現在、日米の株式市場は本当に「ブラックマンデー前夜」に似ているのか
X(旧:Twitter)では、「ブラックマンデー」がトレンドに上がっています。
1980年代に株式市場が暴落したブラックマンデーに似ている、と話題ですね。
SNSだけでなく、日経新聞、ブルームバーグでも報じられています。
本当にそうなのでしょうか、本記事で実際に確認してみましょう。
現在の株式市場が、ブラックマンデーと似ている点
それらの内容を見ると、以下2点に集約されます。
- チャートの形が似ている
- カネ余りの時期は過ぎた
では、それぞれ見てみましょう。
① チャートの形が似ている
ブラックマンデーは、米10年債利回りが上昇したあとに、株式とともに急落しました。
現在はたしかに上図のように10年債利回りが上昇しており、さらに10年債利回りが上昇しているにもかかわらず株高だったことが似ています。
ただ10年債利回りが上昇してきたこと自体はこれまでにもあり、また足もとでは米国株も調整気味であり、このチャートから暴落説を唱えるのはあまりしっくりきません。
お次は株価チャートの類似性です。
たしかにブラックマンデー前の株価と現在は似ているように見えます。
しかしこれを言い出すと、上昇トレンドの株価の推移がこのように似てくることは現在でなくとも過去に何度もあり、暴落に至っていないケースも当然あります。
したがって、いま現在との類似性を指摘することで暴落を示唆するのは、論理的な必然性には欠けるかと思います。
② カネ余りの時期は過ぎた
「ブラックマンデーと似ている」と指摘する向きとして、「Global Net Liquidity(日米欧英中の中央銀行の資産残高-米リバースレポ-米財務省現金残高):カネ余り指数」との乖離が大きい点が挙げられます。
青:カネ余り指数、赤:S&P500、緑:日経平均株価
たしかに上図を見ると、足もとでワニの口のように乖離が生じています。
中央銀行のバランスシート拡大は往々にして株高につながってきた歴史があるため、足もとで米利上げによってカネ余り指数が下落していることは株価には逆風要因として挙げられます。
しかし上のグラフの期間をもう少し過去に引き延ばすとどうでしょう。
上図のように、米国株はほぼカネ余り指数に連動していますが、緑の日本株はカネ余り指数との乖離は恒常的に起こっています。
というのも、起点がアベノミクス初期なので、それだけ日本株の勢いがあった時期は恒常的に乖離していたわけです。
結局、チャート比較というものは、いつを起点にするかで見え方がまったく異なるということがここでもあらためて確認できます。
まとめ
以上から、以下のようにまとめられます。
- チャートの形状が似ている
→ たしかに類似性はあるものの、同様のことは過去にもあった - カネ余り指数と乖離している
→ チャートの起点を変えると、乖離することは過去にもあった
したがって、これらの事象をもってブラックマンデーの再来をはやし立てるのは、論理的な必然性には欠けるかと思います。
ブルームバーグにも、
近いうちに何かが起こると予想しておくことが妥当だ。ただ、株式相場の暴落を伴うとは必ずしも限らない
という注記があるように、上記2点をもって近い将来に暴落するとはかぎらず、結局は「将来の株価は予測できない」という自明の事実に帰着します。
したがって、私たち投資家にとってできることは、暴落する or しない、どちらに転んでもよいようにしておくことですね。
具体的には、
- 過剰なレバレッジをかけず、
- 下落局面で耐えきれず、「底でパニック売り」という最悪の事態にならないように資金管理をしておく
という基本事項の徹底に尽きると思います。
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