映画『エンパイア・オブ・ライト』、1秒に24コマ回すと暗闇が見えなくなる
映画館で観てきました。
私自身、まだこの作品を完全には理解・消化しきれていない気もします。
小波(さざなみ)のような映画と表現できるかもしれません。ただその波はじわりと心を動かすような感じです。
人によっては、「感情の起伏なく、2時間が過ぎた。見せ場はどこなんだろう」と思うかもしれません。
ただ個人的には、大波のように強烈なメッセージ性やインパクトがあるわけではないものの、絶えず寄せては返すインパクトが一定以上あるような、妙に印象に残る映画でした。
こういうことも、あるよね
中年女性がある人との出会いを通じて、生きる希望を見いだし、自分の殻を打ち破っていく。そこに、時代背景が折り重なっていきます。
「人間である以上、こういうことで、生きる希望を見いだせることもあるよね」
そんなふうにも感じる作品です。
人間の視神経は、1秒に24コマ回すと静止画が動くように見える
随所に人生を考えさせるフレーズがちりばめられています。
- 人生とは心のあり方だ
- たまに考えるよ、何のための人生か
- 1秒に24コマ回すと、暗闇が見えなくなる
③が気になったんですよ。映画館で映写機でフィルムを回す仕事を、見習いに教えるシーンのセリフです。一見、なんの変哲もない内容かもしれません。
ただ、「人の視神経は1秒間に24コマ回すと暗闇が見えなくなり、静止画の連続が動くように見える」というのは、単に映写機の原理だけでなく、ほかに何かを暗喩してるように感じました。
人々に行動を駆り立てる現代にも言えること
現代の情報の波にも言えることではないでしょうか。短期間に大量の情報を浴びることで、1つ1つの情報はもはや処理しきれず、いつしか思考停止、または何らかの主義・主張を見せられている――。
その主義や主張とは、たとえば以下のようなものです。
- これを買えば生活が豊かになります、だから「これを買いましょう」
- 将来的にこんなリスクがあります、だから「これを食べましょう」
- これをすれば安心・安全です、だから「これをやりましょう」
現代はこうして、「人々の行動を駆り立てる」ような情報が跋扈しています。
この手の駆り立てる情報に接したときは、「はたして、これである必然性はあるのか? ほかに手段はないのか? なぜ今のタイミングなのか?」と考えたいですね。
短期間に多量のものを目にしていると、一つひとつの事象に対して静止画のように立ち止まって見ることを忘れ、動画という別のものを私たちは無意識に見ている――。
そんな解釈すら成り立つように思いました。
本作の内容から脱線したので、戻りましょう。
映画館を出てから家に帰るまで、何かずっと心に引っかかるものがあるような、そんな作品でした。
直接的な表現というよりは、どこか表情やBGMで「じぃ~ん」と表現したものがあるからこそ、余韻と印象を残すのかもしれません。これは映画館で見るからこそ感じることでしょうね。
そんなことを感じる映画でもありました。
関連記事
妙に印象に残る映画といえば、こちらです。当時これは本当に傑作だと思いましたね。