映画『オッペンハイマー』 なんとも言いにくい作品
内容が重い作品
本作はなんと評したらよいか、言葉を選ぶ作品です。率直に書くとネガティブな表現が多くなるからです(笑)
- 上映時間が3時間と長い
- 内容が軽快ではない
②について深堀りします。
3つの特徴
以下3つの観点で論じてみます。
- 米国の歴史観が色濃く反映されている
- 人間や権力の負の部分が描かれている
- 登場人物やセリフなどの情報量が多い
① 米国の歴史観が色濃く反映されている
歴史は勝者が作りますから、日本から見た歴史と隔たりがあります。
とくに主体的に日本の歴史をひもとけば、その点を強く感じるかもしれません。
人間や権力の負の部分が描かれている
ふだん私たちは、一般的に性善説で日々の生活を営む傾向があると思います。そのほうが楽ですね。
なぜなら、性悪説を前提に日々の生活を営むことは「相手は性悪である」という前提で過ごすことになり、疑心暗鬼になりやすく、物事の悪い面に焦点を当てかねません。幸せを遠ざける可能性すらありそうですよね。
悲劇的な出来事や痛い目に遭ったり、生い立ち等に事情がなければ、人間の負の部分に焦点をあてて生活することはあまりないかもしれません。
しかし本作は、政治・権力・社会的な観点だけでなく、個人の生活という観点においても、人間の負の部分が描写されています。だれしも程度の差はあれ、聖人君子でないかぎり、聖の部分と負の部分が混在するはずです。本作はその負の部分に焦点があたっています。
単純に登場人物とセリフなどの情報量が多く、1回観ただけでは全体像に対する把握が追い付かない
ハイボールを飲んで鑑賞したので思考力が欠けていた可能性は留保しつつも、単純に登場人物とセリフがとくに前半怒涛のように流れてくるので、
「え、この名前だれのことやっけ」
となります。そう考えているうちに、次々とセリフが流れてくるので、あわあわしているうちに次の展開にうつります(笑)
また、時系列が目まぐるしく変わる時間帯があるので、
「え、これどういう状況?」
となります。そしてそう考えているうちに、次々と展開が変わるので、あわあわしているうちに(略)
まとめ
ということで、むろん人にもよると思いますが、なかなかの内容でした。
これでも相当言葉を選んでまとめました。でないと、ネガティブな表現だらけになってしまいます(笑)
だれかを愛するということは、その人の綺麗な部分も負の部分も受け入れることを意味するはずです。性格は常に表裏一体だろうからです。
人間の負の部分を知っておくことは、自分の身を守り、そして他者に対して寛容でいられる器を広げることにもなるはずです。その意味で、こうした作品を鑑賞することは、一定の示唆を得られるように思います。
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こちらも内容としては重いですが、物語の展開として晴れやかです。
こちらは本作に反して、穏やかで温かい気持ちになれると思います。
本作は多くの示唆を与える傑作だと思います。