映画『そして、バトンは渡された』の感想
人ひとりを見るさいに、いかに表面に出たものだけでは判断できないか――。
そんなことを描いた作品だと私は思いました。新刊『#シンFIRE論』に記した内容と通底するものがあります。
とある登場人物に対する最初の印象と、結末を知ったあとで同じ人物に対する印象はまったく異なるように感じるはずです。
- ただのあざとい人
- お金にがめつい人
- ただのずるがしこい人
本当にそういう性格の人という可能性も当然ありますが、一方でそんなふうに見えても実はやむにやまれぬ事情があることもありますよね。
後者の確率は高くないとしても、しかし確率として0ではない。可能性としては常に残るわけですね。
人に対して想像力をはたらかせることが肝要になってくるわけですが、その想像力が及ぶ範囲というのは、やはり自分の人生体験や見聞、世界観のなかでのものです。
つまりはそういった人生体験、見聞、世界観を広げていくことが、人に対する想像力をはたらかせる可能性を広げていくことになるだろうと思います。
一朝一夕にできるような簡単なことではないと思います。人間ひとりを知ることがいかに難しく、そしてその深淵に触れられるのは本当にごく一部ということが往々にしてあるのだろうと思います。
そんな感想を抱く映画でした。
また、予想外の展開も多く、見ているほうを飽きさせない流れといいますか。
原作は本屋大賞のものなんですね。
次どういう展開なんだろう、なぜこうなってるんだろう。そんな疑問が最後にきちんと回収されています。
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