現代資本主義にみられる3つの歪み【市場には懐疑的でちょうどよい】

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現代資本主義にみられる3つの歪み【市場に対して懐疑的であれ】

「米国株投資」「FIRE」というものが、2021年現在、耳目を集めるようになりました。

私がこのブログで米国株や、今でいうFIREについて発信し始めた当時からは隔世の感さえあります。

そういう時こそあえて「資本主義のゆがみの部分」についても記しておきます。中立的な観点に資すると思います。

私は株式市場に対しては、常に一定程度は懐疑的であるようにしています。

投資に過度にリターンを求めると、結局は足をすくわれる可能性が高まるからです。結果的にその方がリターンが良化することもあります。

新自由主義・市場原理主義がもたらした歪み

現近代の状況を俯瞰すると、「株式を持つ者は市場の恩恵に浴し、そうでないものは市場の恩恵に浴しにくい」といった社会構造が続いています。

  • 構造改革
  • 改革なくして成長なし
  • 日本版スチュワードシップコード

などなど、2010年代に入り、日本も米国に追随するような形で、新自由主義・市場原理主義的な追求がみられてきました。

もちろん、市場原理主義がもたらした果実もあります。「グローバル資本の受け入れによる新興国の急成長や、新興国の安価な労働市場へのグローバル資本のアクセスによる先進国が安価な製品を享受できている」などです。

新自由主義・市場原理主義とは、古典派経済学者のアダム・スミスの「見えざる手」という言葉にもあるように、「市場放任的であれば、見えざる手により、資源の最適な配分がなされる」というドクトリン(教義)・前提に基づくものでもあります。

では現在、資源の最適な配分が市場で行われているかといえば、それには疑義が生じざるを得ません。

歪み①:拡大する格差

実際には冒頭に述べた通り、

  1. 株式投資をする人
  2. 株式投資をしない人

の間で、格差が拡大する傾向にあります。

コロナ禍では特にその傾向は顕在化していて、

  1. 所得を労働のみから得る人
  2. 所得を市場からも得る人

のうち、②の方が恩恵に浴しています。市場の高騰が続いているからです。

賃金動向や労働・金融資本の相関については、以下記事に詳細を譲ります。

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歪み②:金融が主役化

ただし、「労働よりも金融が主役化している」とすれば、それはどう見ても社会の歪み(ひずみ)のように、私には映ります。金融は本来、資金の動きを円滑にする黒子的な役割であるはずですが、主役に躍り出てしまっている印象です。

背景には、米国によるグローバル資本主義の普及が挙げられるでしょう。20世紀後半は、米国は製造業立国でしたが、日本・ドイツの追い上げに遭い、通商摩擦などを経ながら、最終的には金融・IT産業による支配的な地位を確立しました。

リーマンショックで顕在化した、市場の暴走

その金融が主役に躍り出た結果が、リーマンショックという「歪み・市場の暴走」として顕在化したのではないでしょうか。

サブプライムローンは本来的にはリスクが高い金融商品ながら、そのリスクをみにくくさせるために、ほかの優良証券化商品に混ぜたことは記憶に新しいところです(CDO、債務担保証券と呼びます)。

格付け会社でも、そのリスクを適切に評価しておらず、AAAを付与することさえありました。本来、金融の妥当性を評価する機関が、皮肉にも金融危機の肥大化に一役買ったのはご承知の通りです。

レバレッジ型商品と人間心理

当時はレバレッジ型経営も脚光を浴びていました。レバレッジ投資というのは、レバレッジ型経営と同様に、市場が強気である時は面白いように機能します。

リーマンショック前もそうでしたね。上昇を期待してレバレッジ投資を行い、そしてそれが現実として眼前に市場が上昇すれば、その予言が自己実現するわけです。

予言が自己実現すると人間は、「やはり正しかった」と、予想は自信に、自信は確信に変えていくものです。ますます勢いづくわけです。

市場もその人間心理に沿って、成長を続けます。しかし、行き過ぎたものは、いずれどこかで揺り戻しが起こってきたのが、この世の常でもあります。歪みが生じれば、是正方向に働くのが市場原理でもあります。

ましてや、このように市場をとらえる市場参加者は、市場において数的支配的ではありません。米国のロビンフッドの件などをみれば自明のことです。

歪み③:消費者と労働者の分離によって、薄れやすい賃上げ合理性

地産地消のような地域限定的な資本主義経済であれば、労使協調が合理的です。

なぜなら、労働者の待遇を悪くすれば、地産地消経済の場合は「消費者=労働者」なので、消費者の賃金が上がれば、生産側の企業にとっても合理的だからです。すると、賃上げに経済合理性が生じます。

ところが、グローバル資本主義では、かならずしも「労働者=消費者」とは限りません

だからこそ、「賃上げを渋る経営者が出てくる」という解釈が可能です。消費者が別の地域・国ならば、賃上げは単なる労働コスト増による競争力の低下をもたらすものでしかないからです。

すると、労働者でいるよりも投資家でいた方が金銭を享受しやすくなる、という謎の現象が一般化しやすくなります。

要すれば、地産地消の資本主義は、資本主義のメリットを享受しやすいものです。しかしこれが地域限定的ではなくグローバルになると、副作用が大きくなる、という整理が可能です。

個人的見解:歪みから目をそむけたり、市場の好調さに浮かれるなかれ

市場の好調さに単純に浮かれるのではなく、背景にはこういった歪みも一方で生じているということも、個人的には意識しておきたいところです。

なぜなら、人間は先述のとおり、予言が自己実現する(市場に対する強気が実現する)と人間は、「やはり正しかった」と、予想は自信に、自信は確信に、姿をいつのまにか変え、ますます勢いづくからです。

この人間心理は、市場の暴走・バブル的な価格形成をもたらします。常にバブルが醸成される要素は潜んでおり、いつ暴落が来てもよいように構えておくことが重要です。

Best wishes to everyone.

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公開日:2021年4月25日