日本ビルファンド投資法人(8951)が珍しく分配利回り4%台に、現状を確認

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日本ビルファンド投資法人(8951)が分配利回り4%台に

昨日の記事で、「日本ビルファンド投資法人(以降、略称NBFと表記)」の分配利回りが珍しく4%台であると記しました。

長らくリートを見てきましたが、分配利回りが2%後半であったことも多く、4%は相当稀です。奇しくもその日NBFは2%超の上昇。

株価チャート

過去の株価を確認すると、コロナショックで4割ほど下がりました。のちに盛り返すも、現在はコロナショックと同等の水準。

日本ビルファンド投資法人は、買い時なのか

では、NBFは現在買い時なのでしょうか。同社の状況を確認してみましょう。

なお本記事における画像は決算書から引用しています。

指標面:NAVの観点からは割安、含み益を考慮するとなお割安

指標面を確認します。

  • 1口あたりNAV:603,199円(2022年末時点)
  • 現在の投資口価格は57万円であり、1口あたりNAVより安い値。つまり、株式でいうPBR1倍割れの状態で、NAVの観点からは割安
  • 2023年3月末時点で、資産1.4兆円(取得価格ベース)に対し、含み益2,400億円があり、含み益を加味するとなお割安

財務:保守的・高格付け

財務(有利子負債)を確認します。

NBF 三菱地所
平均金利 0.44% 0.8%
平均残存年数 5.56年 7.83年
固定比率 91% 87%
  • 三菱地所と比較して遜色なし
  • このほか、LTVも42%と高いレバレッジがかかっているわけではなく、格付けも高い

次に、リスク要因として考えられるものを見ていきましょう。

リスク要因①:空室率が下げ止まるか

  • 2020~2021年が、「入居率ー退去率」が最も悪化。直近は下げ止まり傾向

リスク要因②:スポンサーとの利益相反

2020年に資産規模が一気に約20%も増えています。以下が背景にあります。

  • 三井不動産から1,700億円の新宿三井ビルを含め、合計2,500億円超の物件を取得

日本経済新聞よれば、本件について三井不動産は「都心部の再開発などで保有物件が増え、一部を現金化して運用効率を高める」とあります。

これを見ると、まるで三井不動産が現金化したいがためにリートに物件を売ったようにも受け取れます。ここでリートにおけるスポンサーとの関係を確認してみましょう。

NBFは設立以来、三井不動産がスポンサーです。スポンサーの存在は、メリット・デメリットがあります。

  • メリット
    低利の資金調達がしやすい、物件調達など協力できる
  • デメリット
    スポンサーに都合のよい売買がなされる懸念あり

三井不動産のような大手のスポンサーがいることで、リートは信用力が高まり、低利で借金しやすいメリットがあります。物件調達やテナント開拓・不動産管理などでスポンサーとの協力関係も見られます。実際、NBFの場合、物件取得の約7割は三井不動産グループ関連です。

また、NBFの場合、運用会社の株式の46%を三井不動産が出資し、運用会社とNBFの両方の役員に三井不動産の出身者がいます。ただし、三井不動産はNBFの投資口は3.4%のみ保有です。

したがって、三井不動産はリートの運用に対して影響力はあるものの、NBFの投資口価格が下がっても不利益は大きくないのです。

つまり、三井不動産が自社の利益を優先(例:不良物件をリートに譲渡する)して、三井不動産にはピカピカの優良築浅物件が残り、NBFには微妙な物件が集まる、といったことが起こる可能性が考えられます。リートにおけるこの利益相反は、従来からたびたび指摘されています。

もっとも、NBFの役員は三井不動産出身者以外にもいるため、利益相反が確定的に起こるわけではありません。また、リートがスポンサーに物件を譲渡することもあります。

では現在、新宿三井ビルはどうなっているでしょうか。以下見てみましょう。

賃貸面積:新宿三井ビルが4割超を占める

  • 新宿三井ビルが、賃貸面積の4割超を占める
  • 直接の借主は三井不動産で、三井不動産がさらにテナントに転貸
  • 三井不動産が一定の転貸賃料を受け取ったあとに、NBFが賃料を受け取る構造
  • 決算書を確認すると、新宿三井ビルは減価償却控除前の事業利益で33億円。したがってポートフォリオの収益を占める割合は大きく、収益に寄与

今後1年は、分配金ねん出のために取り崩し

  • 過去2年は内部留保を積み増していたところ、今後1年は取り崩して分配金支払いに充てる見通し

内部留保を取り崩して分配金に充てるのは、株主として心地よくはありませんが、コロナ禍で内部留保はむしろ増加したことをふまえると、今後の推移次第といったところでしょう。

まとめ

NBFが分配利回り4%台に乗せることは珍しく、数字上はかなり割安感があります。財務的にも、過剰なレバレッジや金利上昇に脆弱な面も見られません。

一方で、NBFのリスクとしては以下が考えられます。

  • オフィスの空室率が下げ止まるか
  • 日銀の金融政策修正による不動産市況の悪化
  • 内部留保の取り崩しが続けば、減配の可能性も

個人的には検討できる水準だと考えています。本日が権利付最終日なので、明日は配当落ちが予想されますね。

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