利上げをしても円安が止まっていない

日銀の利上げに関して、上の記事はマクロ経済や地政学的な観点から、本記事では金融市場とバランスシートの観点から記します。
経済政策には懸念あり
日銀は先般政策金利を0.75%へ引き上げましたが、円安は現状止まっていないですね。
高市政権の積極財政も呼び水となってか、再びGSなどの海外機関投資家も日本の財政に警戒するような発信がみられます(これは以前より観測できることですが)。
高市さん自体は応援したい人柄?ですし、経済安保や外国人との不均衡是正をスピーディにやっているように見える点も支持したい気持ちです。
しかしながら、こと経済政策に至っては大衆迎合的かつアベノミクス継承的ゆえに、短期的には見栄えがよくとも、中長期では国益や通貨価値を毀損しないかとの懸念はぬぐえません。
アベノミクス(=デフレ脱却 ≒ 通貨安政策)は株高によって国内外の投資家と大企業は潤いましたが、国内労働者との格差を拡大させた側面は否定できないものと思います。
日銀の含み益は、2.03%の金利水準で消失
日本の長期金利が2%を超えました。この水準では、日銀の保有ETFが生む含み益が国債の含み損で相殺されます(※後段に算出過程)。
中央銀行の債務超過が直ちに破綻を意味するわけではありません(過去記事:FRBは既に債務超過なのか。中央銀行の債務超過と通貨安の関係、民主主義)が、バランスシートの状態としては好ましからず、通貨の信認が静かに毀損していくリスクはあります。
日銀が利上げを続け、あるいは長期金利が上昇を続ければ、日銀が保有する長期債の含み損が増えることにはなります。
円安の構造的な継続リスク
ただもちろんバランスシートの観点にかぎれば、日銀の保有国債は満期保有前提で償還まで待てば途中経過の含み損はいずれ解消されます。
しかし利上げをすると保有国債の受取利子は低いにも関わらず、日銀が民間銀行から預かっている当座預金に対して支払う利息は増えるので逆ざやが起きますよね。満期を待つ間にこの逆ザヤが日銀の純資産を徐々に侵すことになります。
また、マーケットに足もとをみられるリスクが高まるはずです。なぜなら、「日銀は自分の懐(バランスシート)が痛いから、インフレが進んでもあまり利上げできないだろう」との思惑が高まると、円売りが正当化されやすくなる可能性があります。
- 「日銀が積極的に利上げというカードを切れない=実質金利マイナスが長く続く」
かような状況ですから、なかなか以前ほどの円高をメインシナリオには据えづらくはあります。結局は、株・金銀などに分散投資をするということになりますね。
なぜなら円安が定着する場合、以下要因となるからです。
- インフレの定着
- 金銀の円建て価格上昇
- 日本のグローバル企業の利益押し上げ(≒株高)
このように、金融政策ならびに日銀のバランスシート(≒通貨の信認)という観点から見ても、株・金銀への分散投資というのは整合性があるということにはなります。
※算出過程:日銀のバランスシート
冒頭の(※)で示した算出過程を以下に乗せておきます。
| 資産項目 | 評価損益(単位:10億円) |
| 長期国債 | -32,826 |
| 社債 | -22 |
| 株式 | 0 |
| 株式ETF | 46,041 |
| REIT ETF | 151 |
| 合計 | 13,345 |
(出所:日本銀行「第141回事業年度(令和7年度)上半期財務諸表」)
最新の財務諸表によりますと、2025年9月末時点で、長期国債ですでに約32兆円の含み損を抱えていますが、それをETFの含み益(約46兆円)で補っている状態でした。
では長期金利が2%に達した今、どのような状態か以下のように試算できます。
金利上昇に対する日銀の「耐久力」シミュレーション
保有国債デュレーション: 6.30年
1%の金利上昇による損失額: 約34.9兆円
含み益を消失させる金利上昇幅: 0.38%
2025年9月末の10年債利回り: 1.648%
以上から以下の通り導出できます。
【結論】日銀の含み益は消失
日銀の含み益が消失する金利水準 = 2.03%
ということで、長期金利が2%に達している今、日銀の含み益は消失していることになります。
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