海外駐在員からの投資ご相談
「海外駐在中は国内証券会社での投資に制約が生じるので、現地に証券口座を開いた」というケースにおけるご相談内容と回答を共有します。
題名: 【お金の相談会】海外駐在員からの投資相談のお願い
メッセージ本文:
はじめまして。ブログを拝読しております。
■ 自己紹介
39歳、日系メーカー勤務の駐在員で、現在中国に赴任しております。43歳頃の帰国を予定しており、残り4〜5年の駐在期間で資産の土台を築き、帰国後は配当収入を生活の柱にしたいと考えています。
日本証券口座では投資信託や日本株を一部保有していますが、海外在住のため新規購入や積立ができず、現状は保有継続のみとなっています。そこで、駐在中に積極的に投資できる場として香港を選び、香港の証券口座を開設して高配当ETFを中心に毎月積み立てを始めました。香港株の配当が非課税という税制メリットも、香港を選んだ大きな理由のひとつです。
穂高さんが北京大学に留学され、香港株・中国株にもカテゴリーをお持ちであることを拝見し、「この方なら海外在住者の状況を前提条件を理解してくださるのでは」と、思い切ってご相談をお願いしたく存じます。
まさに穂高さんがブログで書かれていた通り、「前提条件や状況を把握しないと結論が変わってくる」という点が、海外駐在員の投資では特に当てはまると日々感じております。
■ ご相談したいこと
1. 現在の香港ETFポートフォリオ(配分・銘柄)
2. 駐在中の4〜5年間で配当の土台をどこまで築けるかのロードマップ
3. 帰国後の配当生活設計(香港資産+日本のiDeCo/NISAの最適な組み合わせ)
穂高さんが実践されてきた「配当の積み上げ」と「支出の最適化」という考え方に深く共感しており、駐在という限られた期間を最大限に活かすための道筋について、率直なご意見をいただければ大変ありがたく存じます。
■ 希望プラン
書面回答ありのプランでお願いしたいです。
お忙しい中恐れ入りますが、何卒よろしくお願いいたします。
■資産状況
行ラベル 合計 / 円換算 合計 / 円換算2
現金 ¥28,931,536 55.70%
株式 ¥12,579,188 24.22%
保険 ¥10,434,939 20.09%
総計 ¥51,945,663 100.00%
※現金には退職金600万ほどを含む、保険は香港保険(年金予定)
このたびはありがとうございます。異国の地で日常業務に加え、将来の生活設計を見すえて現地で口座開設とのこと。少しでもお役に立てましたら光栄です。
海外居住者特有のもどかしさ(日本の口座が使えない等)とチャンス(現地の税制メリット)の両面あるかと思います。
資産ポートフォリオ(配分・銘柄)
現在の資産状況を拝見すると、退職金を含めた現金比率が55%超と非常に潤沢です。一方で保険の比率も20%と低くありません。
折しも(4月3日時点で)イラン情勢を受け株式市場は軟調ですので、私でしたらこれを機に株式を買い進めます。ちなみにS&P500はEPSが上昇基調で株価は今般下げているため、PERの過熱感が相当払拭されてきている状態です。
保険の返戻率は高く設定されているように映りますが、効率面では株式の複利運用に劣るケースも多いです。特定の相続目的等がないのであれば、比率を下げ、より流動性と成長性のある資産へ振り向けることが近道になりえます。
香港での投資
香港で株を買う場合、非課税のメリットは大きいですね。帰国後売却する際には日本で確定申告が必要かと思います。その際、日本の証券口座なら売却してすぐに源泉徴収されますが、香港の証券口座ですと年度末の確定申告の時まで納税を繰り延べることができるでしょうから、数か月の税繰り延べメリットも見いだせると思います。
一方、確定申告の際は取得単価の計算はおそらくご自身で行う必要が考えられます。(帰国後)日本の居住者が海外口座で利益を得た場合、特定口座のような自動徴収の仕組みがないため、自力での確定申告が求められるはずです。特に、取得時と売却時、あるいは配当受取時の為替レートを確認し、日本円ベースで損益を計算し直す作業を要するケースが想定されます。したがってそのことも見据えて、買う際は細かく買いすぎるとのちのち計算が煩雑となる可能性も想定しておくとよいのではないかと思います。
