サプライズ円買い介入も、短期的に円安継続、中期的に円高シナリオを意識
2022年9月22日、日本による為替介入がありました。意外でした。理由は後述します。
円買い介入は24年ぶりですが、介入自体は2011年以来11年ぶりでしょうか。当時は1ドル75円で、リアルタイムでFX中に相場が急変動したので印象的です。
ドル円相場シナリオ
ドル円相場については、以下を意識したいと思っています。
- 短期的には「介入しても、先延ばしにしかならない」可能性
- ただし、中期的には「米国の景気後退(または金利のピークアウト)で円高に反転」というシナリオを意識
現在の状況
- 米国はインフレ抑制のため、ドル安誘導をしたくない
- 利上げをしないのは主要国で日本・中国のみ
(スイスの利上げでマイナス金利は日本のみに)
上記の日米金融政策等が変わらなければ、短期的には日本の単独介入は「円安の先延ばし」にはなっても、流れを変えるのは難しいのではないかと考えられます。
ちなみに、日本と中国が利上げをしない原因は、中国は「景気悪化」、日本は「物価上昇率が依然として高くないこと」が挙げられます。
円買い介入の限界
また、円売り介入と異なり、円買い介入は制約が大きいとされます。理由は以下①の通り。②は円売り・円買い共通の制約です。
- 円買い介入は、外貨を売って円を買う介入。そのため、原資が外貨準備高の量(1兆2,900億ドル=約185兆円)に限られ、さらに外貨準備の大半は米国債のためすぐに換金できず、実質的な介入原資はすぐに動かせる「外貨預金1,400億ドル=約1兆円」に限られる
- 米国から為替操作国との烙印を押されないためには「GDPの2%」、つまり10兆円程度までが介入限度とみられる
ちなみに2011年の介入額は9兆円で、10兆円ってものすごく多いわけでもないんですよね。当時ステルス介入も含めてそこそこやっていた印象はありますが。もちろん、介入に限界があることは日銀も財務相も、百も承知と思います。「過度な円安は当局として好ましくない」というメッセージを市場に伝えることや市場心理に働きかける程度が目的なのでしょうか(なので、介入に踏み切ること自体が意外)。
つまり、短期的には「介入しても、先延ばしにしかならない」可能性を念頭に置きたいと思います。ただし中期的には「米国の景気後退(または金利のピークアウト)あたりで円高に反転」というシナリオは引き続き意識したいです。
為替介入で、相場は狙い通りに反転したか
ちなみに、ニッセイ基礎研究所によれば、
- 日本の単独介入で相場が反転したのは31%(95年以降で日本の単独介入36回、同月複数回介入は1回とカウント、介入当月に反転したものをカウント)
- 日米の協調介入で相場が反転したのは43%(過去7回のうち3回)
ということで、成功確率は半分以下ということになっています。
意外に3割ある、という印象。「経済の基礎的条件が変わらずとも市場心理に働きかける点では一定の効果はあるのだろう」とも見れますし、「介入も同時期に金融政策などに変化があった」とも見ることができそうですね。
まとめ
日米の金融政策に大きな変化がみられないかぎりは、以下を意識したいと思っています。
- 短期的には「介入しても、先延ばしにしかならない」可能性
- ただし、中期的には「米国の景気後退、または金利のピークアウトで円高に反転」というシナリオを意識
実際に個人的にやることとしては、円とドルに分散してある資産を、徐々にリバランス(円安に振れれば、ドルを売って円を買う。円高に振れれば、円を売ってドルを買う)していくかたちになると思います。
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