S&P500は年初来安値を更新、市場心理と売られすぎかを確認
S&P500は、6月安値を割り込んで年初来安値を更新。現時点の形状としては、弱いですね。ダブルボトム形成ならず、6月安値を割り込んでさらに掘ろうかという格好。
では市場心理はどうでしょうか。以下3つを見てみましょう。
- CDS(Credit Default Swap)
- VIX(Volatility Index)
- AAII Sentiment
CDSは、「国や企業の破綻リスクを市場がどのように見ているか」を表す指標と言えます。
VIXは、「株式市場のリスクを市場がどのように見ているか」を表す指標と言えます。
AAIIは、「投資家心理」を表す指標と言えます。
以下に述べるとおり、CDS・VIXともに、過去の暴落と比べて、パニック状態とは程遠く、市場心理の悪化余地は大きい。
ただし、AAII Sentimentはリーマンショック以来の数値で市場心理はすでに悪化。
「売られすぎか」どうかは、200日移動平均線の上にある銘柄数の観点から、同様に「米国株の下落余地はある」といった解釈が可能。
CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)
下図は米5年債のCDSです。
直近でかなり上昇しており、2013年以来の値。リーマンショックで記録した90と比べると、まだまだ余裕といったところ。
なお、米国以外に欧州各国のCDSも軒並みかなり上昇しています。リーマンショックではモーゲージ債が崩れました。主要国の債務はドイツを除いて当時より悪化しており、「今回、CDSが崩れだすのかは、一応は見ておいてもよさそう」だと思っています。
VIX
31.62。リーマンショックやコロナショックの80~90といった数字と比べると、まだまだ余裕ですね。拙著でも紹介したとおり、30という数字は上昇トレンドの押し目買いの1つの目安となるような水準であり、下落トレンドでの30はなおさらパニックとは程遠いと言えるでしょう。
つまり、「年初からS&P500は25%下落しているにもかかわらず、市場心理としてはまだまだ悪化する余地がある」と言えます。31という数値は、リーマンショックで本格的に下落し始める前の2008年初ごろと同じ水準。
AAII Sentiment
投資家心理を表す「AAII Sentiment」では、2022年9月30日時点で-40.9%。2009年3月のリーマンショック時点の-51.35%に次ぐ数値。投資家心理はかなり悪化しています。
以上は、市場心理からの観点でした。次は、市場の現状を違う観点から見てみましょう。
MMTH(200日移動平均線より上にある銘柄数)
下図は、銘柄ごとの200日移動平均線より上にある銘柄が全体の何パーセントあるか(Percent of Stocks Above 200-Day Average)」を示すチャートです。いわば、「買われすぎ・売られすぎを示唆する指標」と言えます。
ちなみに、「買われすぎか」よりも「売られすぎか」を見るときに機能する指標だと思っています。たとえば、この指標は2021年前半に天井をつけており、実際に天井をつけた2022年初と時間差があります。逆にリーマンショック・コロナショックでは、10を割り込んだあたりで、底に近い局面を迎えていることから、過去においては「売られすぎ」の指標としては一定程度は機能していた、と言えそうです。
さて、同指標は上図のとおり、2022年9月30日時点で16.6。過去リーマンショックで記録した3.06、コロナショックの4.7と比べると、こちらも「まだ売られる余地がある」と言えそうですね。

2008年1月は、本格的な下落を前にした時期
ちなみに、16.6という数値も、先述のVIXと同様に、リーマンショックで下落しはじめた2008年1月と同じ水準(上図ご参照)です。
まとめ
まとめると、以下の通りです。
- CDS・VIXは、いずれも過去の暴落と比べて、パニック状態とは程遠い状態
- ただし、AAII Sentimentはリーマンショック以来の数値で市場心理はすでに悪化。
- また、「売られすぎ」を示唆するMMTHは、1桁に迫る勢いではあるものの、過去の暴落ほどの水準には至っていない
- つまり、これらの観点にかぎれば、「米国株の下落余地は強弱入り混じる」といった解釈が可能
ちなみに、どのような指標であれ「その指標という単一の観点(に過ぎない)」ということになります。結果は複数の要因が織り成すことが多く、あくまでそのことを認識しておきたいですね。すべての情報に接するときに言えることだと思います。
つまり、あくまで中立的に、盲信することなく、市場や情報と接していくことがたいせつですね。
なお、スイスの投資銀行「クレディ・スイス(CS)」のCDSが上昇、破綻の噂が出ているようですね。金融機関のCEOが「財務基盤は強く、流動性に問題なし」といったことを言い出すと、だいたいその時点で危ないことがあります。「破産手続きを進めているメキシコの銀行クレディート・レアルに1億ドル以上融資しており、外資銀行として最大債権者(朝日新聞)」といった記事が8月に出ており、連鎖的に危機が拡大するのか懸念されるところです。
仮に破綻となれば、市場心理は悪化すると思われます。
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