日本株の現状を確認、年末に向けたメインシナリオ
おおむね以下の通りまとめられます。
- 信用買い残が4兆円を再び突破し、信用評価損益率が悪化。
⇒ 8月5日の急落前と同様の現象であり、相場が軟調になると株価が下に大きく振れる一因に - シカゴIMM先物ポジションが円買い5兆円規模となり、過去の傾向としては円買い解消・円売り方向へ反転してきた水準(過去の傾向からは円買い余力限定的
⇒ 円安余地の可能性ただし、日米の金融政策が「日本利上げ、米利下げ」である以上は、教科書的には円高。
- 「米経済のソフトランディングをメインシナリオ、ハードランディングをリスクシナリオ」と仮定するならば、アノマリー(過去の経験則)通り年末に向けての株高をメインシナリオ
- 経済・物価の見通しからは、日銀の利上げ継続をメインシナリオとしたい
⇒ メガバンクや地銀などの金融セクターの株を押し目買い目線
為替については上述のとおり需給(投機筋)の観点からは円安方向への可能性を念頭に置きたいものの、金融政策の観点からは米利下げがほぼ確実視され、日銀の利上げがほぼ確実視される状況(※)なので、教科書的には円高ドル安。
補足
米国のインフレは明瞭に沈静化し、日本は名目賃金の上昇が続き、個人消費も回復傾向であり先日の景気ウォッチャー調査(速報性に優れ、かつ予測精度が高い。また、TOPIXとの順相関も認められる)もその見方を支持する値。
日銀は経済と物価の見通しが想定通り推移するならば政策調整(≒ 利上げ)を言明しており、経済見通しの観点からはいずれ利上げが見込まれる状況。
他方、物価見通しの観点からは、ドル円レートが現在の140円台程度で推移するならば円建て輸入物価に下押し圧力が加わるため、この点においては利上げの必要性が低下しているという状況。とはいえ金融政策を正常化させていくであろうことから、利上げ方向で見ておきたい。
以上のように為替相場は日米両国の金融政策の方向性が明確に円高方向であっても投機筋のポジションには左右されてしまうので、円高が進めば円高恩恵銘柄を利確し、円安が進めば円安恩恵銘柄を利確するかたちでどちらも保有してどちらに転んでもよいようにしておく形になると思います。
一方、日銀の金融政策正常化(利上げ)は、まず今年の12月に実施される可能性があるかと思います。加えて来年は日銀が推計する日本の潜在成長率と同等の水準となる2回(0.5%)あってもおかしくないと思います。
したがって、金融セクター(三井住友FG、三菱UFJ、地銀など)は基本的に押し目買い目線でいきたいと考えています。足もとちょうど調整していることから、買い始めている状況。冒頭の通りハードランディング懸念等で市場全体が調整し8月5日のように信用勢の投げ売りがあれば、ハードランディングとならないかぎりは買い場になるとの想定のもと、メガバンク株を中心にひろっていきたいと思います。
ただしたとえば三菱UFJは円安恩恵銘柄なので円高リスクありです。ドル円レートが1円変動すると業務純益ベースで80億円の影響があるため、為替相場が円高方向へ傾けば為替差益の減少を織り込むかたちで株価下落が予想されます。
マクロ的な視点としては、名目GDPの成長が近年続いているにも関わらず日銀の長期国債買い入れにより10年債利回りは引き続き低位で推移していることから金融環境は緩和的であり、金利の観点からは引き続き日本株には追い風かと思います。
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先月時点と大きく変わりませんが、為替や金融セクターの買い目線を更新したかたち。