S&P500は50日移動平均線を上抜け、5つの観点で現状を確認
S&P500は、50日移動平均線を明確に上抜けました。
現状は、以下のように整理できると思います。各項目の詳細は、下段に後述します。
- 市場心理:悲観的な声が増えていた
- 住宅市場:冷え込んでいる
- 労働市場:強弱まちまち
- インフレ:鈍化傾向。今後反転なければ、ピークアウト
- 政策金利:市場は「利上げ終了が近づいている」と予想
金融引き締め効果は、住宅市場で明確に表れています。
インフレは、エネルギー価格が鈍化傾向であり、さらにCPIの3割を占める住居費と関連する住宅市場も鈍化していることから、インフレ圧力は以前と比べ低下傾向であると考えられます。
金融政策は、「2月のFOMC以降、利上げはほぼなし」という市場予想となっています。
では各項目を確認します。
市場心理:悲観的な声が増えていた
上図は投資家心理を表しており、2022年9月30日時点で-40.9%。2009年3月のリーマンショック時点の-51.35%に次ぐ数値。投資家心理はかなり悪化していました。
結果的に、上のように記した時点が市場心理が最も悲観的だったときでした。現在は-20%と回復しています。
悲観が高まったときや、「悪材料がおおむね見通せた」と市場が思ったときは、相場の底入れサインのひとつであると考えられます。
住宅市場:冷え込んでいる
住宅ローン金利は、2022年1月から上昇が続いています。以下に述べる住宅販売件数も同時期に落ち込み始めています。
新築・中古ともに2022年1月から大きく落ち込んでいます。住宅ローン金利の上昇を受け、購入者の負担が増し、販売件数が落ち込んでいると考えられます。
販売件数の落ち込みは、住宅価格の下落要因です。また、住居費はCPI(消費者物価指数)の3割を占める大きな項目なので、住宅ローン金利の上昇は、住宅価格の下落を通じてCPIを下げる要素になると考えられます。
また、住宅価格はコアCPIのうち住宅部門の先行指標であり、住宅価格もあしもと鈍化していることから、コアCPIも来年以降の減速が予想されます。
労働市場:強弱まちまち
こちらにまとめています。
- 8月雇用動態調査/JOLTS(米労働省、10月4日発表):弱い
- 9月人員削減数(民間調査会社チャレンジャー、10月6日発表):弱い
- 9月雇用統計(米労働省、10月7日発表):弱い・強い・強い
なお、上記の強弱は、あくまで市場予想と比べたものです。
下表の通り、絶対値としては失業率以外は6月に比べ鈍化傾向です。
6月 | 7月 | 8月 | 9月 | |
---|---|---|---|---|
平均時給 (前年比) |
↑5.2% | ↑5.2% | ↑5.2% | ↑5.0% (予想↑5.1) |
失業率 | 3.6% | 3.5% | 3.7% | 3.5% (予想3.7%) |
非農業部門雇用者数(前月比) | ↑29.3万人 | ↑52.6万人 | ↑31.5万人 | ↑26.3万人 (予想↑25.0万人) |
インフレ:鈍化傾向、反転なければピークアウト
高止まりは続いているものの、当面のピークは2022年6月。今後反転がなければピークアウト。
金融政策:「利上げの終了が近づいている」という市場予想
2月1日のFOMC以降は、5月を除いて4.75%の下限で横ばいです。5月のFOMCも4.75%と5%で拮抗しており、「2月のFOMC以降、おおむね横ばいの見通しを現時点ではしている」と言ってよいと思います。
まとめ
- 市場心理:悲観的な声が増えていた
- 住宅市場:冷え込んでいる
- 労働市場:強弱まちまち
- インフレ:今後反転なければ、ピークアウト
- 政策金利:市場は「利上げ終了が近づいている」と予想している
賃金インフレの粘着性は懸念材料ではあるものの、そのほかにおいて市場が上記のようにとらえることは、株式市場の反転には好材料と考えられます。つまり、「住宅市場や労働市場の一部で金融引き締め効果が出てきていて、さらなる大きな利上げもないであろう。加えて景気後退の声も高まっているとなれば、悪材料がさらに出る不透明感はなくなってきた」と。
このシナリオに配慮し、個人的には2週間前、複数銘柄を購入したと述べました。一方で購入額がやや大きかったことや不透明感はぬぐえず、その後空売りヘッジを検討していましたが、取りやめとしていました。
一方で、マクロ状況にかかわらず、結局は市場がどうとらえるのかによって相場は変わるので、今後もその点に配慮が必要。
今後も必要あれば空売りヘッジを交えたりと、市場の雰囲気や状況に応じて柔軟に対応したいと思います。
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