【ディフェンシブ株】小田急電鉄(9007)
昨日、注目銘柄の1つで株価が堅調な「SBIホールディングス」について記しました。今日は逆に、足もとやや軟調な小田急を取り上げます。
先々月、注目銘柄として挙げた関東私鉄大手・小田急電鉄(9007)ですが、株価は直近上昇のち小幅ながら反落しています。日経平均より軟調なことも多いですね。
それでは、小田急の直近の状況を確認したうえで、株価調整の背景について整理します。
コロナ禍から復調を維持
小田急は月次で営業概況を公表しており、足もとの状況は以下の通り、特段の悪材料は見受けられません。
- 売上高・営業利益ともに実績ベースで全体の4割と最大を占める鉄道事業の運輸収入は前年比で+10%超とコロナ禍からの復調を維持
- ほか百貨店事業は新宿店の閉業にともない前年比でマイナスですがこれは想定内
- もう1つの柱である不動産事業は利益のブレが小さく、安定傾向
また、株式情報サイト「kabutan(株探)」では、開示情報や材料視されるニュースの一覧が表示されますが、直近で特段の材料はみられません。
したがって、以上の観点からは特段のリスク要因は現時点では見受けられません。
株価が軟調な理由
ではなぜ日経平均に比べて小田急は足もと軟調なのでしょうか。一意的に理由を断定することはできませんが、背景として以下が挙げられます。
- 下落したとはいえ調整の域を出ない
- 業態的に地盤が限られ、成長性が乏しい
- 同業他社との比較であえて小田急を選ぶ積極的な理由に乏しい
- ディフェンシブ株の宿命
下落したとはいえ調整の域を出ない
下落したとはいえ、1,600円で底打ちして2,100円まで上昇した経緯を考えると、いまだ調整の域を出ていません。
業態的に地盤が限られ、成長性が乏しい
鉄道という業態からも想像しやすいように、小田急は主に新宿~箱根・江の島に地盤が限られます。
沿線の人口が爆増するか、事業の軸足を鉄道以外にシフトしないかぎり、めざましい成長は望みづらい業態です。
同業他社と比較して、あえて小田急を選ぶ積極的理由が乏しい
では私鉄株すべて軟調なのかといえば、そうではありません。同業他社を見てみましょう。
同じ関東私鉄大手でも対照的に京成電鉄(9009)の株価は絶好調です。
京成電鉄は同じ私鉄とはいえオリエンタルランドの株式19.97%を保有する筆頭株主。舞浜のディズニーランド・シーのコロナ禍からのV字回復は、京成電鉄に直接波及します。鉄道や沿線関連事業とまったく別の収益源を持っている点が大きく異なります。
また、小田急は同じく神奈川を地盤とする私鉄大手・相鉄が、都心直通運転を開始した話題性と比べると、見劣りするのかもしれません。
つまり、「ほか私鉄大手と比べると、あえて小田急を選ぶ積極的理由が乏しい」という背景は考えられるでしょう。
ディフェンシブ銘柄の宿命
小田急はディフェンシブ銘柄です。ディフェンシブ銘柄とは、その名の通り、守りに強い銘柄です。つまり、不景気でも業績の沈み具合が限られる業態を指します。
小田急は沿線の人々の移動があるかぎり安定した賃収(+不動産収入)を見込めることから、ディフェンシブ銘柄に属するというわけです。
米国株で何度も経験していますが、ディフェンシブ銘柄というのは安定している一方で、大きなリスクを負わずに安定性を志向する業態・経営という傾向にあるぶん、成長性には乏しい傾向があります。
したがって、強気相場であえて選別されにくい傾向があります。言い換えれば、不景気では比較的堅調でも、好景気や強気相場では指数に劣後することが多いということです。
現在の日本株相場は強気に推移してきましたから、ここらへんでディフェンシブ銘柄の小田急電鉄が調整するのはさほど不思議なことではない、といった見方は可能です。
まとめ
足もとの鉄道事業は前年比+10%と今期の業績予想と同程度の伸び。コロナ禍からの回復は順調です。
一方で、以下のように小田急の株価が調整する要因も見いだせます。
- 下落したとはいえ調整の域を出ない
- 業態的に地盤が限られ、成長性が乏しい
- 同業他社との比較であえて小田急を選ぶ積極的な理由に乏しい
- ディフェンシブ株の宿命
ただ、コロナ禍から脱却し、復調を維持しているなか、外部環境の悪化等がなければ、株価もコロナ前へいずれ回帰するのが順当ではあります。
日経平均は20日移動平均線を割り込み、3万2327円の安値まで突入。市場全体が低迷する場合は、逆にディフェンシブ株の相対的な堅調となるでしょうか。
「株の利益は我慢料」と言われるように、利益を得るには途上に生じる予想外のリスクを負いつつ、値上がりをじっくり待つ姿勢も求められますね。
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