S&P500は大幅上昇。2月FOMCの利上げ予想はやや軟化
ここに来て大幅上昇は、上げ幅としては自律反発の域を出ないものの、「市場の流れに変化あり」という印象がさらに強まりそうな上げ方です。年末に向け、今年6~8月のように短期的な上昇を描くのか、といったところ。
「利上げペースを緩める時期」発言
米サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁は21日、過度な金融引き締めによる「自発的な景気低迷」を回避すべきとし、利上げペースを緩める時期に差し掛かりつつあるという認識を示した。
「FRBは0.75%ポイント刻みでの利上げを続けることはない」とし、「現時点で破綻に向かうのではないかという懸念が多く聞かれる。どの程度制限的であるべきか、熟考する必要がある」と述べた。(ロイター)
昨日、上記の発言がありました。Fed watchによれば市場の利上げ予測は朝7時現在で以下のように変化しました。

FOMC(12月14日)

FOMC(2月1日)
FOMC開催日 | 現在の予想FFレート | 昨日時点の予想FFレート |
---|---|---|
11月2日 | 0.75%利上げ (88%) |
0.75%利上げ (98%) |
12月14日 | 0.75%利上げ (50%) |
0.75%利上げ (75%) |
2月1日 | 0.75%利下げ (49%) |
0.25%利上げ (50%) |
12月14日開催予定のFOMCにおける予想利上げ幅は、「0.5%」と「0.75%」が各々44.3%と50.6%と拮抗しはじめています。
また、2月1日開催予定のFOMCにおいて、0.25%の利上げが予想されていた昨日から一転、0.75%の利下げ予想が市場で支配的となりました。「利上げペースを緩める」どころか「利下げに転じる」と。
【追記】
最下段に記した通り、のちに予想FFレートが更新され、「利下げ予想」ではなく「利上げ停止予想が増えた」という結果となっています(朝11時時点)。
さらに、「現時点で破綻に向かうのではないかという懸念が多く聞かれる。どの程度制限的であるべきか、熟考する必要がある」という発言は、FRBが景気に配慮しはじめたようにも解釈できるため、市場参加者の期待が醸成されやすかった、ということも考えられます。
金融はさほど引き締まっていない
ただし、1970年代のインフレは以下のような状況でした。
「インフレ率の第1の山のピークで、リセッション入り時期に当たる1969年12月時点では、FF金利がインフレ率を3%以上上回っていた」
現在は、FF金利がインフレ率を上回るどころか、約5%下回っている状況です。現にシカゴ連銀が公表している金融引き締め具合を示すNFCI(National Financial Condition Index)を見ると、金融は下図の通り1970年代や金融危機と比べて、まったく引き締まっていません。

NFCI
原油価格の下落等の追い風を勘案しても、この状態で利下げに転じれば、過去になぞらえるとインフレはピークアウトするどころか第2の山を迎えるシナリオが考えられます。ただし現時点の趨勢としては労働市場・住宅市場は全体として減速傾向にあり、実体経済には効果(犠牲)自体は一定程度みられている状況です。
「高インフレを抑制するには景気面での大きな犠牲が必要になる」というのが1970年代の教訓のひとつであり、今後FRBがどのようにかじ取りをしていくのか。つまり景気を犠牲にしてもしっかり金融引き締めを続けるのか、または金融引き締めのペースを緩めて景気に配慮するのか。
後者の場合は、過去になぞらえるとインフレ第2の山がいずれ来ることが考えられ、短期的に市場と景気に配慮できても、中期的にはインフレに手を焼くシナリオも考えられます。
とはいえ、マクロ経済がどうあれ、市場に期待感が醸成されれば上昇し、悲観すれば下がります。そして、市場は勢いよく、かなり早めに織り込んでいく傾向が認められます。
追記
FED watchのエラーか、上段で示した2月FOMCの予想FFレートが朝11時時点では以下に更新されており、正しくは「利下げ予想」ではなく、「利上げ停止予想が増えた」ということになります。
関連記事