含み益が大きくなった高配当日本株、いつ売るのか

青:野村日本株高配当70、黄:日経平均株価(出所:Google)
日本株、なかでも高配当株が好調です。この1年で約3割も上昇しました。
このような状況では、含み益が大きくなり、利益確定したくなる気持ちも出てきますね。
以下ご質問に回答しています。
読者
日本の高配当株の含み益が大きくなっています。
利益確定か、長期保有か、悩んでいます。
題名: 含み益が大きくなった高配当日本株をどうすればいいか?
メッセージ本文:
穂高様
いつもブログを拝読させていただいており、当方の投資行動の参考にさせていただいています。ありがとうございます。
今日は最近の日本株上昇の流れの中で、2021年9月頃に投資した、高配当株が値上がりし、含み益が大きくなっています。投資当初は長期保有して、配当を積み上げていこうと考えていたのですが、概ね50%以上の含み益になっております。銘柄はメガバンク、JT、武田、NTT、ソフトバンクで、現在評価額1200万円、含み益が450万円ほど、年間配当が50万円ほどです。
金融資産(リスク)は米国株、上記以外の日本株現在合計で1億3千万円くらいです。この状況でこの高配当株は売却して現金比率を上げたほうがいいのか、このまま長期で持てばいいのか悩んでいます。ご意見をお伺いしたく、メール送付させていただきました。よろしくお願い致します。
定年退職た62歳より
こんにちは、いつもご覧いただきありがとうございます。
投資スタイルから考える売りどき
まずひとくちに高配当株投資といっても、以下2つに大別できます。
- 売らずに、配当金をもらい続ける
(永久保有型) - 上昇すれば、売って利益確定する
(適時利確型)
どちらのスタイルかによって、売りどきが根本的に変わってきますので、それぞれ特徴を見てみましょう。
「収益性」の観点
- 永久保有型
市場に居続けることで、市場の成長を余すことなく得られる
⇔ 反面、暴落を全身で受け止めることになる - 適時利確型
売買タイミングがよければ、暴落回避・底値買いが望める
⇔ 反面、売買タイミングがわるければ、売却後に株価が上がると機会損失になる。
「時間」と「手間」の観点
- 永久保有型
買うときに決断すれば、保有するのみ。手間と時間が省ける - 適時利確型
買うときも売るときも、決断が必要。手間と時間がかかる
つまり、よくもわるくも、適時利確型は売買手腕次第で収益が大きく変わります。
- 永久保有型:種をまいてじっくり待つ、農耕タイプ
- 適時利確型:タイミングをはかって獲物をしとめる、狩猟タイプ
自分がどちらのタイプなのかを知る。それがまず重要になってくるかと思います。
適した売り時となるケース
永久保有型は売り時なしとして、では適時利確型の場合、いつ売ればいいのでしょうか。
未来を見通せない以上、常に完璧な正解はありませんが、普遍的に売却を考えたいケースがあります。
- 不祥事が起こったとき
- 減配したとき
- 大きく値上がりしたとき
- より有望な銘柄を見つけたとき
今回のご質問者さまは③に該当するかと思います。
売りを考えるとき①:不祥事
ひとくちに不祥事と言ってもいろいろあります。
- 東芝の不正会計
- 東京海上のカルテル
たとえば不正会計などの作為的な不祥事は、その後の復活は望み薄なので売ります。
ただしカルテルは、海運業界でも歴史的にあったように業界慣習的な要素があり、日本が敗戦前はむしろ業界が団結して消耗戦によるサービスの劣化を防いだ面もみられます。
日本郵船や商船三井などの海運大手は、日米欧の当局からカルテルで課徴金を課されましたが、現在ご覧のとおり健在です。
したがってカルテルのような例外を除いて、基本的には不祥事は起きた時点で私なら売り切ります。
売りを考えるとき②:減配
業績が悪化すると減配する会社が出てきます。
いろんな銘柄を見てきましたが、減配すると、その後の株価は低迷しがちで、減配が発表された時点で売ったほうが傷が浅いケースが多いです。
関連記事:【KHC】クラフトハインツ減配から見える教訓(2018年4Q決算)
また、単に業績低迷による減配だけでなく、株主還元に消極的な配当政策がとられた場合も売りを考えるケースになり得ます。
たとえば直近でいえば、三菱地所は2020年度に33→31円と減配しました。利益は1,483→1,356億円とさほど減っていないにもかかわらずこうした減配は、短期的には嫌気されます。
売りを考えるとき③:含み益が配当10年分以上
- 株価100円で配当金が5円とします。
- この株が200円になれば、売却することで、20年分の配当金に相当する利益を確定できます。
このように、大きく値上がりした株を売ることも一案です。
ただし、株価が大きく値上がりした銘柄は、その後も株価上昇・増配がつづく「お宝ポジション」となる可能性も秘めています。個人的にはこういう株はできるだけ売らないようにします。
ただ、未来の株価が見通せない以上、普遍的な正解はありません。自分のリスク許容度に応じていつまでリスクをとってリターンをねらいつづけるのか、という命題に帰着します。
そこで、たとえば半分売るのもアリですね。
半分だけ売れば、その後株価が上がっても「まだ半分あるし…」、下がっても「半分売ったし…」と株価が上下どちらに転んでも納得がいきやすくなります。
売りを考えるとき④:より有望な銘柄があるとき
個人的にはこのケースが最も多いと思います。
「より有望だと思える株を買う資金を捻出するために、保有株を売る」というケースです。
投資資金は有限ですから、より妙味があると判断した銘柄がほかにあれば、そちらに資金を移すことは、一定の合理性があります。
まとめ
- まず自分が「農耕型」なのか「狩猟型」なのか
- 「農耕型」ならのんびり長期保有、「狩猟型」なら超過リターンをねらって売買
- ただしいずれのタイプでも売却を考えたいケースがある↓
- 不祥事が起こったとき
- 減配したとき
- 大きく値上がりしたとき
例:含み益が配当の10年分 - より有望な銘柄を見つけたとき
そして、もし配当以外に安定した定期収入がなければ、③の場合でも、売らずに保有したほうが配当という定期収入を失わずに済みますね。
したがって、このようにご自身の収入状況も勘案してお決めになるとよいかと思います。
回答になっていましたら幸いです。
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