【米国株】雇用統計後に株価が急落、「ドミノ・ピザ」は買いか
ピザ宅配大手「ドミノ・ピザ(DPZ)」が雇用統計の発表後、株価は 363ドル から 341ドル へ約6%安と急落しました。S&P500が1.18%反発を演じるなか、際立った動きです。
雇用統計の概要
まず6日に発表された雇用統計全体としては、強弱まちまちで、非農業部門雇用者数が非常に強い数字である一方、平均時給や失業率は予想よりやや弱い数字でした。
現在は雇用統計で強い数字が出ると、FRBの利上げへの懸念が増し、株価には逆風。今回も雇用統計が発表されたあと、SNSでも雇用者数の非常に強い数字にまず驚きを持って受け止められ、投資家はS&P500に対して売りで反応しました。しかしのちに弱い平均時給や失業率が材料視されたようで、結局は反発で終えています。
雇用統計のうち、レストランとバー部門は61,000人増加し、今回の非農業部門雇用者数の増加のうち18%を占め、同セクターの雇用者数はコロナ禍前の水準を回復しました。
先般も飲食業界の強い雇用統計(賃金高騰)による収益圧迫懸念で株価が下落したように、今回もドミノ・ピザをはじめ、マクドナルド、ヤム・ブランズ、ウェンディーズなど外食系が軒並み2%超安とS&P500に対して逆行安でした。
いま米国株は無理して買わずとも、高い金利が得られる
ドミノ・ピザは、今回の急落で、直近高値402ドルから15%安とやや下がってきてはいます。
心地よく株式投資を続けるための1つの要素は、株を安く買うこと。そのためには、こうした突発的な急落をした大型優良株は候補になるでしょう。
まず、前回6月にドミノ・ピザを買ったのは、PERが23倍で株価が305ドルの時でした。PER23倍は、過去10年間で最も割安な水準でした。そこから約30%上昇時に利益確定。
ではその頃に比べて現在はどうか。ドミノ・ピザの2023年予想EPSは 13.72ドル。したがって、現在PERは24.9倍です。
上図のとおり、PER24.9倍というのは、過去10年で見ても割安な部類です。
したがって、打診買いは検討できる水準ですが、お宝ポジションをねらうのであれば、本格的な買いは控えたいところ。
というのも、現在は短期金利が5%超と高く、米国短期債券へ投資する米ドルMMFや、短期債ETF【CLIP】ならば、無理して株式を買わずとも、約5%の金利収入を得られます。
そのため、過去10年で最も割安な水準となるPER23倍、つまり「現在の予想EPS 13.72ドル × PER 23倍 = 株価 315ドル」あたりまで下がってから、再度検討でよいかなという印象です。
なおもちろん、一般的にPERが下がっているときは、
- 競争激化による利益の低下を織り込む動き
- 景気後退による需要減
など先行きの暗さが背景にあるケースもあるたため、必ずしもPERが低いからといって割安とはかぎらず、PERのみで株の割安・割高を総覧できるとはかぎりません。
たとえば、今年6月に過去10年で最も割安なPERを示した際には、学生ローン返済再開によって、小売りや外食産業の需要が低迷する見方がありました。
株価が安くなるにはそれなりに理由があるので、あくまで「行き過ぎでは」「ここから中長期目線で上昇に賭ける」と判断した際などに買うことが一案かと思います。
ドミノ・ピザの特徴
以下、ドミノ・ピザの特徴・過去の傾向をおさらいしておきます。
多額の資本支出を必要としない業態
マクドナルドはこの数年でフランチャイズ化を進めて利益率を上げました。ドミノ・ピザも約99%の店舗が独立系フランチャイズです。
フランチャイズゆえ、多額の資本を必要とせず、ブランド価値による収入(ロイヤリティ)を得ることで、現金を多く確保できる傾向があります。
旺盛な自社株買い
実際、ドミノ・ピザは自社株買いが多く、発行済み株式数は2005年から半減。これによって1株あたりの利益と配当は増え、株主のリターンは向上することになります。
配当
配当は直近5年で倍。ただ、コロナ禍で絶好調だった反動か、2023年の増配率は10%と減速しています。
まとめ
- ドミノ・ピザなど外食大手は、雇用統計発表後、S&P500が上昇するなか逆行安。特にドミノ・ピザは6%の急落
- 高値から15%下げ、PER24.9まで下がり、PER単体の観点からは過去10年で割安も、6月のPER23倍に相当する株価315ドルまでには至らず、まだ待ちたい
- 現在は米国の短期金利が高く、無理して株を買わずとも短期債で5%の利回りを得られる
ということで、この水準で本格的な買いは見送り、315ドルの水準を買い戻しの1つの目安にしたいと思います。
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