今年、印象に残った1冊
『日本人の誇り』という本があります。大ベストセラー『国家の品格』と同じ著者です。
仕事や育児、そしてスマホに忙しい現代人は、よほどの本好きか時間に余裕がある人でないかぎり、なかなか歴史や哲学など人文科学の本は読まないのかもしれません。
また、こうした歴史観や国家観といったものは、戦後いつしか市井の民のあいだで話題に上ることが珍しくなったのでしょう。
歴史観を述べるということは、当人の思想信条を広く公開する一面があり、人によって賛否が大きく分かれる可能性もあります。したがって当人に益するものはほぼないでしょう。
また、知識層からすれば、歴史観を述べるにあたり、何かを礼賛するよりも、斜に構えて否定的な色彩を混ぜたほうが、知的に見られやすいでしょう。そうしたさまざまな要因も相まって、戦後史観は形成されていったことでしょう。
さて、この『日本人の誇り』という本、今年読んだなかで印象に残った1冊です。
種々の本を読んできましたが、それらの書籍において奇しくも共感し、通底する戦後史観があります。本書はその代表格と言ってもよいと思います。
「過去の出来事を、当時の視点ではなく現代の視点で批判したり否定したりするのは無意味であること」がよくわかる1冊です。
私たちの先祖が営々と紡いできた歴史を振り返ると、現代の世相や社会構造を見るに溜息が出ることもあります。歴史は勝者が語り、敗者は悲惨です。
しかしそれでも私たちは力強く歩を進め、臥薪嘗胆・韬光养晦といかねばならない。
そんなことを考えている人が現代ではたしてどれだけいるのか、はなはだ疑問ではあります。
しかしたとえそう思うのがただひとりであっても、心に留めておきたいと思うのです。祖先が脈々と紡いできた系譜に対する責務ですらあると思います。