「ライオンのおやつ」が教えてくれる、一面的なものの見方
食べないのではなくて、食べられなかったんですよ。
上記セリフは、名著『ライオンのおやつ』で、「終末期医療ホスピスに入院している患者さんを見て、なんで所望したものを食べないんだろう?と感じた人(Aさんとします)」に対するセリフです。
身体の状態的に、食べたくとも食べられなかったのだ、ということをAさんはそこで初めて悟ることになります。
- 人間がいかに一面しか見えてないか
- その立場に立ってみないといかに見えない部分があるか
ということがよくわかる一節のように思います。人やモノに対して多面的に見るのはときに難しいこともありますが、心にとめておきたい一節ですね。
私たちは「なんであの人はこうしないんだろう? こうしたらいいのに」と思うこともあるわけですが、もしかしたらなにか理由があるのかもしれない。想像のつかない領域のもの(例:生い立ちなど)が、そうさせているかもしれない。
冒頭の一節「食べないのではなくて、食べられなかったんですよ」は、定期的に思い返したいセリフです。
もちろん刹那的な一面が人間にある以上、常に完璧に行動できるわけではありませんが、経験を蓄積し、観点を備えていくことで、多面的な見方をすこしずつできるようになるはず。
本書『ライオンのおやつ』はそう思わせてくれる一冊です。
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