S&P500はFOMCを受け下落。金融引き締めの加速・長期化が示唆される
S&P500は、FOMCの結果を受け続落。「市場では内容がタカ派(強硬な姿勢)と受け止められた」との報道がありますね。
今回のFOMCで、FRBによって示された見通しは主に以下の通り。
- 現時点の見通しでは、利上げは今年または来年にかけて続く
- 2024年になっても政策金利はあまり下がらない
(ただし、市場は信用していない or 織り込んでいない)
つまり、ひとことで言えば「金融引き締めの加速・長期化が示唆された」ということになります。
9月22日、日本時間午前3時半すぎに、FOMC(米国の金融政策を決定する会合)でFRBは政策金利を0.75ポイント引き上げることを決定しました。
パウエル議長は、「インフレ率を2%に戻すため、十分な引き締め姿勢に移行している。物価安定のため、しばらく引き締めを維持する必要があるだろう。早すぎる金融緩和への転換に歴史は警鐘を鳴らしている」と発言しました。「そうですよね」という印象です。
政策金利の見通し(中央値)
FOMCでは政策金利の見通しが発表されます。今回は以下の通り。
- 2022年末:4.4%
- 2023年末:4.6%
- 2024年末:3.9%
- 2025年末:2.9%
「FFレートの先物で算出した2023年末の政策金利見通しが4%台まで上昇していたものの、それを超える4.6%という数値が出てきた」という結果となりました。
ただ、この小数点以下の値がどうこうよりも、『そもそもFRBが目標とする「インフレ率2%」まで下げるには、現在の8%と差が大きいため、政策金利が4%でインフレ率が2%まで下がるのか』が焦点だと私は思います。結局2%まで下がらないと、引き締めを続けざるを得ないことになり得るので。
なお、「2022年末:4.4%」なので、残り2会合で計1.25%の利上げが必要になります。また、「2023年末:4.6%、2024年末:3.9%」であることから、
- 現時点の見通しでは、利上げは今年または来年にかけて続く
- 2024年になっても政策金利はあまり下がらない見通し
ということが言えます。
これがなにを意味するかというと、「今後2年以上もの間、今まで株式市場を下支えし、景気を浮揚させてきた低金利という恵まれた環境を失う見通しである」ということです。
リーマンショックからコロナ禍に至るまでの米国株は、下図のとおり、FRBの金融緩和に大いに助けられており、今後はその大きな支えとなってきたものを失う見通しである、ということです。
実質GDP成長率見通し(中央値)
- 2022年10-12月期:+0.2%(前回6月発表時:+1.7%)
前回のFOMCから大幅に下方修正されました。金融引き締めをすると、実際に景気が悪化するまで時間差があるので、それが明らかになりつつあります。
GDPは付加価値の総和なので、GDPの見通しが悪化するということは、企業業績の見通しも概して悪化します。
現に、S&P500種の構成企業の業績見通しは最近大幅に下方修正されています。
まとめ
「今年の年始からの大きな流れ(インフレ→金融引き締め→景気・企業業績悪化)を継続中」といった印象です。
以下をやはり認識しておきたいですね。年始時点とあまり変わらないのですが。
- 今後2年以上もの間、今まで株式市場を下支えし、景気を浮揚させてきた低金利という恵まれた環境を失う見通し
- リーマンショック以降の米国株は、金融緩和に大いに助けられており、当面はその支えとなってきたものを失う見通し
- (ただし、市場は信用していない or 織り込んでいない)
つまり、引き続き楽観は控えたいところですね。
ただし、上に赤字で示した部分。2年債利回りは足もと4%であり、上述4.6%まではまだ乖離があります。FRBが示すほどの利上げを市場は「信じていない or 織り込んでいない」と言える状態。「FRBが見通し通りに利上げを続けるかは不確実だ」と市場は見ているようですね。
また、今回示された失業率の見通しは2023~2025年において4.3~4.4%であり、「失業率が6%を超えずにインフレが鎮静化する(PCEコア2%)とは思えない」といった向きもあり、FRBの政策金利見通しが正確とはかぎらず、悲観的な数値である可能性もあることに留意したいところです。
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