三菱地所の株価は16連騰でストップ。利上げ観測の逆風と資産インフレの順風、どちらが勝るか。
三菱地所の株価は9月9日終値時点で、ついに17連騰はならず、16連騰で終えました。

株価チャート(出所:Yahoo!ファイナンス)
そんな折、利上げを示唆する観測記事が出始めましたね。
日銀の利上げが示唆される
上の記事を要約すると、「利上げする可能性が高まってきた」ということですね。
- 田村直樹委員
「実現がはっきりと視界にとらえられる状況になったと考えている」。8月30日の懇談会で、物価目標の達成が近いとの見解を示した。会後の記者会見では「マイナス金利の解除も選択肢」と修正の具体策に言及し、目標達成を判断する時期の目安も「来年1〜3月」と踏み込んだ - 高田創委員
9月6日に山口県下関市で開いた懇談会で、物価目標に関して「達成に向けた『芽』がようやくみえてきた」と期待感を示した - 全体としてはハト派(緩和継続派)が多数も、ハト派でもややタカ派な発言が目立ち始めた
株価や不動産が上がりやすい「実質金利マイナス」に変化が起こるのか
2022年から日本はインフレ率が2~4%で、短期金利が-0.1%、長期金利が1%未満。つまり実質金利は常にマイナスで、株価や不動産価格の上昇、インフレが進みやすい状況だったと言えます。
金利上昇と資産インフレ、どちらのストーリーがまさるか
ところが、YCCが柔軟化され、今般マイナス金利解除が見込まれる場合、三菱地所(8802)を筆頭とした内需セクター(金融・不動産)の株価がどう動くのか、興味深いところです。
不動産株は、金利上昇は逆風で、資産インフレは順風。最近の三菱地所は、金利上昇は織り込まれ、資産インフレのストーリーで値を上げてきた観があります。
マイナス金利解除の観測が台頭し、金利上昇の逆風が勝るのか、大きな流れとしての資産インフレのストーリーが勝るのか。注目ポイントです。
ただ、マイナス金利解除とはいえ、銀行が日銀にお金を預ける「日銀当座預金」の一部が解除されても、実際の金額的な影響としてはさほど大きくはありません。

出所:ニッセイ基礎研究所
市場がどちらのストーリーをどこまで織り込むのか。
- 資産インフレのストーリーを引き続き強く織り込むならば、三菱地所を筆頭に金融や不動産といった内需株は騰勢が続くか
- 他方、金利上昇の警戒感(ストーリー)がまさるならば、教科書的には、金融株には順風、不動産株には逆風
どちらになるかで、市場の温度感(強気か弱気か)を判断する材料になりそうです。
三菱地所の状況
直近の状況おさらいを、以下に載せておきます。
① この10年、業績は右肩上がりなのに、株価は右肩下がり

EPSの推移(出所:決算資料)

三菱地所の株価(出所:Yahoo!ファイナンス)
② 保有不動産の含み益を加味すると、純資産に対する株価は非常に割安(PBR0.4倍台)

出所:決算資料
③ 不動産株は一般的に金利上昇に弱く、日銀の政策変更は逆風であるが、三菱地所の財務は金利上昇に脆弱ではないと思われる

長期固定比率の高い有利子負債(出所:決算資料)
④ コロナ禍以降、オフィス市況は弱いが、丸の内エリアの空室率は相対的に低い

全国平均より底堅い丸の内オフィス需要(出所:決算資料)
補足
ただし、
- 含み益が膨大であることは、IR資料を確認している投資家ならば既知のことで、そこに超過リターンは望めないであろうこと、
- また、保有不動産の含み益は売却してはじめて実現益となるので、現金化しない限りは「絵に描いた餅」にすぎないこと、
なども認識しておく必要があるかと思います。
まとめ
- 日銀の利上げが観測される記事が出始めた
- 三菱地所に逆風と認識されがちな「金利上昇」と、順風となる「資産インフレ」。どちらのシナリオを市場が強く織り込むか注目される
- ただ、マイナス金利解除そのものは、日銀当座預金残高の一部に対する影響にとどまる
三菱地所の株価はようやく16連騰でストップしました。テクニカル(RSI)的には買われすぎで、自律的といえる調整。
そんな折、三菱地所にとって逆風とされがちな「金利上昇シナリオ」が強まる利上げ観測記事が出ました。
来週株価がどう反応するかで、三菱地所の中長期的なトレンドを示唆する試金石ともなりそうです。
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