「悠久の割安株」三菱地所(8802)の株価が12連騰
注目銘柄・三菱地所の株価が、9月1日の終値時点で、12連騰となりました。
長らく株式投資をやっていますが、個別株で12連騰というのは記憶にありません。

三菱地所 株価チャート(出所:Yahoo!ファイナンス)
8月16日から上げ続けています。さすがにそろそろ調整があるでしょうが、それにしても強いですね。
外国人投資家が描く、日本のインフレ・ストーリー「内需株の再評価」
日経新聞は「オフィス市況の改善」を理由としていましたが、その手の目先の材料ではないような上げ方に見えます。地所の牙城である丸の内エリアのオフィス市況はそれ以前から底堅く改善していましたし…。
そんなふうに思っていたら、ちょうど以下の記事が昨日でました。
要約すると、英運用大手マン・グループ傘下の見解は、
「今後、日本は高インフレ・高金利に入ったとみられるが、日銀の金融緩和で実質金利がマイナスの状態が続けば、資産価格が下がるか横ばいかという過去20年のデフレ下で非常に厳しい状況で、世界の投資家に無視されてきた内需セクター(金融・不動産)が再評価される」
というものです。
こうした出遅れ内需株の見直しが外国人投資家で広がっているなら、納得性があります。日本株に大きな影響をおよぼすのは、売買高のうち7割を占める外国人投資家です。
三菱地所の株価は、日経平均に大幅に出遅れている
事実、三菱地所はこの10年「世界の投資家に無視されてきた」銘柄です。

青:三菱地所、ピンク:日経平均(出所:Yahoo!ファイナンス)
- 日経平均:+126%
- 三菱地所:-36%
「三菱グループの株で、三菱地所にだけは投資しない」という見解も無理はない過去推移です。
反面、「それだけ見向きもされない銘柄であってきた」という見方もできます。投資妙味はそうした状況に隠れていることがあります(そのままずっと見向きされない可能性もあります笑)。
三菱地所の状況
直近の状況おさらいを、以下に載せておきます。
① この10年、業績は右肩上がりなのに、株価は右肩下がり

EPSの推移(出所:決算資料)

三菱地所の株価(出所:Yahoo!ファイナンス)
② 保有不動産の含み益を加味すると、純資産に対する株価は非常に割安(PBR0.4倍台)

出所:決算資料
③ 不動産株は一般的に金利上昇に弱く、日銀の政策変更は逆風であるが、三菱地所の財務は金利上昇に脆弱ではないと思われる

長期固定比率の高い有利子負債(出所:決算資料)
④ コロナ禍以降、オフィス市況は弱いが、丸の内エリアの空室率は相対的に低い

全国平均より底堅い丸の内オフィス需要(出所:決算資料)
補足
ただし、
- 含み益が膨大であることは、IR資料を確認している投資家ならば既知のことで、そこに超過リターンは望めないであろうこと、
- また、保有不動産の含み益は売却してはじめて実現益となるので、現金化しない限りは「絵に描いた餅」にすぎないこと、
なども認識しておく必要があるかと思います。
まとめ
- 外国人投資家のなかで、「日本は高インフレ・高金利の局面に入ったとみられるが、日銀の金融緩和が続けば、デフレ下で出遅れていた内需セクター(金融・不動産)が再評価される」との見方がでている
- 実際、三菱地所はこの10年で日経平均に対して大幅に出遅れている
- 他方、この10年で利益は伸びており、金利上昇でただちに大きく圧迫されるような財務構造はみられない
株は人気投票なので、いくら実力があっても人気がなければ株価は上がりません。
日本株は長らく人気がなく、安値で放置されていました。しかし昨今は注目を浴びはじめています。
現在が大相場の端緒となるのか、一時的なものか。金融緩和が続き、インフレ時代となれば、前者の可能性が高くなります。
日本の政府債務が膨張し、インフレでも日銀がさほど利上げをしなければ、実質金利はマイナスで金融緩和状態が続くことになります。
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