映画『Winny』腐敗した組織が生んだ「天才プログラマーの悲劇」と「IT産業の退潮」
映画『Winny』を観ました。
ノンフィクションだそうですが、かなり闇の深い、組織的な問題ですよね。
本作に出てくる組織の一部側面は、組織内の友人から聞いたことがありました。それを裏付けるような内容でした。
「組織」と「個人」、背反する道徳と利害
組織が文書を偽造することが常態化していることを、組織のなかでの「外れ者」が同僚に問い詰めるシーンで、次のようなセリフがあります。
- 正義感のある警官A「そんな文書偽造の罪を犯した人間が、1000円のものを万引きした人間を捕まえて調書取れるんか?」
- 若い警官B「自分もよくないことやと思うとります。でもみんながやってることですし。」
- A「ほしたら何のためにするんや?」
- B「組織のためです」
- A「組織のためなら何してもええんか?」
- B「ほじゃけどどうすればええんです?言いたいことあっても、辛抱して従うのが普通の人やないんですか。みんなあなたみたいに強うないんです。堪忍してください」
太字部分、トン時代にまさに私が言われたことを思い出します。組織では、長い物には巻かれたほうが損得勘定でいえば明らかに得であり、自分の正義を貫いたところで居づらくなるでしょう。私も当時経済的自由を得ていたからこそ出来たことは少なからずあったと思います。
「人がよい」vs「見通しが甘い」
主人公のWinny開発者は天才プログラマーながら、人がよすぎて結果的に不遇の時を過ごしたことが気になりました。
警察の尋問で、「捜査に協力してほしいんや」と言われて、明らかに事実と異なり自分が不利になる調書内容に署名してしまった情景があります。
あとで弁護士に「なんでそんなことしたのか」問われると、「捜査に協力した方がいいと思いまして。裁判所で訂正できると思いますし」と甘い見通しをもとに楽観的に行動してしまっています。
部外者の私が申し上げるのも憚られますが、あえて言うならばこれでは人生の要所を押さえることができなくなってしまいます。人を無条件に信用しすぎている。
これは私も以前その傾向が強く偉そうに言えません。人を信用しすぎて痛い目に遭ったことがあります。とくに今までの生い立ちでは良識を持った人々に囲まれてきたので、性善説で生きてきました。
しかし以前、明らかに悪意を持ってそこに付け込む人がいたのです。そこで自分の「人がよすぎる、いや本来持つべき警戒心が薄い、もっと言うならば見通しが甘かった」ことを痛感しました。
- 人がよい
- 警戒心が薄い
- 見通しが甘い
これらは似て非なるものであり、②・③は人生の要所で重大な過ちを犯すことにつながる可能性があります。
したがって、この三者の違いは、自分の子どもには背中で語る必要があると思っています。また、①~③も行き過ぎると、足をすくわれると思います。
挑戦心を削ぐ組織
以下のようなセリフがあります。
- (警察・マスコミによる)こんな横暴を許していたら、日本の技術者は誰も新しいことに挑戦しなくなりますよ
ナイフで人を刺して、そのナイフを作った人が罪に問われる。そんなことがあってはならないのに、現実に起きてしまった。こんな事例が一時的にでもできてしまえば、人民が萎縮してもおかしくないですよね。そのあたりが日本の闇の一面だと思います。
また、作中では「警察の裏金づくりのために、冤罪事件も起きている」ことが明らかにされます。闇が深すぎますよね。現実にそのようなおそろしいことがある、時と場合によって性善説と性悪説は使い分けなければいけない、という冷徹な事実を感じさせます。
日本が失った「天才技術者による創造」
現在、仮想通貨に用いられているP2Pの技術は、基本的には金子さんが用いた仕組みと同じようなもので、そこにブロックチェーンという取引履歴を記録する情報を付け加えただけです。
7年もかけて無罪を勝ち取った一年半後に急性心筋梗塞で亡くなったのは、残念でなりません。
「悪」が「善」を駆逐しうる、悲しい現実
最終的に金子さんは無罪になったのだから、逮捕は間違っていたということです。しかし、逮捕した京都府警には何のお咎めもありません。一審の判決を下した裁判官も、今もそのまま普通に裁判官をやっていると思います。
とあります。これって本当に恐ろしいことですよね。まさに「悪貨が良貨を駆逐した」わけです。やったもん勝ちだったわけですよ。
そのほか、作中で地味に「反対尋問の基本テクニック」が学べるのがおもしろかったです。
まとめ
「とにかく闇が深すぎるなぁ」という印象を受けます。そして「自分の身は自分(と周囲)で守るしかない」という当たり前の現実ですよね。
しかしこんなことが起こる国では、数々の創造の芽が摘まれてきたのだろうなぁと感じざるを得ません。
世の中、きれいごとばかりではなく、こうした醜悪に満ちた側面も現実に存在することを承知しておく必要がありますね。
その意味で、本作は印象に残るものとなりました。
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