新登場「グローバルX NASDAQ100・デイリー・カバード・コール ETF(563A)」は攻めた商品
2026年4月23日、563A(グローバルX NASDAQ100・デイリー・カバードコールETF)が東証に上場しました。
ひとことで言えば、「NASDAQの成長を一部残しつつ、リターンを前倒しで配当化するETF」です。
FIREに踏み切る際、キャッシュフローが精神的な支えになります。クセのある商品ですが決断を後押しする目的で買う。それもひとつの形かと思います。
以下ご質問をいただいています。
グローバルX 563Aについて
はじめまして。○○と申します。
いつもブログを楽しみに読ませていただいています。
数年前、FIREに憧れて『本気でFIREをめざす人のための資産形成入門』を読み、投資を始めました。
おかげさまで配当金は着実に増えているのですが、まだまだFIREするには遠く、体が元気なうちに早くFIREして人生をより楽しみたいと最近強く思うようになり、配当金の積み増しをより早くしたいと思うようになりました。
そんな中、「563A グローバルX NASDAQ100・デイリー・カバードコールETF」という商品が上場されると発表がありました。
値上がり、高配当両方欲張りたい私には魅力的に映り、すぐに飛びつきたい気持ちですが、穂高様の目にはどう映りますでしょうか。
リスク、メリット、デメリット少し調べるだけでも出てきますが、FIREを目指す人の投資先としてアドバイスをいただけると幸いです。
「体が元気なうちに早くFIREして人生をより楽しみたい」とのこと、共感します。早く配当を増やしたいと思いますよね。ではどんな商品か見てみましょう。
563Aは、値上がり益とオプション収入の両取りをねらう商品
563A(グローバルX NASDAQ100・デイリー・カバードコールETF)は、「NASDAQの値上がり益」と「毎日入ってくるオプション収入」を両取りしようとする設計です。
特長①:NASDAQの値上がり益を享受できる
従来のQYLDや2865(グローバルX NASDAQ100・カバード・コール ETF)は値上がり益を享受できない設計でしたが、オプション売却のカバー率を10%程度と低くすることで、残り約90%の部分でNASDAQの値上がり益を享受できる設計となっています。
特長②:分配利回り15%をめざす
オプションのカバー率が低い分、配当利回りは従来のQYLDや2865と比べて低くなるかと思いきや、「従来の月次ではなく、日次のオプション入れ替えによる効率化(下図ご参照)」で15%の分配利回りをめざすと公式ページでは示されています。

出所:グローバルX

なお、ここで1つ疑問が生まれます。たしかにオプションは満期日に近づくと価値が減少していくのはその通りで、デイリーのほうがマンスリーよりプレミアム収入が高くなるのは理解できます。では「なぜ今までの同社の類似商品は効率的なデイリーではなくマンスリーのオプションを採用してきたのか?」と。これについて同社は「かつての市場では流動性が低く、巨額の資産を運用する際にスリッページなどのコストが大きかったためだが、近年米国市場におけるデイリーの取引高が急増したことで、低コストなデイリーで運用可能となった」と説明しているので、納得はできます。
リスク①:NASDAQが弱いと減配が見込まれる
ただし、NASDAQが上昇局面では増配、下落局面では減配が見込まれる設計(基準価額に対して一定の比率(例:年率15%程度)のプレミアム獲得を目指すため)なので、NASDAQがいい時はいいけれども、弱い時は分配金も減るという、レバレッジ的なものがかかるというイメージかと思います。
リスク②:トータルリターンは「NASDAQに劣後しやすい」
投資対象は、Google、Apple、Microsoftなど、米ハイテク企業100社(NASDAQ100)。オプションで値上がり益をやや棄て、分配金に対する課税を踏まえると、NASDAQのリターンに構造的に劣後する動きが想定できます。
利回りも・値上がり益も・分配金の増加も欲しい方のニーズに応える、従来の伝統的なカバコETFとは一線を画した、三刀流の進化系カバコETFです。
(Global X 公式ページより)
公式は以上のように表現していますが、 「トータルリターンをインカム化する商品」との表現がより正確かなと思います。
どうやって利益を出す?
