サンディスク「Investor Day」がキオクシアに与える示唆
キオクシアの協業相手でもあるサンディスクのInvestor Dayが開催され、株価は2日続けて大きく上昇しました。
内容を見ていて、キオクシア株保有者として印象に残ったのは、「NANDを手がけるキオクシアは、単なる景気循環株」という前提を、見直す材料が強化されそうだという点です。
従来のNAND市場はシクリカル、つまり
- 需要増 → 価格上昇 → 各社増産 → 供給過剰 → 価格暴落
というサイクルを繰り返してきたと。
そのためキオクシアが現在どれだけ大きな利益を出していても、どうせ今がピークなのでは、いつまで今の利益が続くのか、と市場から警戒されやすいわけです。
しかし今回、サンディスクは2028〜2030年度の長期モデルとして、「粗利益率約80%、営業利益率約75%」という非常に高い収益性を掲げました。
もちろん、この数字がそのまま実現する保証はありませんが、重要なのは、サンディスク自身が現在の高収益を一時的なNANDバブルとは見ていないことです。
背景には、主に3つ挙げられます。
① 長期契約が増えている
サンディスクは、顧客との複数年契約(LTA)を急速に増やしています。
2027年度には生産量の約半分、2028年度には約3分の2を長期契約でカバーする計画です。
従来のように、NAND価格が下がった瞬間に顧客から値下げを要求される構造から、少しずつ変わろうとしています。
キオクシアも同様に、長期契約比率を高める方針を先の決算で示していました。つまり「NAND価格に振り回される会社から、ある程度収益を安定させられる会社へ変わる可能性がある」と理解できます。
② むやみに増産しない
メモリ株で最も怖いのは、需要が強いからと各社が一斉に工場を増やし、数年後に供給過剰になることです。
ところが現在は、「微細化や高密度化によって、ウェハー投入量を大きく増やさなくても生産bit数を増やせるようになっている」としています。
※ウエハーとは、「半導体チップ(IC)を作るための薄い円盤状の基板のこと」との由
サンディスクとキオクシアが共同開発するBiCS FLASHでも、この方向性が進んでいます。つまり、需要増=すぐ工場を増設ではなく、技術進化で供給を増やしながら、価格も守ると。これが続くなら、昔よりもNAND価格が崩れにくくなる可能性があります。
キオクシア投資で見るべきものも変わる
今回のInvestor Dayを見て、個人的にはキオクシアを見る際のポイントも少し変わりました。
これまでは、
- 今期EPSはいくらか
- NAND価格はいつピークを打つか
を中心に見ていました。今後はそれに加えて、
- 長期契約比率がどこまで増えるか
- AI・データセンター向け売上がどこまで伸びるか
- 各社が供給規律を守るか
- 新世代BiCSによってコストがどこまで下がるか
- 高い利益率を2027年以降も維持できるか
を見る必要がありそうです。
もちろん、サンディスクの長期目標が実現するとは限りませんし、サムスンやSK、マイクロン、YMTCなどが一斉に増産すれば、再び供給過剰になる可能性もあります。AI投資そのものが減速するリスクもあります。
したがって、NANDはもうシクリカルではないとまで考えるのは早いと認識します。ただ、以前よりもNANDの景気循環が緩やかになり、高収益が長く続く可能性が高まっているとは感じます。
今回のInvestor Dayを受けて、私の中では2026年がキオクシアの絶対的な利益ピークで、その後すぐ業績が崩れるというシナリオの確率は少し下がった印象です。
短期的には株価が大きく上昇すれば当然調整もあるでしょう。しかし中長期では、単純に株価が上がったから売るのではなく、長期契約、AI需要、供給規律、高利益率という投資前提が崩れているかどうかを見ながら判断していくのがよさそうです。
サンディスクのInvestor Dayは、キオクシアホルダーにとってもかなり参考になる内容でした。NAND業界そのものが、少しずつ別の産業へ変わり始めているのかもしれない、との期待を持たせる内容かと思います。
ただ相変わらずキオクシアはSNDKに比べて上昇幅が限定的ですね。東芝の売りで需給がやや緩んでいるのかもしれません。