S&P500は続落、年初来安値を試す展開。一部企業の業績に変調か。

年初来チャート
S&P500は4日続落。3700を割り、年初来で-23.0%の水準。上図の通り、綺麗な山を描いています。
コロナ前の水準まで、あと8%

3年チャート
次の目安はやはりコロナ前の水準「3400」を意識。現在は3700なので、ここからさらに8%低い水準です。
しかしもうあとわずか8%でコロナ前の水準。それだけ今年は下げたと。コロナ後の上げ具合は異常だと何度か記してきましたが、コロナ前の水準に株価が戻るということはその異常値が是正されることも意味します。
異常値はいずれは是正され、行き過ぎればいつかは揺り戻しが起きる。
それがマーケットの常だと思います。あらためて認識しておきたいですね。
米10年債の実質利回り
市場に対するネガティブ材料が、より多方面で追加的に散見されはじめています。
まず米10年債のインフレ率を差し引いた実質利回りが1.38%と2010年以来の数字。10年債の実質利回りは2020年から2022年4月までマイナス圏で推移し、株高を演出してきた(高PERを正当化してきた)と言えます。
実質利回りがマイナスだったということは、「米国債に投資しても実質的な利回りがマイナスであった」ことを示します。そのため、相対的に株式が魅力的な投資先となり、株高要因となってきました。
つまり、国債の実質利回りが急上昇しているということは、米国株への魅力は以前より相対的に薄れることになります。
たとえば、コストコ(COST)やMSCIは企業としては魅力的ながら、株価が年初来でそれぞれ約20%、約30%下げても、それでもPERは30倍を超えます。つまり益回りは名目で3%程度。国債の実質利回りが2%近いことを考えると、どうしても「以前ほどの魅力はない、too pricy」と考える市場参加者が増えるのも無理はないのでしょう。
業績見通しの下方修正が徐々にみられる
また、一部業績で下方修正がみられますね。
ドミノ・ピザ(DPZ)やアイデックス・ラボラトリーズ(IDXX)は、2022年のEPS見通しが前年割れのマイナス成長「DPZ:−7.2%、IDXX:-6.9%」になっています。これら企業は基本的に毎年プラス成長であり、先日までプラス成長予想でした。
ドミノ・ピザはインフレによる個人消費の悪化懸念。アイデックスは8月の決算ミス(EPS 0.05ドル分)があり、決算報告書を見ると「金利上昇」を原因としてEPS 0.05ドル分の悪化を見込んでいます。
また、ファクトセット(FDS)も9月22日の決算ミスで8%下げましたね。優先債(Senior Note)や未償還の債券の利率上昇が原因となっており、「金利上昇が企業収益を押し下げる実例」としてあらわれ始めていると考えられます。
また、米物流大手フェデックス(FDX)は、景況悪化を理由に通期の利益見通しを先週撤回しています。

9月17日時点のBloombergより
S&P500の利益予想は、あしもとでこれら企業業績の悪化懸念を織り込んでいなかったことから、この観点からは依然として下値余地があることを意識したいところです。
いずれにしても、企業業績の悪化が起こるとすれば、金融引き締めから時間差があるわけで、徐々に「業績見通しの悪化」というかたちで出始めている感じでしょうか。
金融引き締め期は、あしもとの業績ではなく、あくまで見通しが悪化していく可能性に注目したほうがよい時期だと思います。株価はその見通しを織り込んで動いていきますね。
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下げるときというのは、悪材料が目立ちはじめ、重なっていくことが多いですね。
昨年のこのあたりから、警戒の兆候は実際に出始めていたことになります。
S&P500と金融政策の関係です。密接に関連しています。