ウクライナ情勢が長引くと、FRBの金融政策に足かせ
今年に入り、市場の局面変化の兆しが徐々に明らかになりつつあり、やたら金融関係の話題が多めですがご了承ください(?)。
さてご存知の通り、昨今ウクライナ情勢が緊張しています。
仮に金融面に焦点を当てるならば、米国にとってはウクライナ問題というのは「ジレンマ」を感じる事象に相当するのではないでしょうか。
ウクライナと対峙するロシアは規模の小さくない資源国です。原油や天然ガスを欧州などに供給する側です。
当然国際市況に影響があります。具体的には原油や天然ガスなどの資源供給に制約が生じるリスクがあれば、それら価格は高騰する傾向にあります。
特に原油は、下図の通り、人々の日用品において多岐にわたり原料とされています。

石油化学製品ができるまで(出所:明和海運株式会社)
衣類・プラスチック・ゴム・塗料など身近なものの多くは石油を原料としています。
つまり、原油価格が上昇すれば、ガソリンだけでなく幅広い物価上昇につながりやすくなります(企業が原材料コストの高騰を売価に転嫁せずに吸収でもしないかぎり)。
つまりウクライナ危機が長引くと、金融面においては、国際的な物価上昇につながるリスクが高まることが考えられます。
では米国の現状を再度おさらいしておきましょう。足もとのインフレ率は高く、市場は利上げを織り込んで短期金利が上昇している状況です。
ウクライナ危機が長引けば期待インフレ率も上昇するでしょうし、FRBへの利上げ圧力も高まることを想定しておきたいです。
インフレ対策で利上げをするということは基本的に経済活動を冷やして、需給を調整する(金利上昇を通じて需要を冷まし、需給ギャップの解消を通じてインフレを解消する)ので、一時的にせよ、景気刺激や景気浮揚策ではなくその反対の性質を帯びるでしょう。
つまりウクライナ危機は、現状においては単なる地政学リスクにとどまらず、インフレ高進下においてはインフレ圧力 → 利上げ圧力 → 金融政策の制約リスク になり得るということですね。
ロシアの知識層もこのような基本的なことは百も承知でしょうから、金融面である程度米国の足もとを見ていることが想像できます。
市場が見ている対象の本丸はウクライナ危機という地政学リスクよりは、FRBの金融政策とインフレ状況にあるでしょう。そして、今回のウクライナ危機はその金融政策に大いに影響を及ぼすため、単なる地政学リスクにはとどまる話ではない、と考えられます。
いずれにしても根本的な部分として人間にとって戦争して良いことなど皆無だと思います。惨事に発展しないことを願います‥。