50代、60代の新NISA活用法
「50、60、よろこんで」という保険CMがありましたが、資産運用にも言えるかもしれません。
とくに平均寿命が長い日本では、運用期間も比較的長くとれますね。考え方や家族構成次第では、長期運用として考えることもできます。
以下ご質問をいただいています。
50代後半の夫婦で、新NISAを最速の5年でつみたてることを計画中。
人生終盤にさしかかり、暴落時に取り返すだけの時間がかぎられるため、債券インデックス・ファンドも組み入れたほうがよいか?
先進国への投資に偏っていて、新NISAの銘柄選びに迷っている。
題名: 新NISAについて
50代後半の夫婦です。2人とも新NISAで最速5年で積み立て完
つみたて投資、iDeCo、貯金や投資目的の保険もある程度あるため、NISA枠で積み立てる商品もリスク許容度は少しは高くとれるかと考えておりますが、なにぶん人生終盤に差し掛かっているため、暴落時に取り返すだけの時間も残っていないしとも思います。
- 1人がeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
- もう1人がeMAXIS Slim 全世界株式
で積み立てようと思っています。
現在、イデコや積み立て投資で運用している銘柄もアメリカ中心の
50代、60代の新NISA活用法についてご教示いただけると助か
結論(まとめ)としては、以下のようになります。
- 「残りの運用期間」や「老後をどう過ごしたいか」をふまえ、
「安全重視でいくのか、積極運用でいくのか」を考える - 新NISAの活用法は、債券を入れずに株式一本
- 米国がよいときもあれば、米国以外がよいときもある。
米国集中が気になる場合は、全世界や新興国へ心地よく分散 - お子さまへ運用資産を継承するなら、残りの運用期間は大きく変わる
それでは、以下3点を順にみていきましょう。
- 老後の運用でおさえておきたいこと
- 新NISAをどう活用するか、債券は必要か
- 新NISAの銘柄選びの判断軸
老後の運用:①安全重視 or ②積極運用
老後の運用を考えるとき、以下2案に大別できます。「どれだけリスクをとって、リターンをねらいにいくか」という一文に集約されます。
- 安全重視型
現金多め、株式投資は控えめにして、安全性を優先
例)現金70%、株式30%
向いている人:老後は株式市場に左右されず、安全に心穏やかにいきたい - 積極運用型
過半の資産を株式に投資し、リスク承知で資産増をねらう
例)現金30%、株式70%
向いている人:老後でもリスクをとって、金銭的により豊かにいきたい
金融投資は基本的にリスクとリターンは比例します(悪質な商品をのぞき)。
- 株式:ハイリスクハイリターン
たまに暴落して半値になることもある一方、じわじわ2倍、3倍に増えることもあります。 - 現金:ローリスクローリターン
インフレで実質的な価値が目減りする一方、預金金利(=短期金利)に応じて利息が得られます。 - 債券:ローリスクローリターン
インフレで実質リターンが下がる一方、債券利回り(=発行体の倒産リスク)に応じて利息が得られます。
※インフレで債券の実質リターンが下がる理由は、額面利息が変わらないからです。
では、以上の前提知識をふまえたうえで、「50代、60代の新NISAの戦略」を考えてみましょう。
50代、60代。「新NISA枠は、株式へ」が基本戦略。
50代、60代、平均余命まで約20年もあります。まだまだ時間はありますね。
ただし、たしかに若い人に比べると暴落後に取り返す時間は少々かぎられるため、「現金をしっかり確保しつつ、余裕資金やリスク許容度に応じてNISA枠は株式で」というのが基本戦略かと思います。
ご質問者さまの場合、「現預金や保険、iDeCoもあって、NISA枠はリスクをとれる」とお考えですので、新NISAフル活用が適しているかと思います。
そして、運用期間をできるだけ長くとって、時間を味方につけて利益をねらうためには、「最速の5年で新NISA枠を埋めきる」のがよいですね。
新NISA枠:債券は入れず、株式のみ
では、新NISA枠をどう埋めるのか。債券は入れず、株式のみでよいと思います。
先進国債券をふくむ債券ファンドはNISA枠を使ってまで投資せずともよい、と考えられます。理由は以下1点。
- 債券の期待リターンはかぎられるため、利益が非課税となるNISAには適さず
債券への主な投資目的は、利益を求めるというより、資産の変動をマイルドにする、いわば資産クラスの分散や保全ですね。
債券の期待リターンは株式ほど高くありません。したがって、利益のかぎられる債券は、非課税となる利益も小さくなり、NISAのメリット(=利益が非課税になること)を最大限に生かしづらくなります。
暴落に対する安全性を高めるには、NISA枠で債券ファンドを使わずに、現金またはあくまで特定口座で債券ファンドを買うほうがよいです。
具体的な投資対象:米国・全世界・新興国から「心地よく思えるもの」を
オーソドックスな投資対象は以下です。
- eMAXIS Slim 米国株式
- eMAXIS Slim 全世界株式
ご質問者さまのように、米国中心のインデックス・ファンドに偏っているのが気になる場合、以下をトッピングすることが一案です。
- eMAXIS Slim 全世界株式
- eMAXIS Slim 新興国株式
このあたりは、個人的な心地よさを優先されてよいと思います。偏りが気になれば、分散ですね。半々で分散すれば、どちらに転んでも納得がいきやすいです。
今後、先進国・新興国のどちらのリターンがよいかは定かではありません(ただし、米国がこの10年好調すぎたので、次は米国以外が好調をむかえる、という見方はできます)。ひとつ言えるのは「米国がよい時期もあれば、全世界や新興国がよい時期もあった」ということです(下図ご参照)。
したがって、その傾向をふまえて、米国に偏っているのが気になるならば、「全世界:米国:新興国=4:3:3とする」などが一案です(ただし、全世界は6割が米国なので、やや重複します)。
米国は21世紀に入って以降、以前ほど覇権を握る国ではなくなりつつある兆候がみられます。それでも資本の逃避先としては、依然として一定の魅力はあり、有事のドル買いもまだ見られます。一部の資金は割いておいてよいと考えられます。さらに、NISAは必然的に5年は購入タイミングが分散されるので、一定の購入タイミング分散効果があります。
なお、新興国インデックスファンドは、中国や台湾の比率がおよそ5割を占めます。成熟期に入りつつあるこれらの国より、もっと東南アジアやアフリカなどのフロンティア新興国を組み入れたければ、マニアックながら【FM】というETFもあります(ただし、つみたて投資枠ではおそらく対象外)。
ちなみに、家族構成と考え方次第では…
老後の運用を考えるとき、「残りの運用期間はかぎられる」という考えはたしかにあると思います。
しかし、もしお子さまがいて、運用資産を相続することを考える場合は、超長期で投資を考えることができます。ならば、攻めた運用ができます。
ただし、「子どもに多くの資産を残さないほうが、子どものためになる」といった考えも人によってあるでしょうし、このあたりの判断は人によって分かれますね。
まとめ
以下再掲します。
- 「残りの運用期間」や「老後をどう過ごしたいか」をふまえ、
「安全重視でいくのか、積極運用でいくのか」を考える - 新NISAの活用法は、債券を入れずに株式一本
- 米国がよいときもあれば、米国以外がよいときもある。
米国集中が気になる場合は、全世界や新興国へ心地よく分散 - お子さまへ運用資産を継承するかで、残りの運用期間は大きく変わる
ご参考になりましたら幸いです。ありがとうございました。
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