ちなみに、香港の金融機関から日本へ送金する際、送金手数料だけでなく、中継銀行でのリフティングチャージや着金手数料といった複数のコストが発生しうると思います。SBI新生銀行なら条件を満たせば外貨受取で無料かと思います。
駐在中に配当の土台をどこまで築けるか
価値観や支出の最適化の内容次第ながら、海外駐在時は手厚い待遇と住居コストの低さ等から資産形成を加速させる好機でもあります。香港で証券口座を開くなどして株を買い進めることは有用な一手かと思います。
配当重視ならば高配当株ETFが簡便に配当を積み上げる際に有効です。高配当株ETFは、Global Xハンセン高配当株ETFのことかと思いますが、一国のみを対象としたETFなので、それ以外の国々に投資可能な証券口座であれば、日米の高配当株ETFなどにも分散させておいたほうが、心理的には安心感も生まれるとは思います。日本株ならば1489が最も流動性の高い高配当株ETFです。
とくに香港は本土の影響が強まって以降は、開かれた資本市場の色彩は薄まっているかもしれず、特有のリスクが生じる可能性もありますので。
年収は手取り1,000~1,100万円台とお見受けしますので、生活支出にもよりますが4年で年間100万円程度の配当積み上げは現実的な射程圏内ですね。月60万円×利回り4%前提なら、4年後の年間配当は100万円以上は積み増せる計算になります。
帰国後の配当生活設計(香港資産+日本のiDeCo/NISAの最適な組み合わせ)
帰国後は確定申告の手間も考えると、できるだけ日本の証券口座(NISA優先)で株を買いたいところですね。
iDeCoは価値観次第、老後より今のほうがお金の価値が高いと感じるならば、iDeCoは必ずしも必要ではなくなります。
以上が概要となる書面回答になります。ご不明点等あれば遠慮なくおっしゃってくださいませ。
追加のご質問
のちにいただいた以下追加のご質問は、当日口頭で回答。
1. 保険の位置づけについて
保険比率20%について見直しのご提案をいただきました。現在プルデンシャル香港で現地で保険に加入しており、途中解約すると元本割れとなるため、いずれも60歳まで保有し年金代わりとする方針です。この前提で、残りの資産(現金+株式)の配分はどのようにお考えになりますでしょうか。
2.中国香港集中リスクと税効率のバランスについて
中国香港一国への集中リスクについてのご指摘、まさに私も気になっている点です。一方で、香港の証券口座で日本、米国ETFを購入した場合、配当に対して日本、米国で10%の源泉徴収が発生します。駐在中は香港ETF配当が完全非課税という大きなメリットがあるため、「税コストを払ってでも分散すべきライン」について、穂高さんの感覚をお聞かせいただけますでしょうか。例えば、ポートフォリオの何割程度を非香港(米国や日本の高配当ETF等)に振り向けるのが現実的でしょうか。
3.年間配当100万円のロードマップについて
4年で年間100万円の配当は射程圏内とのことでしたが、現在の月額投資予算(約HKD 30,000=約60万円)を前提とした場合、どのような積立ペースや銘柄配分が望ましいか、お聞かせいただけますと幸いです。
4. 帰国後の確定申告と購入頻度について
「細かく買いすぎると確定申告の計算が煩雑」というアドバイス参考になりました。現在は毎月DCA(ドルコスト平均法)で積み立てて予定でしたが、例えば隔月や四半期ごとにまとめて買うほうがよいでしょうか。実務的に管理しやすいラインをご教示ください。
→月1回 or 四半期1回に統一すれば確定申告は現実的に管理可能かと思います。
ご相談ありがとうございました。
なお、現地の肌感覚として「(一般的なメディアの報道とは異なり)中国経済には楽観的」との趣旨が印象的でした。たしかにその感覚を踏まえて香港株を少なからず持つというのも自分なりの主体的なスパイスとして楽しめそうですよね。物事を継続する上で自分の意思というスパイスを混ぜて楽しむことは実に重要だと思います。
今回のケースでは海外駐在という特殊な環境下でのご相談でしたが、「おかれた環境(制約)の中で最善手を探り、行動に移す」という様式は、すべての資産形成において通底する王道だと感じます。
残りの駐在生活が、資産面でもご経験面でも、実り多き素晴らしいものとなりますよう心より応援しております。
関連記事
証券会社、当局への確認、実例を踏まえて判明したことは以下記事をご覧ください。