映画『ハムネット』 観てよかった作品

出所:公式ページより
「なんやろこの作品、よく知らないけど見てみよう」
そんな作品にかぎって、印象に残る内容だったりします。本作もそのひとつでした。
悲しみの昇華と、人間のたくましさ
生きる途上では山あり谷あり、悲喜こもごもですね。その落差がどれだけあろうとも、たとえ頭から1秒も離れぬ事象に遭おうとも、それでもやはり生きていくのが私たち人間と言えましょう。
しかしそれは同時に重荷を背負うことをも意味します。その重荷が、人の足腰を、精神を、より強靭にすることもありますね。少々のことでは動じない、と。
悲劇や痛みを完全に避けることはままならないわけですが、遭った際にいかにして昇華するのか。その過程で傑作が生まれたと。痛みなくして生まれることはあり得なかった。
痛みというのは負荷がかかると同時に強烈なエネルギーを生む装置にもなり得ます。そのエネルギーをいかにして転化させるのか。絶え間なき苦痛によって滂沱の涙をともなう悶々とした日々が続き、「いつ果つるのか…」その絶望が胸中を色濃く支配し始めた時に限って、苦難の歳月の結晶が形作られる。
深い絶望の淵に立たされた時、人はどう生きるのか
本作が美しいのは、悲しみをただの悲劇として終わらせず、葛藤の末にそれを芸術(演劇)という形で永遠のものへと昇華させていく過程が描かれている点です。
自分の力ではどうにもならない運命に翻弄されながらも、残された者はその痛みとともに前を向き、今日を生きていく。そうやって悲しみを抱えながらも再生していく人間のたくましさやしなやかさには、ひとつの希望を見いだすことができます。
目の前の時間を慈しむ
人間は良くも悪くも環境に順応する生き物ですから、平和な日々が続くとついそのありがたみを忘れてしまいがちです。定期的にこうした良質な映画に触れることは、少しズレてしまった自分の軸を、本来あるべき「感謝」の真ん中へと引き戻してくれる引力があるように感じます。
今、目の前にある時間を惜しみなく、大切なものに注ぎたい。改めてそう思わせてくれる、観てよかったと思える作品でした。
関連記事