラレーベンインフラ投資法人の太陽光発電収益の仕組み
そもそもインフラファンドと呼ばれる太陽光発電事業の収益構造は以下の通りです。
- 投資法人であるタカラレーベン・インフラ投資法人が、太陽光発電設備を賃借人であるタカラレーベン株式会社(以降、賃借人)に貸し出す
- タカラレーベン・インフラ投資法人から借りた賃借人が発電設備を用いて発電事業を行う
- 賃借人は発電した電力を電気事業者へ売電し、売電収入を得る
- タカラレーベン・インフラ投資法人は発電設備を貸し出した見返りに賃料を得る
以上のような流れでビジネスサイクルで営まれます。
ですから、発電設備については同投資法人の貸借対照表上に、構築物・機械及び装置といった形で固定資産の欄に載ってきます。
安定収益が期待される太陽光発電事業
太陽から光が注がれる限り、発電事業は継続され、後述する管理・修繕費用は借主負担ですから、安定した収益が期待できると思っています。理由は以下の通りです。
同投資法人の収益源となる先述した賃料は以下の式で求められます。
収益安定要素その①:最低保証賃料
最低20年間の最低保証賃料という形で賃料が保証される貸借契約を結んでいますから、収益構造は非常に安定していると言って良いでしょう。この20年というのは、背景として日本の固定価格買取制度(FIT)が20年間であることに起因しています。
天候による日照時間の増加などの要因で実際の発電量が多いと、実績連動賃料という形で+αの賃料を得られるという貸借契約を結んでいます。逆に天候不良で発電実績が芳しくない場合は、実績連動賃料が発生しません。
2017年5月期までは概ね想定発電量より実績発電量は良いようです。
収益安定要素その②:維持・管理・修繕費用は賃借人が負担
日常的な維持・管理・修繕等の費用は賃借人(借主)が原則負担することになっています。尚、太陽光発電設備のオペレーション・メンテナンスは技術的知見のある外部業者に委託しています。
タカラレーベン・インフラ投資法人の特徴
同社の特徴はズバリ、以下の通りです。
- 太陽光発電所が電力需要の高い関東圏(の郊外)に集中している(青森・宮城・鹿児島にも1か所ずつあり)
関東の郊外に集中しているので、地域分散の観点からは関東に悪天候が集中した際に発電量が低くなるというデメリットがある(ただし上述の通り、最低保証賃料アリ)一方で、REIT(不動産上場投資信託)と比べて、償却資産の割合が大きく、減価償却が相対的に大きくなります。
郊外故に土地価格が都市部より低く、土地は減価償却を通じて費用計上されないためです。(つまり、個人の節税の観点から言えば、土地の上に建設した建物がないと減価償却されないので、土地の購入だけでは節税にはなりません)
減価償却費が相対的に大きいということは、純利益を源泉とした純粋な分配金ではなく減価償却費を源泉とする利益超過分配金にまわせる額も増えるということです。
減価償却費というのは、簡潔に言えば、長期使用する固定資産を法定の償却方法(使用可能期間、償却率等)にしたがって、取得年度に全額費用計上せずに各事業年度に毎年少しずつ償却(キャッシュアウトを伴わない費用計上)するものです。
キャッシュフローは税引後当期純利益+減価償却費で間接的に求めることも可能ですから、減価償却費が大きいと、キャッシュフローにはプラスのインパクトになり、利益超過分配金が出しやすくなるということです。
太陽光は将来的には更に新規投資をしていくには、「売電制度がどうなるか」という政策上の不透明さがありますから、資金保留効果のある減価償却費分を手元資金として置いておくより、投資家に還元した方が合理的だと思います。
手元に置いておくより投資家に還元した方が、投資効率を測る分母部分が小さくなりますから、投資効率としてはアップしますよね。
利益超過分配金に対する同投資法人の方針
以下公式HPから抜粋した内容の通り、あくまで同投資法人の財務に悪影響を及ぼさない程度で利益超過分配金を出すという方針です。
表面的な分配利回りを上げることに拘泥しないという姿勢は好感を持てます。
本投資法人は、長期修繕計画に基づき想定される各計算期間の資本的支出の額に鑑み、長期修繕計画に影響を及ぼさず、かつ、資金需要(投資対象資産の新規取得、保有資産の維持・向上に向けて必要となる資本的支出等、本投資法人の運転資金、債務の返済及び分配金の支払い等)に対応するため、融資枠等の設定状況を勘案の上、本投資法人が妥当と考える現預金を留保した残額を、原則として全額、毎計算期間分配する方針とし、このうち、利益の額を超える額は、利益を超えた金銭の分配(出資の払戻し)として分配します。
ただし、これらの分配は、本投資法人の財務状態に悪影響を及ぼさない範囲で、かつ、法令等(投信協会の定める規則を含みます。)に定める金額を限度とします。
太陽光発電による売電時の買取価格
IR資料の上図の通り、発電所全18か所のうち、5か所が40円、13か所が36円とかなり高い時期の価格で売電できることになります。この価格が固定で20年続くのは大きい。
ただ日本全体で見ると、固定価格買取制度(FIT)の存在により、再生可能エネルギーの高コスト体質の温床となっており、欧州や中国に比べて再エネ普及に遅れを取っています。
分配金推移
安定した推移と言って良いでしょう。利益超過分配金が多すぎることもありません。2017年10月は雨天が多く、日照量は少な目だったことが予想されますが、分配金予想は堅調です。
最低賃料保証があり、同投資法人の営業収益の下限がいわば設定されているようなものですから、今後とも安定した分配金を期待したいところです。
太陽光がいわば収益の源泉ですから、株式とは別のサテライト的な形でまったり保有していきたいと思います。
Best wishes to everyone!