IFA(資産アドバイザー)に投資信託を勧められたら、手数料を確認しよう
証券会社には、無料でIFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)に相談できるサービスがあります。無料ということで、気軽に相談されているかたもいると思います。
ほかにも証券会社の仲介なしにIFAとして活動している人もいます。こうしたIFAさんの被害に遭ったとおぼしきかたを「お金の相談会」を通して知り得たので、ちょっと注意喚起というか、このような視点もあるということで共有します。
高額な手数料を(間接的に)とられる
そのかたは、「ふつうでは買えない、私経由なら買える」といううたい文句で、以下投資信託をおすすめされたとのことでした。
- アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型
しかしこの投信は、ふつうに楽天証券やSBI証券で買えます。したがって明らかにIFAの主張は誤りです。また、このかたは受託資産の1%を毎年手数料として徴収し、相談料は30分で3万円と高額でした。
以上は証券会社が仲介していないIFAの詐欺まがいの実例です。以下からはより一般的であろう「仮に楽天証券で無料で紹介されたIFAが同じ商品を勧めてきた場合、どうなるか」というケーススタディです。
例:「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型」の販売手数料は本来無料なのに、3.3%発生
このIFAが推奨してきた投資信託はそもそも問題というか、楽天証券のような大手証券会社で買っても微妙な商品と考えられ、仮に楽天証券経由のIFAに勧められて購入した場合、概要は以下の通りです。
- IFAさん(以降:IFA)が仲介しない投資信託は販売手数料が無料。しかし、IFAが仲介した投資信託は「IFA 手数料」なる高額な手数料が適用されるため、IFAへの資産運用の相談自体は無料ながら、IFAからおすすめされた投資信託を買うと高額な手数料が発生する
例:アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型の場合、販売手数料3.3%(楽天証券)+元々の運用管理費用1.7% - IFAさんには、「高い手数料の投信を売ったほうが自身の収入が増える」という経済的動機がある可能性に留意
- S&P500とのリターン比較がなされているが、組入銘柄をふまえるとNASDAQと比較が適切では。その場合、リターンはベンチマークより大きく劣後
「無料ほど高いものはない」
上記結論に至った過程は以下の通りです。
まず顧客である個人投資家が、無料で楽天証券のIFAに相談できるということは、IFAが慈善団体でないかぎりは「①顧客から間接的に」または「②顧客以外の組織から」IFAが収入を得ているはずです。
そう考え、くだんの投信(アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型)の詳細を調べてみたところ、楽天証券のページに以下の記載がありました。

出所:楽天証券
つまり、「IFAに無料相談をせずにこの投資信託を買えば買付手数料は無料なのに、IFAに無料相談してこの投資信託を買うと、本来無料であるはずの手数料が発生する」ということですね。
IFAさんに無料相談して買うと、高額な手数料が発生
そこで、上記画像のリンク先の下段にある以下画像をクリックします。

出所:楽天証券
すると、IFA手数料の一覧が確認でき、くだんの投資信託を調べると、以下のように表示されます。
1億円未満の場合、税込みで販売手数料が3.3%。3.3%という手数料は非常に高いです。また、この投資信託自体の運用管理費用が1.727%(こちらで確認できます)なので、仮に1,000万円を投資すると以下コストが発生します。
- 販売手数料:33万円(1度きり)
- 運用管理費:17万円(毎年継続して発生)
計50万円のコストです。対して昨今のインデックスファンドは運用管理費用1万円以下(0.1%以下)なので非常に高額であることがわかると思います。私ならおすすめしません。
IFAさんの収益構造
調べると、IFAさんはこの手数料の一部を受け取る収益構造となっているようです。なぜわざわざ低コストのS&P500連動型やNASDAQ連動型の投資信託ではなく、この投資信託をすすめるのか納得しました。「手数料の高い投資信託を売ったほうがIFAさんの収入も増える」ということですよね。
【注意】リターンの見せ方が巧妙
なお、手数料が高くとも、高いリターンを示しているなら投資する価値はあります。そこで、運用会社である「アライアンス・バーンスタインズ」の月次レポートを確認しました。
上図左上にS&P500との比較リターンがあり、たしかにS&P500を上回っています。実際、そうした説明をIFAさんから受けたそうです。
しかしよく見ると、上図右下の「組入上位10銘柄」はNASDAQ100の構成銘柄と酷似しています。マイクロソフト、アマゾン、エヌビディア、メタ、アルファベット、コストコ。実に上位7銘柄のうち6銘柄がNASDAQ100の上位10銘柄と重複しています。
本来比較するベンチマークは、S&P500ではなくNASDAQでは
であるならば、本来比較すべきはS&P500ではなくNASDAQではないでしょうか。
S&P500とNASDAQでは、上図のように大きなリターン差があります。したがってNASDAQ100と比較すると、この投資信託はリターンが大きく劣後することになります。
結論:IFAさんがすすめる高コストの投信に投資せずとも、低コスト投信やETFで取り崩せばよいのでは
つまり、この投資信託「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型」に高い手数料を払って投資せずとも、NASDAQ100に連動する低コストの投信やQQQというETFを買えばよいことになります。
この投信のように毎月分配金がほしければ、定期取り崩しを設定すればよいです。
まとめ
以下のようにまとめられます。
- 当該投資信託は、某IFAは「ふつうでは買えない、私経由なら買える」と高額な手数料を徴収して主張するも、大手ネット証券会社で買えるので主張は明らかに誤り
- IFAさん(以降:IFA)が仲介しない投資信託は販売手数料が無料。しかし、IFAが仲介した投資信託は「IFA 手数料」なる高額な手数料が適用されるため、IFAへの資産運用の相談自体は無料ながら、IFAからおすすめされた投資信託を買うと高額な手数料が発生する
例:アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型の場合、販売手数料3.3%(楽天証券)+元々の運用管理費用1.7% - IFAさんには、「高い手数料の投信を売ったほうが自身の収入が増える」という経済的動機がある可能性に留意
- S&P500とのリターン比較がなされているが、組入銘柄をふまえるとNASDAQとの比較が適切では。その場合、リターンはベンチマークより大きく劣後
IFAさんの事業そのものを否定する意図はありませんが、とくに日本では銀行や証券会社による手数料ビジネス(高い手数料の投信を買わせる)が横行してきた歴史があり、私の母も高い手数料の投資信託を知らずに買っていたことがありました。
それはまさに投資に詳しくない人からお金を搾り取る構造でもありましたし、投資の知識が豊富になければ上記のインデックス比較など主体的に判断できないと思います。
実際私の周囲でまさに本件のような事例があったため、記事としました。一応本投信のリターンはプラスであることから「高コストとはいえ本投信を買わないよりは買っていたことで収益自体は得られていますし、あくまでよりよい選択肢がほかにあると思います」という趣旨であることを申し添えます。
一案としてご参考になれば幸いです。
関連記事
本件を知り得た相談会の実例は、こちらです。