「日本株を持てば、ドル建て資産を持たなくてよいのではないか」説
以下ご質問をいただいています。
題名: 【質問】ドル資産の出口戦略
メッセージ本文:
いつもためになる発信をありがとうございます。
この度は質問がありご連絡させていただきました。
大変お忙しいとは存じますがお手すきの際にご返信いただければ幸いです。
穂高さんはドルでの運用について出口戦略をどのようにお考えでしょうか?
日本円が安全資産である保証はなく、通貨分散という考えも理解はできます。
日本円という単一通貨への資産集中もリスクではあるとも思います。
しかし私たちは基本的に日本で生活しており日本円を利用していると思います。
結局のところ生活の中で使えないお金を増やしてどうする?と考えたのです。
現在は円建ての運用で米国に引けを取らない国内の投資商品も増えてきたと思います。
ドル資産の用途は海外移住でも考えてない限り、タイミングを見計らって円転するくらいしか思いつきませんでした。
差し支えなければお考えの一端でもお聞かせいただければ幸いです。
今後の発信も楽しみにしております。
寒い時期が続きますがどうぞご自愛ください。
いつもご覧いただきありがとうございます。
たしかに私たちは
- 日本という円建て経済圏で生活し、
- 円を利用しているので、
ドル建て資産を買ったところで、いずれは円に換えないと用を成しません。ドルを円に換えるという「出口」を見すえて投資する必要があると思います。
また、昨今は米国株に引けをとらない日本株という選択肢が出てきたことで、以下のような発想も生まれますね。
トルコの実例:通貨安でも海外マネー流入で株高
ひとつ実例を見てみましょう。
水色:米ドル/トルコリラ、赤:ドル建てトルコ株、紫:リラ建てトルコ株
トルコは自国通貨リラが下落しても、トルコ株が負けじと上がっています。したがって、「自国の株式に投資しておけば通貨価値の毀損が(時期によって程度の差はあれ)まぬがれた」という一例にはなります。
一因として、外国人投資家からすればトルコリラが下落するとトルコ株が相対的に割安になるので、投資意欲を刺激しやすい面を指摘できます。
関連記事:トルコ株に海外マネーが流入 リラ下落で割安感(日本経済新聞)
現に日本株も、円安ドル高が進むと米国からの資金流入が増えるケースがみられます。円安でドル建て日経平均が下がるので、買い意欲の押し上げ要因になると。
国内株に投資していれば、自国通貨への集中リスクは軽減できる
トルコの例が示唆するように、結局「単一の通貨(例:円資産)のみに集中させるリスク」は資産構成次第だと思います。つまり、
- 資産が円預金のみ
- 日本株に投資している
①・②でまったくインフレ・通貨安へのリスク耐性が異なってきますね。むろん①がハイリスクです。
円預金のみでは、通貨安・インフレで価値が目減りしますが、株式に投資していれば、通貨安・インフレでも以下のように好材料を見いだせます。
- 円安:海外資金の流入要因、円安恩恵銘柄の上昇要因
- インフレ:売価に転嫁できれば、売上増加要因(≒株価の上昇要因)
したがって、日本円の毀損、つまり円安や円債の価値下落は、日本株を持つことである程度ヘッジできる可能性があります。
かといってそのシナリオに全振りするのも単一のシナリオに賭けすぎなので、一応ドルも多少は持つ、というのがより穏当でしょうか。
まとめ
- トルコは自国通貨リラの価値が下がっても、トルコ株も負けじと上昇。したがって、「自国の株式に投資しておけば通貨価値の毀損が(時期によって程度の差はあれ)まぬがれた」という一例にはなる
一因:通貨安は海外資金流入要因になる - 日本株を持つことで、円安とインフレリスクをある程度ヘッジできると考えられる。一方、円預金のみでは、円安とインフレに対応できずリスクが大きい
- 多少は外貨建て資産を持つほうが、より穏当
以上、回答になっていましたら幸いです。
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高金利通貨は注意が必要ですね。
円建て商品でも、実質的には外貨建てということもあります。
なお、単一通貨への集中投資こそリスクという観点もありますね。しかし外貨建て資産への投資は円高のときにしておきたいものです。