配当利回りを上げるために、VYMよりSPYDを買ったほうがよいか
以下のご質問に回答しています。
読者
新NISAで米国高配当株ETFを買うつもりです。
現在の配当利回りを上げたいので、
VYMではなく、HDVやSPYDのほうがいいですか。
(前略)
投資方針は迷っていますが、積立枠は全世界株式、成長投資枠は米国の高配当ETFをメインに投資しようと思っています。
妻の新NISAの投資枠を使うため、今年と来年に現金110万円ずつを妻の口座に移動予定です。来月の賞与を含めた500万円を今後、投資に回したいです。
積立投資枠より成長投資枠を優先しようと検討中です。しかし高配当ETFの購入タイミングが難しそう。
現在の配当利回りを上げるため、VYMでなくHDV、SPYDを検討した方が良いでしょうか。
1:1:1で購入することも検討しています。
(後略)
以下のように整理できると思います。
購入タイミングの観点
- 購入タイミングはわからない、難しいと感じる人
SPYD より VYM が一案 - 購入タイミングを読みたい、購入タイミングを読める(と思っている)人
VYM or SPYD が一案
配当利回りの観点
- いま高配当がほしい
SPYD が一案 - 遠い将来の高配当でいい
VYM が一案
※HDVは傾向としてVYMとSPYDの中間のような性質がみられるため、記載していません
以上のように考える背景は、以下のとおりです。
- 配当利回り:SPYD > HDV > VYM
- 値動きの激しさ(リスク):SPYD > HDV、VYM
- リスクあたりのリターン:VYM > HDV > SPYD
分配利回り:SPYD > HDV > VYM
SPYD | 3.4 ~ 8.6% |
HDV | 3.1 ~ 5.3% |
VYM | 2.6 ~ 4.5% |
※2015年10月~
したがって、分配利回りの観点からは、いまの高配当を追求したい人にはSPYDは一案です。ただし、以下述べるように相応のリスクがあることに注意が必要かと思います。
なお、VYMは増配率が安定して高めの傾向なので、遠い将来の高配当化を想定しやすいと言えます。
値動きの激しさ(リスク):SPYD > HDV、VYM
たとえば直近の暴落局面「コロナショック(2020年)」では、以下のような動きをみせました。
最大下落率(月次) | トータルリターン(2020年) | |
---|---|---|
VYM | 24.0% | – 2.2% |
HDV | 26.1% | – 8.4% |
SPYD | 36.6% | – 15.2% |
S&P500 | 19.6% | + 13.8% |
このように、SPYDは相場全体が下がるときに下げ幅が相対的に大きい傾向があります。したがって、人によっては投資対象としての心地よさは期待しにくい面があります。
もっとも、逆に言えば購入タイミングよく底で買えれば、高配当と値上がり益を両どりできます。
そのため、購入タイミングを読みたいまたは読めると思っている人には適している可能性があります。この観点からは玄人向けと言えると思います。
リスクあたりのリターン:VYM > HDV > SPYD
以上のような特徴は、過去5年のシャープレシオにも表れていて、以下のとおりです。
- VYM:0.38
- HDV:0.28
- SPYD: 0.17
シャープレシオ(Sharpe Ratio)とは
数値が高いほど、負うリスク(価格変動幅)に対するリターンが高く、優秀な投資対象であることを示します。
下図(Yahoo!Finance)、黄色ハイライトの箇所で参照できます。
シャープ・レシオの観点から、値動きの激しさを考慮したリターンの高さはVYMが最も優れていることになります。
SPYDは機械的に配当利回りの高い銘柄を組み入れるので、HDVのように財務でふるいにかける等の選別に欠けます。
そのため、「業績不振で株価が下がって高配当化した銘柄が組み入れられ、業績好調で株価が上がり高配当でなくなった銘柄を外す」といった好ましくない動きが過去みられています。
そのあたりがシャープレシオの低さに表れていると考えられます。
まとめ
以上から、以下のようにまとめられます。
購入タイミングの観点
- 購入タイミングはわからない、難しいと感じる人
SPYD より VYM が一案 - 購入タイミングを読みたい、購入タイミングを読める(と自分で思っている)人
VYM or SPYD
配当利回りの観点
- いま高配当がほしい
SPYD が一案 - 遠い将来の高配当でいい
VYM が一案
背景
- 配当利回り:SPYD > HDV > VYM
- 値動きの激しさ(リスク):SPYD > HDV、VYM
- リスクあたりのリターン:VYM > HDV > SPYD
したがって総合的な観点からは、広く一般に適しているのはVYMになるとは思います。
個人的な好みはVYMです。投資は当人の好みやクセも出るでしょうから、傾向などを総合的に判断して自分に合った投資対象を選択したいですね。
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