ちなみに利益の源泉は以下2つです。
- 株が値上がりしたときの利益
- 「株を買う権利」を他人に毎日売ることで得られる、「プレミアム(手数料収入)」
従来のQYLDや2865は、②に特化したせいで超高配当ながら株価が右肩下がりで推奨しづらい商品でした。
しかし今回の563Aは①をかなり手厚くした商品なので、値上がり益が極端に制限されない設計でありつつも、オプションを日次で活用(=満期までの価値減少をおさえつつオプション収入を高水準に維持)して高配当を期する商品です。
税金・コスト面の効率は?
563Aは信託報酬が0.2775%程度と高くはありません。普通のNASDAQ100指数連動ETF(2631など)は0.2%程度のものもあります。したがって、コスト面はやや劣りますが大差はありません。
税金効率としては、 資産形成期であれば、分配金を出さずに内部で再投資されるインデックスファンドの方が、税金の繰り延べ効果により最終的な資産額は大きくなりやすいです。
まとめ
563A:NASDAQの成長を一部残しつつ、リターンを前倒しで配当化するETF
メリット
- NASDAQ上昇の約90%を取りに行ける
- 毎日オプションでインカム生成、NASDAQが強いと増配も期待できる
- 高配当(目標15%)
デメリット
- 上昇の一部を放棄 → 長期リターン劣後
- NASDAQが弱いと減配されやすい設計
- 分配課税 → 複利効率低下
- 下落耐性が弱い(特にジリ下げ)
キャッシュフロー最重視の人に向いていますね。逆に資産最大化をめざす人や、長期複利を重視する人には向いていません。
まだ上場して日が浅く、下落局面における値動きの実績にとぼしいので、ポートフォリオの主力にするというよりは、サテライト的に活用するのが安全かとは思います。
王道は高配当株やJリート。ただし、昨今の高配当株は増配率より値上がり率のほうが高いため、銘柄を入れ替えないと時価評価額に対して2~3%程度の配当利回りにとどまります。この状態で配当金の範囲内で生活すると、資産を使い切れずにどんどん増えて使い切れない状態にすらなりえます。
この状態を回避すべく、ポートフォリオ全体の配当利回りを底上げ目的でこの手の商品を一部組み込むという使い方も考えられますね。
以下はご参考まで。
563Aは、じり下げに弱い
ちなみに商品の設計上、従来の類似商品とは違いがあります。従来のQYLDや2865はオプションを月次で新しく入れ替える(ロールオーバーと言います)するのに対し、今般の563Aは毎日ロールオーバーします。これによる影響は以下の通りです。
2865(月次ロールオーバー)は「急騰→下落」に弱い
持っている株の100%(全部)に対して、「1ヶ月間、今の価格で買わせてあげる権利」を他人に売ります。
例えば、株価が100円から150円に急騰しても、あなたは「100円で売る」と約束してしまっているので、手元には「100円」と「最初にもらった手数料」しか残りません。50円分の儲けは他人のものになります。
株価が150円から90円に暴落したとします。あなたの資産は100円(上昇分はもらえていない)から90円に下がるので、しっかりマイナスになります。
つまり、「上がる時は仲間外れなのに、下がる時だけしっかり下がる」という資産が削られやすい性質です。
563A(日次ロールオーバー)は「ジリ下げ」に弱い
563Aは、持っている株の10%だけ権利を売り、90%は普通に持っているだけです。
したがって、90%は普通に持っているので、株価が上がればそのまま利益になります。さらに「毎日」リセットするので、昨日の上昇を確定させた状態で、今日の勝負ができます。
上昇への追従性は高いですが、下落に対するクッション(守り)は、オプション収入が少ない分、薄くなるでしょう。