5年後、10年後、15年後の配当収入の最大化をめざす場合の戦略
以下ご質問をいただいたので、回答します。
読者
①現在の配当利回り、②増配率、どちらを重視すればよいですか?
題名: 未来の配当
いつもブログ楽しみにしています。
いきなりですが質問です。
5年後、10年後、15年後の配当収入の最大化を目指す場合、現
運用期間15年が、ひとつの目安
配当の最大化をめざす観点では、以下のようにまとめられます。
- 運用期間が5年や10年では、現在の配当利回りの影響が大きい
- 運用期間が15~20年を超えると、増配率の影響が色濃くでてくる
したがって、ひとつの目安として、15年を超える運用期間を想定する場合には、配当重視の運用においては、銘柄選びの際に増配率を重視することが一案です。
なぜこのような数字になるかというと、一般的に「配当利回りはおよそ7%以下、増配率もおよそ20~30%以下(のち徐々に減ることが多い)」であるためです。
もちろん、数字の大小によって変わるため、一概には言えずあくまで傾向です。
具体例:VYM、SPYD、MSCI、MOでシミュレーション
では、以下4つの具体的な銘柄を用いて、確認してみましょう(銘柄詳細は各リンク先をご参照)。
- 現在の配当は高配当株ETFのなかで低いが、増配率は高いETF
VYM(米国高配当株ETF) - 現在の配当は高配当株ETFのなかで高いが、増配率は低いETF
SPYD(SPDRポートフォリオS&P500高配当株式ETF) - 現在の配当は低いが、増配率は高い個別株
MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル) - 現在の配当は高いが、増配率は低い個別株
MO(アルトリア・グループ)
下図・下表は、各4銘柄の「配当利回り・増配率の傾向から、将来の配当利回りを試算したもの」です。
VYM 配当:3% 増配:8% |
SPYD 配当:5% 増配:5% |
MSCI 配当:1% 増配:15% |
MO 配当:7% 増配:3% |
|
---|---|---|---|---|
1年後 | 3.2% | 5.3% | 1.2% | 7.2% |
2年後 | 3.5% | 5.5% | 1.3% | 7.4% |
3年後 | 3.8% | 5.8% | 1.5% | 7.6% |
4年後 | 4.1% | 6.1% | 1.7% | 7.9% |
5年後 | 4.4% | 6.4% | 2.0% | 8.1% |
10年後 | 6.5% | 8.1% | 4.0% | 9.4% |
15年後 | 9.5% | 10.4% | 8.1% | 10.9% |
20年後 | 14.0% | 13.3% | 16.4% | 12.6% |
補足
- 配当利回り:過去平均を参照、増配率:個別株は主に過去3年、ETFは過去10年を参照
- 過去平均が未来も続くとはかぎらず、あくまでシミュレーションです。
- とくに、10%を超える増配率を長期で維持できる銘柄はかぎられることに留意(配当の源泉は利益成長であり、長期で高い利益成長を維持する銘柄はごくまれであるため)。
5年後や10年後では、現在の配当利回りの影響が大きいですが、15年後以降になってくると、増配率の影響が色濃く出てくることがわかります。
配当成長率 ≒ 利益成長率
配当の源泉は利益です。そのため、配当成長率(=増配率)は、最終的に「利益成長率」に左右されます。
したがって、現在の配当利回りに加えて、利益成長が見込めるか(=今後の増配余力があるか)という観点もたいせつですね。
利益成長が鈍化すれば、増配率も鈍化する
高い増配率を誇る銘柄も、いずれは徐々に下がっていく傾向がみられます。人間や国家と同様に、企業も「成長期」を経て、いずれは「成熟期」に入るのですね。
「配当成長率 ≒ 利益成長率」なので、利益成長率が鈍化すれば、増配率も鈍化します。そのため、シミュレーションではMSCIを15%の増配率としていますが、将来も高いとはかぎらないことも認識しておきたいところです。
たとえば、高成長を維持してきたGAFAMの一角「アップル(AAPL)」も、近年は利益成長率・増配率ともに鈍化傾向です。
一般的な栄枯盛衰のサイクルを考えても、15~20年を超えてくると、成長期から成熟期に入る企業も散見され、その意味でもひとつの目安となる期間だと思います。
また、念のため申し添えますと、資産運用の収益は、「配当」+「株価成長」で構成されるため、配当と株価どちらもトータルで見ることにはなります。ただし、人によって配当を重視する度合いは変わるため、銘柄に対する好みは変わってきますね。
高配当・高増配がいちばんうれしいわけですが(笑)。下段に示すアッヴィは、昨今はそんな銘柄ですね。ご参考になれば幸いです。
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