【高配当株】SBIホールディングス(8473)が割安な理由
先月、注目銘柄の1つとして挙げた「SBIホールディングス(8473)」が今月に入り上昇したものの、いまだ指標上は割安な株価です。
本記事では、同社の株価が割安に放置されている理由を考察します。
指標上、割安である背景
割安な理由として、以下のようなイメージ・リスク・業態が挙げられます。
- 銀行や証券のPERは基本的に低い
- 金融業であるため、金融危機に弱いイメージ
- M&Aや資本業務提携など、投資グループに近いイメージ
- 多角経営で実態がわかりにくい(コングロマリットディスカウント)
- 国際会計基準を採用しているため、含み損益も計上される
金融業ゆえの割安感とイメージ
PBR0.76など数字上は非常に割安です。ただ、日本の地銀や証券会社、さらに米国株を見てもわかるように、この手の業態は基本的にPER・PBRともに低い傾向です。
たとえば高いPERが正当化されてきた米国株でも、金融セクターの「JPモルガン(JPM)」はPER10倍程度です。
金融系は金融ショックに極めて脆弱です。ビジネスの構造上、どうしても負債が多くなり、レバレッジがかかっている分、市況や流動性が悪化するとバランスシートが急激に悪化し、株価が半分以下になることもあります。
M&Aや資本提携が多いゆえのリスク
また、売上高の急増が示すように新生銀行へのTOBなどM&Aを数多く手がけてきました。
割高な買収(失敗)だった場合は、その分資産効率の悪い保有資産がふくらむため、低PBRが正当化されてしまいます。
会計基準ゆえの不透明さ
また、ソフトバンクと同様、国際会計基準(IFRS)を採用しているため、評価損益も決算書に反映させる必要があるため、業績がブレやすい特徴です。
現に2023年度決算でも、保有海外株で427億円の評価損が計上されています(「その他包括利益」に計上されます)。そのため、一時的な変動を除いた利益の実力値が一見するとわからず、不透明感というリスクを投資家は感じやすいでしょう。
SBIホールディングスの強み
リスクを挙げたので、次は逆に強みを挙げてみましょう。
- 証券口座数は業界最多
- 証券・銀行・保険をネットでやっている
- 地銀に出資し、新生銀行を傘下におさめ、「第4のメガバンク」をねらう
- 北尾氏の経営姿勢
業界首位
口座数が業界最多であり、株式売買手数料を無料にするなど、業界首位だからこそできる攻めた顧客囲い込みがみられます。
実際、上図のように従来の証券業ビジネスモデルである「売買手数料への依存度」が下がっているからこそできることなのでしょう。
ストックビジネスを保有
SBI傘下にSBI生保・SBI損保があります。生保や自動車保険は、顧客との契約によって継続的に利益が得られる業態です。つまり、契約を積み上げるだけ利益も積み上げやすい業態といえます。
SBIは多くの地銀と資本提携を結んでいます。それら地銀で自社の保険商品を窓口販売するねらいがうかがえ、今後も伸びが見込まれます。
第4のメガバンク?
SBIは2019年以降、“地銀再生プロジェクト”と銘打ち、島根銀行、福島銀行など各行と資本業務提携を相次いで結んできました。今年、新生銀行にTOBを仕掛け、北尾社長の構想する「第4のメガバンク」へまた一歩というところ。
ただ、楽天モバイルが「日本のスマホ代は高すぎる」と殴り込んで業界を改革するような展望は感じられず、メガバンク3つあったものが4つに増えただけ、となるのか、そのあたりが不透明です。先述した生損保や証券の商品を販売する窓口として活用するにとどまる印象を受けます。
積極果敢な経営姿勢
SBIは、よくもわるくも北尾社長という看板社長が経営する会社です。今年の新生銀行買収にしてもやり方が強引とみられる面もあります。
一方で、
- 今月に入り台湾の半導体企業PSMCと提携を発表し、ちゃっかり今ホットな半導体関連銘柄に仲間入りをしたり、
- 金利上昇を見越して金利を10倍に引き上げ、買収した新生銀行の預金を一挙に5割も増やす
など良くも悪くも攻めた手腕がみられます。
5%超の高配当・連続増配
減配がなければ、配当利回りは5.3%程度と非常に高配当です。また上図の通り、増配傾向です。
もっとも、SBIの配当政策は「2023年3月期より、当面の間は金融サービス事業において定常的に生じる税引前利益の30%程度を目安として総還元額を決定する」と2023年度3月期決算書に記されており、業績次第では減配の可能性があります。
高配当株・連続増配株については、以下書籍も参考になるかと思います。
まとめ
先月、注目銘柄として軽く触れたように、おもしろい銘柄だと思っています。来年からは新NISAが控え、新規層の口座開設も見込まれますね。
本来ならばこのような市況性の高い銘柄は下がったときに買いたいところです。ただし、昨今の日本株の騰勢が続くようでは、じっくり待っているうちに買う機会を逸する可能性もあります。
そういう局面ではひとまず打診買いをしておき、現金を残して買い時をうかがうことが一案にはなってきます。
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