ホンダ1.1兆円自社株買いに対する視点
自社株買いとは自己株式を企業が買い付けることであり実質的な減資にあたるので、上場することと真逆の行為でもあると認識しています。
また、自己株を持っていると確かに市場に出回る公開株式が減るので、1株あたりの利益や配当金が増え、配当支払い額が減ることにはなりますが、それはすなわち減資によって株式による資金調達を逆流させたようなものなので当たり前といえば当たり前ですよね。
知り合いに70代の投資家がいるのですが、以前は自社株買いなどしようものなら、減資ではないかと、上場と逆行する行為ではないかという風潮が日本の株式市場にはあったそうです。
しかし時代は変わり、いまや株主還元が声高に叫ばれる昨今(背景には、「日本版スチュワードシップコード」という言葉があるように、アングロサクソン的な資本主義をお手本にしたというべきか、追従したというべきか)、自社株買いは金科玉条のごとく、投資家には歓迎され、株式市場でも歓迎されて株価が上昇します。
しかし若干どうなんだろうと思うのは、ホンダの場合は自動車業界なので、いまや成熟した参入障壁の高い産業ではなく、何万もの部品を組み立てる精巧な作業よりも、ハイテク産業のようにソフトウェアの巧拙によって業界の勢力図が一変するような時代になっていると理解しています。
となると、はたして自社株買いに1.1兆円を投じてるのは資本政策としてどうなんだろうか、ともし私がホンダの株主なら思います。その1.1兆円は設備投資や研究開発費に充てないのだろうかと。
もっとも今回のホンダの場合は、日産との経営統合を控える中で、自社の株価が高い方が、仮に株式交換等行う際には有利に働くことになるので、そういう意味で一旦株価を短期的に上げるための施策なのではないかとは思いつつ。