中央銀行が利上げをしても、預金金利がすぐ上がるとはかぎらない
「利上げ局面で、銀行の預金金利の上昇が鈍い」という現状はおさえておきたいポイントですね。
預金以外の商品の利回りが上昇し、預金への魅力が薄れている
1年物CDの平均金利は約1.5%。米金融当局が1年前に利上げを開始する1週間前の0.25%から上昇したが、インフレ率をなお大きく下回る。
現在、米国の政策金利(FFレート、短期金利)は4.75~5.00%に誘導されています。短期金利に連動する米ドル建てMMFの足もとの金利は4.3%です。
まとめると以下のような現状です。
- 預金:1.5%
- MMF:4.3%
預金は原則25万ドルまで「元本保証」、MMFは「まれに元本割れあり」といった違いはあるものの、金利水準が大きく違い、MMFのほうが魅力的です。
米銀預金は流出傾向にある
上図のとおり、コロナ禍の現金給付等によってカネ余りで預金が大きく増加し、2022年の利上げとともに預金流出が続いてきたことがわかります。
昨今、このように米国では預金からMMFへ資金移動が大規模におこっていたわけですが、これだけ金利差があれば自然な行動ですね。
まとめ
ポイントとして押さえておきたいのは、以下になると思います。
- 利上げによって預金金利が相応にすぐ上がるとはかぎらない
- その場合、預金よりMMFのほうが金利収入は多いことがある
預金金利はあくまで各銀行が決めるため、中央銀行が短期金利を引き上げたからといって、預金金利も応分に上がるとはかぎらない、といった見方が可能です。
また、そもそも1年で約5%も急激に利上げしたため、銀行のバランスシートにおける資産側、つまり融資金利をすぐに反映させられず、そのため預金金利もすぐに上げられない、といった懐事情があると考えられます(銀行は預金という短期資金を負債として抱えて、融資による金利収入や債券投資などで利ザヤを稼ぐビジネスモデルであるため)。
今後、日銀が利上げをする際も、同様の事態が起きる可能性が考えられます。そして、預金の魅力が薄れて預金流出に見舞われると、銀行も資金獲得のために金利の引き上げ競争になるケースが考えられますね。