エムスリーがベネフィット・ワンをTOB、株を安く買うと大きな利益となる好例に
2023年11月14日、まさかの医療分野の雄「エムスリー」が、福利厚生の雄「ベネフィット・ワン」をTOB(株式公開買い付け)することを発表しました。
- 買い付け予定数の上限は55%
- 現在ベネフィット・ワンの51.16%を保有する親会社であるパソナグループが応募に合意している
ということなので、上場廃止ではないですね。そして、買付のほとんどはパソナが保有するベネフィット・ワン株ということになります。
今回のTOBで得られるもの
今朝公開した「日本株ポートフォリオ(2023年11月)」という記事で記したように、
- エムスリー
- ベネフィット・ワン
を両方保有しています。
ベネフィット・ワンについては「平均購入価格 1,023円 で 2,000株 を保有」しており、TOBによる買付価格 1,600円 で市場売却または公開買い付けに応じる場合、(1,600-1,023)円 x 2,000株 = 約115万円 の利益を得られることになります。
株を安く買えると、TOBの可能性も高まる
ベネフィット・ワンは業績順調にもかかわらず、たたき売られていました(高値から84%下落、ベネフィット・ワン(2412)は買いか)。

出所:マネックス証券
おそらくエムスリーにとっては、ベネフィット・ワンの株価が割安といえる水準までたたき売られていたことは、TOBを仕掛ける支援材料の1つになったはずです。
なぜなら、現在株価が安ければ安いほど買収額は安く済むからです。
補足
TOBは通常、現在株価に一定の価格を上乗せして公開買い付けをするので、現在株価が安いほど買収は安く済む。
TOBは通例、現在株価より高い水準が買付価格になります。今回であれば、一気に30%以上の値上がり益を得られることになります。
したがって、投資家は株を安く買えると、
- 「値上がり益が期待できる」だけでなく、
- 「他社からのTOBで一気に多額の利益を得られる」
という可能性も高まることになります。今回はその好例と言えます。
たたき売られているものに買い向かう
直近、金利上昇局面で成長株が売られやすい地合いであり、ベネフィット・ワン、エムスリーともにたたき売られていました。
直近たたき売られていた成長株がここ数日は大幅上昇。
・MonotaRO(3064)
・エムスリー(2413)
・オイシックス(3182)
・ベネフィット・ワン(2412)対して直近買われていた銀行株が下落。
たたき売られている株を買い向かうのは勇気がいるけど、反転すれば買値の安いお宝ポジションに。 pic.twitter.com/84jCFVVIP9
— 穂高 唯希|新刊 #シンFIRE論 (@FREETONSHA) November 6, 2023
バリュー株・グロース株は、いつかはかならず好不調が入れ替わるので、市場の雰囲気(例:バリュー株が好調で盛り上がっている状況)に左右されず、安くなっている株を買い向かうことはあらためて大切であると思います。
まとめ
今回の事象から、以下のことが言えます。
- 今回のエムスリーによるベネフィット・ワンに対するTOBは、「たたき売られている株に買い向かうことで、株を安く買うことができ、そして割安な株ほどTOBが起こる可能性も高まり、一気に利益を得られる」という好例となった
- バリュー株とグロース株はいずれ好不調が入れ替わるので、あくまでその視点を持っておき、グロース株が絶不調なときに買い向かうことを選択肢として持っておきたい
ちなみに…
もしTOB合戦、つまり「A社がB社へのTOBを発表後、C社がTOBに名乗りを上げ、買収合戦」となった場合、買付価格が吊り上げられてさらに高値となる可能性もあるので、すぐに保有株を売らないほうがより大きな利益を得られるケースもあります。
また、「買値がTOBによる買付価格より高いため、売って損失確定したくない」という場合は、上場廃止でないかぎり、保有継続としてさらなる株価上昇を待つ選択肢も考えられます。
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バリュー株とグロース株の好不調はいずれ入れ替わる、という内容です。
ベネフィット・ワンは、あしもと業績堅調ながら売られていました。